一緒にいるよ(脚本)
〇教室
一宮いぶき「あかねちゃん。帰ろ」
一宮あかね「うん」
一宮いぶき「姉妹で同じクラスだからいいね」
一宮あかね「うん、何かと便利。でも5人一緒がよかったなぁ」
一宮いぶき「あはははは。5つ子が同じクラスなんて聞いたことないよ」
一宮あかね「そうかな~? うららちゃん達早く来ないかな」
一宮いぶき「ねぇ、これからどうしようか?」
一宮あかね「カラオケは?」
一宮うらら「お待たせ~」
一宮あかね「あ、来た来た」
一宮えみ「遅くなってごめんね」
一宮おねみ「2人とも歩くの速いよぉ」
一宮あかね「ねぇ、いぶきちゃんとも話してたんだけど、みんなでカラオケ行こうよ」
一宮いぶき「ほんとに行くの?」
一宮あかね「それで、ファミレスに行って、その後漫画喫茶にも行こうよ」
一宮いぶき「ご飯は、家で食べないの?」
一宮あかね「いいよ。お父さんもお母さんも、どうせ私に興味ないんだし」
一宮いぶき「そんなことないよ」
一宮うらら「そうだよあかね。お父さんとお母さんがそんな風に思うわけないでしょ」
一宮いぶき「あかねちゃん家に帰りたくないの?」
一宮あかね「帰りたくないよ。 お父さんもお母さんも帰りが遅いし、私に興味ないし」
一宮いぶき「仕方ないよ。お父さんとお母さんは仕事で大変なんだから」
一宮あかね「あれ?えみちゃんと、おねみちゃんは?・・・あ、メールだ」
From 自分:
独りは嫌なんでしょ?
独りにしないで欲しいんでしょ?
一宮あかね「ねぇ、ねぇ、何これ?何これ?」
一宮いぶき「あかねちゃんどうしたの?」
一宮あかね「えみちゃんと、おねみちゃんが、いなくなって、それで・・」
一宮いぶき「さっきから何言ってるの?」
一宮あかね「うららちゃんは?」
一宮いぶき「あかねちゃん大丈夫? ここには、だ~れもいないよ」
一宮あかね「え?・・・またメールだ」
From いぶき:
あかねちゃん、いいこと教えてあげる。
あかねちゃんは、ず~っと独りぼっちなんだよ。これからもず~っと
一宮あかね「ねぇ、ねぇ、何これ。 あれ?いぶきちゃん?いぶきちゃん!! 独りにしないで。ねぇ!独りにしないでよ!!」
鈴木先生「一宮さん!!!!!」
吉田先生「鈴木先生!落ち着いてください!」
鈴木先生「一宮さんが・・一宮さんがこの教室に・・ あの子独りぼっちになっちゃう」
吉田先生「と・とにかく保健室に行きましょう」
宮部教頭「吉田先生。その後、鈴木先生のご様子は?」
吉田先生「教頭先生。とりあえず今は保健室で落ち着かれていますが、あれはいったい・・・ 「一宮」って誰なんです?」
宮部教頭「吉田先生は、最近来られてのでご存じないと思いますが『鈴木あかね』・・・ 旧姓『一宮あかね』です」
吉田先生「鈴木あかね?鈴木先生ですか!?」
宮部教頭「3ヵ月ほど前の、鈴木先生のプール授業での事故の話は?」
吉田先生「ええ、聞いていますけど。 それが?」
宮部教頭「亡くなった生徒さんはひとり娘さんだったのですが、御両親とうまくいってなくて、鈴木先生と境遇が似てるらしいんです」
宮部教頭「その頃から・・ せっかく良くなっていたのに、入院でしょうね。また孤独が待っていますよ・・・」
5人の人格を持ちながらというのは本当にどう自分自身をコントロールしているのか、想像を絶します。彼女の背負った心の傷がいたたまれます。
「離れない女」もラストが2段落ちで怖かったけれど、こちらもでした。イマジナリーフレンドの姉妹バージョンでした、で終わらずに最後に鈴木先生の心の闇の深さにゾワっと。あいうえお作文の名前、おねみちゃんに無理があるのも怖かった。