〇店の入口
　　それは、よく晴れた日の出来事だった・・・
マナブ「へー、こんなところに変わったパン屋ができてる」
マナブ「なになに・・・？ 「高級食パン専門店　人類立ち入り禁止」？」
マナブ「変わった名前だなぁ・・・ まぁこういうパン屋はだいたいそうか」
マナブ「面白そうな店だし、ちょっと買ってみるか」
？？？「あーダメダメダメ！ 人間はダメだよ！」
店長「人間に売るパンなんてないよ！ 店の名前が見えなかったのかい!?」
マナブ「く・・・クマがしゃべってる・・・」
店長「とにかくここは人間が入っちゃダメなんだって！ さあ帰った帰った！」
店長「あと、僕はただのクマじゃなくてこの店の店長ね!!!」
お客さん「あら、店長さん 今日も元気そうで何よりですわ」
店長「あ、いつもありがとうございます〜♪」
マナブ「ちょっと待てよ！ この人も人間じゃないか！ なんで俺は入れないんだよ！」
お客さん「あら・・・わたくしの事を人間だと思っておられるのね」
お客さん「わたくし、人間じゃなくってよ？」
マナブ「ひっひぃ！ すいませんでしたァ！」
お客さん「分かればそれでいいのよ・・・ホホホ・・・」
店長「というわけで、人間の君に売るものなんてないからさっさと帰ってくれないかな？」
マナブ「く・・・分かりましたよ 帰ればいいんでしょ帰れば！」
マナブ（感じの悪い店だな・・・）

〇開けた交差点
マナブ「全く・・・変な店だったよなぁ・・・」
マナブ「それにしても、喋るクマとか怪物みたいなお嬢様とか変なのがいっぱいいたけど、ああいうのって他にもいるのかな・・・？」
「イヒィーーーーッ!!!!」
マナブ「うわぁっ！ な、なんだぁ!?」
戦闘員「突然で悪いが、お前を誘拐する！」
戦闘員「さぁ、大人しく着いてこい！」
　　こうしてマナブは謎の秘密結社「ジョーカー」に誘拐された
　　そして数ヶ月後・・・

〇謎の施設の中枢
　　マナブは秘密結社ジョーカーの手により改造手術を施され、怪人として働くことになった・・・
マナブ「はぁ・・・今日はこれといった用事もないし、ヒマだなぁ」
　　その時、マナブの脳裏にあの高級食パン専門店の記憶がよぎった──
マナブ「そういえば、普通の人間には物を売らない変なパン屋があったっけな・・・」
マナブ「今の俺は普通の人間じゃないし、もしかしたらワンチャンあるのでは・・・？」
先輩「お、どうした？新人 一人でブツブツ呟いて」
マナブ「あ、先輩！ 大した事じゃないんですけど・・・」
マナブ「ちょっと行きたいところがあるので・・・出かけてもいいですかね？」
先輩「まぁ今日はなんの予定もないヒマな日だしな・・・」
先輩「行ってもいいぞ」
マナブ「マジすか!? ありがとうございます！」
先輩「あ、警察とかには気をつけるんだぞー！」

〇店の入口
マナブ「ここだよな・・・ よかった、まだ開いてるみたいだ」
？？？「君、ちょっといいかな？」
警察「この辺りの人たちからフルフェイスヘルメットを被った不審者がいるって通報があってね・・・」
警察「ちょっと署まで来てもらえるかな？」
マナブ「え？いや・・・その・・・」
？？？「こらー!!!!」
店長「店の前で職務質問するなーーーー!!!!!」
「ニンゲン！ニンゲン！カエレ！ ギギェーーー!!!」
警察「うわぁぁぁぁぁ!!!!! バケモノだぁぁぁぁ!!!!!!」
マナブ「・・・帰っちゃいましたね、お巡りさん」
店長「君、何ヶ月か前に店に入ろうとしたあの人間でしょ？」
マナブ「え・・・そうですけど、顔も出してないのにどうして分かったんですか？」
店長「顔は隠しててもね、体つきでなんとなく分かるんだよね」
マナブ「はぁ・・・そうですか」
店長「ところで君、前の時よりなんか雰囲気が変わったね・・・ なんだか人間じゃなくなったみたいだ」
マナブ「ああ、それはですね・・・」
　　マナブは自分の身に起こった事を店長に説明した──
店長「なるほど・・・つまり君は人間じゃなくなったんだね」
マナブ「まぁ、そういう事です」
店長「それで僕の店に入れると思ったんだ」
マナブ「・・・やっぱり、ダメですかね？」
店長「そんな事ないよ！ 全然オッケー！ 改造人間だったら大丈夫だよ！」
マナブ「あ、ありがとうございます・・・」
店長「でも今日はもう閉店の時間だから・・・ 代わりといっちゃなんだけどこれあげるよ」
マナブ「これは・・・！」
店長「うちで作ってるパンの切れ端 味もしっかりしてておいしいよ」
店長「今日はお試しという事で、ちょっとだけタダであげるよ」
マナブ「あ・・・ありがとうございますっ！」
店長「いえいえ、こちらこそ来てくれて嬉しかったよ」
店長「また味の感想とか聞かせてね？」
マナブ「・・・ハイッ！」
　　こうしてマナブは念願の高級食パンを手に入れる事ができた
　　しかし、味の方はコンビニとかで売ってる食パンの方がよかったそうな──