読切(脚本)
〇日本家屋の階段
それでは最後のゲームをはじめます
ミハル「なんなのよ もうヤダ・・・」
最後のゲームはこの階段をのぼりきる事です
ミハル「何で私が最後の一人に残っちゃったんだろ」
ミハル「さっきのゲームで私を助けて脱落した人 どうなったの・・・?」
お答えできません
ミハル「まさか死ん──」
お答えできません
ミハル「突然知らないところに連れてこられて」
ミハル「デスゲームに参加させられて──」
ミハル「私みたいなどんくさいのが最後まで残るなんて・・・ みんな私を庇って脱落していった」
ミハル「・・・」
ミハル「のぼればいいんだよね?」
はい、最後まで登ればゲームクリアです
ミハル「のぼるだけでいいなら私でも──」
ミハル「よいしょっと、まず一段」
言い忘れていましたが
全部で7段の階段
1段のぼるごとにあなたの中の何かが失われます
ミハル「え────?」
ミハル「!!」
ミハル「なにも失われてないような気がするけど・・・?」
先程のゲームであなたを助けてくれた方の名前
覚えていますか?
ミハル「忘れるわけないよ 彼はえっと──」
ミハル「思い・・・出せない・・・」
あと6段
ミハル「今は進まなきゃ・・・ 私を助けてくれた・・・えっと・・・ あの人のためにも──」
ミハル「────!」
ミハル「私、誰だっけ・・・」
あなたは記憶を失いました
あと5段
ミハル「どうしてこんなことしなきゃいけないの・・・」
ミハル「────!」
あなたは感情を失いました
あと4段
ミハル「のぼる・・・ のぼる・・・」
ミハル「・・・」
あなたは視力を失いました
あと3段
ミハル「・・・」
あなたは私を失いました
ミハル「・・・私 あなたのこと?」
・・・
ミハル「失ったのか・・・」
ミハル「あと2段」
ミハル「・・・」
ミハル「何が、無くなったんだろ・・・」
ミハル「でも別に、どうでもいいや・・・」
ミハル「あと1段」
ミハル「──」
ミハル「!」
おめでとうございます
ゲームクリア
ミハル「失ったものが・・・帰ってきた・・・?」
はい、クリア商品として失ったものは全て返却させていただきました
ミハル「はーよかった・・・」
ミハル「あ、でも──」
ミハル「私が最後に失ったものってなんだったんだろ」
最後には、あなたの1番大切なものをいただきました
ミハル「私の1番大切なもの?」
はい、それは──
あなたの自宅の机の引き出しの中に入っていた自作の──
ミハル「!!」
ミハル「やめてやめてやめて やだやだ! え、ちょ まさかあなた、アレ、見たの?」
はい、見ました
ミハル「いやあああああああ」
あなたが主人公のファンタジー恋愛小説
『遥かなるミハル 王子様と盗賊から同時求婚されても私の体はひとつなんですけど?』
いやー、特に2章の盗賊のボスから求婚されるシーンはかなりえっちでし──
ミハル「ばかばかばかなにいってんの うそ! え、まってよ!ねぇ!」
『なぁミハル、王宮なんか抜け出して俺の所に来い、俺の女にしてや──
ミハル「やめてえええええ!」
7段目で小さな記憶を無くしたと思ったら6段目で一気に全部の記憶を無くしてこれはただ事じゃないな…と…
視力や感情、指示役の存在まで消えても「登る」という目的だけは本能のように残ったのでしょうか。
最後ゲームクリアの報酬、良心的な主催で良かったです。全部奪って終わりの悪徳デスゲームもありますからね(笑)
あとオチは他人にとってあまりにショボくて笑いました(笑)いや…他人事じゃないか...?
最後は失ったどころか暴露されちゃいましたね😆
感情や記憶は怖いですね。
最後はネームタグが消えるのを想像してましたが違いましたね。あなたは私を失いました、が好きですね。記憶と感情と、ガイダンスする首謀者の声を失って、一段上るのか、それとも降りようとするのか、迷うような気もしますが…。色んな可能性が見られて楽しかったです。