プロローグ 詰んだ?(脚本)
〇王妃謁見の間
突然だが、俺は今前世の記憶を思い出した。
しかもここは悪役令嬢転生モノの人気漫画の世界で、破滅させられた女主人公は俺の妹らしい。
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(詰んだ)
俺この漫画好きだった。
俺知ってる。妹狂ってた。
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(詰んだ)
俺は家の評判のために彼女の悪事をあの手この手で隠していたが、隠しきれなくなり見捨てた。
〇養護施設の庭
幼少期から彼女に冷たく当たり、寂しい思いをする彼女は・・・
悪役令嬢の元婚約者に優しくされて見事に惚れ、恋に狂わされてしまった。
〇実家の居間
前世の記憶で家族がおじいちゃんしかいなかった俺に、突然兄妹ができた。
〇王妃謁見の間
正直めちゃめちゃ嬉しかった。
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(でも詰んだ)
〇暗い廊下
俺が後継者になった後に記憶を思い出したから、前当主・亡き父が追放した妹を迎えに行った。
なぜなら、彼女は今娼館にいる。転生後の悪役公爵令嬢に断罪された後奴隷商に売られた。
そして娼館に買われ薬を飲まされ酷い目に遭わされていると言う、前世の俺的にはすっきりした展開。
今の俺には心苦しい。せっかくできた兄弟が、自業自得とは言え苦しんでいる。
で、兄として見捨てるわけにはいかないので、取り敢えず助けようとした。
〇ヨーロッパの街並み
ら、なんか転生後の悪役公爵令嬢に情報がいってたみたいで、捕まって
なんか今まで庇ってた証拠だされて今妹と一緒に処刑台にいる。
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(いや詰んだ)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(家柄を盾に取り敢えず助けようとしたら、人生終わった)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(妹はイカれてるが、寂しいが故らしいから、幼少期冷たく接した俺にも責任がある)
〇暗い廊下
取り敢えず助けに行っただけだったのに、妹が泣き出した。
そして笑った。
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「助けに来てくれて、ありがとうございます お兄様」
泣きながらそう言った。
〇ヨーロッパの街並み
だから思った。
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(助けられて、よかった)
そして最後の時──
絶望の底へ落とされた彼女が、こちらへ振り向いた。
ごめんなさいお兄さま、私を助けたばかりに
ごめんなさいお兄さま
許してください
泣きながらそう言った。
だから、思う。
もっと優しくしてあげたかった
できるならお前と出会ってすぐの頃に戻りたい
そして、もう一度あの笑顔を、向けてほしい
彼女は泣きながら最後を迎えた。
何かを考える間もなく、俺もすぐに最後を迎えた。
〇黒
〇大広間
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(ん? 生きてる?)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(あれは・・・!!)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(一体何が起きて・・・)
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あ!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「あ、アゥ・・・」
キャラバスティン・エンドンテ「アゥルペロ・・・!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「キャラバスティンさま♡」
ドブが!!!!!!
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(信じられないけど・・・ 現実・・・だよな)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(神さまがチャンスをくれた・・・? と考えるしかないのか)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン(とりあえず・・・ドレスの色キツイよって言ってあげないと!!)
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ぐえ!」
エウレット・ヘヌシアン「あら、キャラバスティンさま、今日は来られないんじゃなかったの?」
キャラバスティン・エンドンテ「エウレット!? なぜお前がここにいる!! お前を呼んだ覚えはないぞ!!」
このセリフ・・・
もしかして今は陛下の誕生会が行われているのか?
エウレット・ヘヌシアン「まあ・・・陛下からの招待されたのですから来るのは当然でしょう?」
エウレット・ヘヌシアン「あなたが勝手に来るなと言っただけではないですか」
エウレット・ヘヌシアン「だと言うのに・・・まさかその女性と一緒にいるなんて・・・」
ってことはこの悪役令嬢・・・俺の妹を断罪する気だ!!
