転嫁の女(脚本)
〇公園のベンチ
私は愚痴っぽい。人の悪いところがたくさん見える。ただそれだけ・・・今日もデートの帰り、彼氏のタケルへのイライラが募る。
ヒバリ「タケルっておじさんくさいよね・・・。 ちょっとハゲてるし、加齢臭するし。いつも黙って何も言ってくれない」
タケル「ごめんな・・・おじさんくさくて」
ヒバリ「いつもそう!ごめんごめんって。私のことだって全然褒めてくれない。今日だって私が髪切ったことに全然気づいてない!」
ヒバリ「さっきだって勝手にいなくなって!」
タケル「・・・別れて欲しい」
ヒバリ「え・・・?」
タケル「ヒバリといると辛いんだ。じゃあ・・・」
ヒバリ「ちょっと!待ってよ!」
いつもこうだ。私は、悪くない。
私に見合う男がいないだけ。
タケルが去った後、急に現れた男。薄暗く顔はよく見えないが顔が無いようにも見える。私は恐怖で足がすくみ声も出ない。
ヒバリ「助け・・・」
ナナシ「アナタノセンタクマチガッテ、マセンカ?」
緑の光に包まれるヒバリ。男は突如として消え。目の前にはタケルがいる。
ヒバリ「え?タケル?どうして・・・」
タケル「え?どうしたの?」
ヒバリ「え?いや・・・」
驚いて言葉が出ないヒバリ。黙り込んでしまう。
タケル「ヒバリ・・・俺口下手だから・・・いつもごめん。これ」
そう言ってタケルは小袋をヒバリに渡す。
中には可愛らしい小さなダイヤのネックレスが入っている。
タケル「いつもごめん。新しい髪型・・・その・・・似合ってる・・・俺も自分の身なりも気をつけなきゃな。ここんとこ仕事が忙しくてさ」
タケル「仕事も落ち着いたし、だから、お詫び?みたいな」
ヒバリ「そうだったんだ。私こそ・・・いつもごめん・・・」
笑顔になる二人。その瞬間。突如再び緑色の光がヒバリを包む。
ヒバリ「あれ?タケル?」
ナナシ「トマァ、ダマッテイレバ、コウイウコトモアッタリナカッタリナンダリデス」
ヒバリ「どう言うことよ!今のは?タケルは?」
ナナシ「何でも人のせいにしていてはロクなことになりませんね。あぁ!当たり前ですが時間は巻き戻せないんですよ・・・ハッハッハ」
急にどこかへ消えた男。
そこにはヒバリだけが残っている。
わー!なんか身に染みる話でした!!
なんでもかんでも正直に伝えるだけではなく、時にはグッと抑えることも大事ですよね・・・
面白かったです!!
あのままハッピーエンドかと思いきや「時間は戻らない」とラストでピシャリ。小気味よかったです。一度口から出た言葉は取り返しがつかないことをここまで簡潔なストーリーにまとめあげた作者さんの手腕に感心しました。
短いけどすごくメッセージ性がありました。私も女ですが、つい思っていることやそうでもないことまで口をついて出てしまうことがあります。黙っていることで訪れる幸運があること、肝に銘じます!