モテ自慢ばかりな女

きお

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〇渋谷駅前
ナナ「ねえ聞いて・・・」
  女友達のナナと会うのは、1ヶ月ぶり。
  控えめな雰囲気のナナは、小さめの声で、その小さな体を私に寄せて来て言う・
ソラ「何?」
  一応こういう反応はしたけど、彼女が何を言うかなんて想像ついてた。
  それは──・・・
ナナ「・・・また・・・」
ナナ「社内の男性を1人クラッシャーしちゃったみたい・・・」
  そう。
  彼女はサークルクラッシャーならぬ──・・・
  社内クラッシャー(自称)なのだ。
  ちなみに私たちの間ではクラッシャー=無意識に男を沼らせるナナという共通言語を使っている
ソラ「こらこらぁ!まーた好きでもない人に優しくしたんでしょ!」
ソラ(って・・・こういう反応をしていいのだろうか・・・?)
  つまり私は、こうしてグチグチ言うくらいには、彼女のこの報告にうんざりしている。
ソラ「まーとりあえず、予約したカフェ行こうよ」
ナナ「うん・・・」

〇カウンター席
ナナ「それでね──」
ナナ「私は全然そんな気なかったのに・・・ ”あなたを幸せにしたいと思ってる”とか言われちゃったの」
  それより、このカフェの良さを体感してほしい。
  数ヶ月前にできたカフェで、やっと予約が取れたのだ。
  私がナナの会社に行ったことがなくて、その場面を見ていない以上、ナナはただの”モテアピールする女”でしかない。
  それよりも、この内装が綺麗で景色も良い目の前にあるカフェを楽しんでほしいのに。
ソラ「まー好きじゃないなら、そんなつもりなかったって言いなよ」
ナナ「えっ、そんなこと言えないよ・・・!」
ソラ「なんで?」
ナナ「なんでって──・・・」
ナナ「ソラはドライすぎるよ! だからモテないんだよ? 男の人って繊細なんだから・・・」
ソラ(今さらっとすげー事言ったな?)
ソラ(あ、なんだろう、すげームカついてきた)
ソラ(ここはしっかり言ってやる・・・!)
店員さん「お待たせいたしました」
  反論の言葉を言おうとした時、注文していたパンケーキがテーブルに置かれた。
  私は、喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ。
ナナ「わー美味しそう! ね、ソラちゃん食べよう?」
ソラ「うん・・・」
  嬉しそうにしているナナを見たら、さっき言おうとしたことを言わなくていいと思った。

〇SHIBUYA109
  ナナと別れ、一人帰路に着く。
三谷くん「ソーラさんっ!」
ソラ「えっ!三谷くん?どうしてここにいるの!?」
  彼は、最近マッチングアプリで知り合って、仲良くしている男友達だ。
三谷くん「今日八木さんと渋谷のカフェに行くって聞いてたから、ちょっとこの辺プラプラしてた」
ソラ「そうなんだ」
  私の推測では、彼はナナの会社の同僚でナナ狙いっぽい。
  よく私がナナといるときに、どんな話をするのかなどを訊いてくるから。
  となると、やはりナナは”自称”モテ女ではなく、”モテ女”なのだろう──・・・
ソラ「ナナと一緒にいるときに会いたかったよね?」
ソラ「あ!呼び戻そうか? まだ近くにいると思うんだ──」
三谷くん「え!?いや!いい!!」
  三谷くんは、スマホを手に取った私を止めた。
ソラ「あ・・・ごめん、図々しすぎた・・・」
三谷くん「えっ! いや、そうじゃなくて」
  三谷くんは言葉を濁しながら、顔を赤くする。
  その表情から、三谷くんが本当にナナを好きなんだと言うことが伺えた。
ソラ(ナナはいいな・・・)
ソラ(こんな素敵な人に、たくさん好かれてるんだもんね・・・)
三谷くん「あの・・・」
三谷くん「実はさ──・・・」
三谷くん「八木さんは、モテアピールすごいだけなんだ!!」
  は──・・・!?
ソラ「え・・・???」
三谷くん「だからっ! 八木さんって、ソラさんにすごくモテ自慢してるでしょ?」
三谷くん「彼女を好きなる人って、みんな・・・なんていうかその・・・─」
ソラ「ちょ・・・ちょっと待って!」
  色々気になりはするものの、なぜ突然三谷くんがそんなことを言い出すのか、
  そもそもナナのモテアピールについての話を八木くんにした覚えはないし、しかも──・・・
ソラ「なんで、そんなこと、そんな顔赤くして言うの?」
三谷くん「それは──・・・」

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