詰んだ・・・
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「またそう言うことを言うんですか!! 私たちは愛し合っているだけなんです、何度も申し上げたではありませんか!!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「どうして邪魔をするのですか 許してくださいと言いました 私もあなたを許しました、なぜ許してくださらないのです?」
キャラバスティン・エンドンテ「エウレット!! おまえはアゥルペロにしてきた残酷な仕打ちを忘れたとは言わせないぞ!!」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「あなたを許しますから、どうか私たちの関係を許してください」
キャラバスティン・エンドンテ「大丈夫だアゥルペロ、許す許さないの問題ではない」
キャラバスティン・エンドンテ「エウレット・ヘヌシアン公爵令嬢!! おまえとの婚約は今この瞬間から破棄とさせてもらう!!」
エウレット・ヘヌシアン「承知しましたわ 後ほど詳しい手続きをしましょう」
キャラバスティン・エンドンテ「手続きはこちらで進める・・・これ以上俺たちの前に現れるな!! さっさと、この会場から去れ!!」
降ってきてる邪魔くさいこの羽・・・悪役令嬢のための演出か
エウレット・ヘヌシアン「それは困ります」
証拠とか慰謝料とか言い出す前に、とりあえず・・・
キャラバスティン・エンドンテ「俺はこの場で、アゥルペロと婚約することを宣言す──」
だめだけど
キャラバスティン・エンドンテ「・・・・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「・・・・・・」
エウレット・ヘヌシアン「・・・・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お・・・お兄さま? 今何か言いました?」
キャラバスティン・エンドンテ「兄上なぜそのような──」
俺がいつお前の兄になったと言うんだ
馴れ馴れしい消えろ
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お、お兄さま!?」
エウレット・ヘヌシアン「レバノスタン卿・・・? 突然どうなさったのですか?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「とりあえず俺の妹から離れろ、キモイ」
キャラバスティン・エンドンテ「き、きもい?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「気持ち悪いと言ったんだ」
キャラバスティン・エンドンテ「な、なぜ俺たちの仲を引き裂くのです・・・!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「お前は幼い頃からアゥルペロを好きだったのか?」
キャラバスティン・エンドンテ「当然です!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「ならなぜ幼少期にヘヌシアン公爵令嬢と婚約破棄しなかったんだ?」
キャラバスティン・エンドンテ「え、そ、それは、父う──」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「まさか父親に反対されたなんて言わないよな?」
キャラバスティン・エンドンテ「・・・・・・っ」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「今婚約破棄を行うと言うことは、やっと許しをもらえたと?」
キャラバスティン・エンドンテ「ち、父上の考えなど関係ないのです!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「なぜそれを幼少期に言わない?」
キャラバスティン・エンドンテ「それは・・・最近アゥルペロと愛を確かめ合い・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「つまり一時は諦めていたと?」
キャラバスティン・エンドンテ「ち、違います!! 彼女を愛しています!! だから今から婚約を──」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「させん!!!!!!!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「貴様はつまり、ヘヌシアン公爵令嬢と婚約している間に妹へ告白したと言うんだな!! 順序が違う!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「本当に愛したと言うのなら、まずヘヌシアン公爵令嬢への礼儀としてヘヌシアン公爵と公爵令嬢に謝罪し──」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「──婚約の破棄を許してもらうべきだったのだ!!」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「俺の妹に愛していると囁くのはそれからだろうが!! あほんだら!!」
キャラバスティン・エンドンテ「あ、あほん・・・」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お、お兄さま・・・」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「貴様との婚約は認めん!! 貴様はクズの中のクズ、ドブの中のドブ!! 俺の妹に相応しくない!! 以上!!」
キャラバスティン・エンドンテ「き、貴様──」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「帰るぞ、アゥルペロ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お、お兄さま・・・でも」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「お前は俺が守ってやる」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「お兄さま・・・」
キャラバスティン・エンドンテ「ぐえ──!?」
ルゥラッハ・オル・レバノスタン「帰るぞ」
アゥルペロ・ミルス・レバノスタン「・・・はい!!」