シンちゃんの夢の巻(脚本)
〇宇宙空間
カレン「あ、ほら、また星が流れたよ!」
シン「本当だ!さすがここ十年で最大の流星群 まるで星が降るみたいだ」
カレン「ねえ、流れ星に願い事を三度唱えると、その願いが叶うって知ってた?」
シン「あぁ、そんなこと言うね」
2000年代最大の獅子座流星群が訪れる夜、私とシンは小高い山の中腹にいた──
シンは小柄だが、均整が取れていて
韓流アイドルのようにハンサムだ
でも私と同じ位の身長を
気にしているのか、恋愛には奥手みたい
手をつなぐのがやっとの二人だけど
星が降る今夜
私には一歩踏み出す秘策がある──
文字通り「星に願いを」かけるのだ──
シン「でも、あっという間に流れて消える 流れ星に願いを3回も唱えるって 無理じゃない?」
カレン「3回唱えるってのはもともと カトリックの信仰から始まってるの」
カレン「星が流れたら「Restin Peace」って 3回言うの、これって 「魂よ安らかに眠れ」って意味なんだって」
カレン「だから願いを、短い単語にすれば 3回でも言えるんじゃない?」
シン「ん?例えば、どんな感じ?」
カレン「そうね、クラスの葵の場合なら チキン、チキン、チキンかな 死ぬほどフライドチキンが好きだから」
シン「はは、なるほど! 金、金、金とか願う人がいるかもね」
カレン「ふふ、それってうちの お父さんが言いそう──」
そんなことを笑いながら話して
私たちは、また夜空を眺めた──
そうして、運命のように
一つの星が長い尾を引いて
冷たい夜空を鮮やかに横切った──
カレン「あっ、今の見た?」
シン「うん、今までで一番長く光ってた──」
私は、眼を閉じて唇を彼の顔に
そっと寄せた──
カレン「今、kiss、kiss、kissって お願いしたんだ──」
そうして私の願いごとは
星空の下で叶えられた──
初めてのキスのあと
世界はまるでゴッホの星月夜のように
輝いていた──
その中で思ったのだ
あの星が流れた一瞬
シンの唇もキス、キス、キスと
動いたように見えた──
二人は同じ願いを口にしたのだ
星が輝く限り、この愛は永遠に続く──
と思ったのだが、二人の仲は
一年もたたずに終わりを迎えた──
卒業して彼は千葉の競馬学校に入り
私は地元に残った──
エリートのみが入れる全寮制の
競馬学校は忙しいのか
次第に連絡は途絶えがちになり
恋は春の雪のように淡く消えてしまった
シンは小柄な体格を生かせる
自分の道をしっかり見据えていたのだ
だから、わかったの──
あの日、あの流星に祈ったシンの願いは
キス、キス、キスじゃなく
「騎手、騎手、騎手」だったんだなって
終劇
とっても可愛くロマンティックな恋物語からの、クスリと笑えるオチの二段仕掛け、楽しいですねー!ラストは見事なまでに脱力してしまいましたw
最初の「シンは小柄」という説明がラストへの伏線だったとは!結局二人は結ばれなかったけれど、星に願った夢は二つとも叶ったということですね。切なくもどこか清々しい読了感が残る作品でした。
ふふっ