〇ビルの裏通り
「ここでいいや。止まって」
くずたに「こ、こんなとこまで連れてきて、 俺に何の用だよ！」
くずたに「そんなもので脅して、ただで済まないぞ」
ケイ「タダですまないのはあんたの方だけどな」
くずたに「ど、どうして俺が」
ケイ「それはあんたが１番よく分かってんじゃねぇの？」
くずたに「は？なんのことかさっぱり──」
ケイ「じゃあ思い出させてあげようか。この心優しいお姉さんが」
くずたに「あんた男じゃないのか」
ケイ「黙って俺の質問に答えろこのクソ野郎」
くずたに（なんなんだよ・・・）
ケイ「まず俺のことは覚えてるよな？」
くずたに「あ、ああ。確か、やくそくや？とかいう」
ケイ「そう。俺は「約束屋」のケイだ」
ケイ「そして、俺たちの仕事は対象者に約束をさせて依頼人の依頼に応えることだ」
ケイ「で、お前は俺たちに約束したよな？」
ケイ「もう二度と、ストーカーしていた女性には近づかないと」
くずたに「そうだったか？よく覚えてないな」
ケイ「この状況で嘘がつけるのか。その肝の太さは認めてやるよ」
ケイ「だけど残念」
「わかった、言えばいいんだろう？俺は二度と彼女には近づかない。約束するよ。これで満足か？」
ケイ「このとおり。ちゃんと言ってるぜ？思い出したかな？」
くずたに「あ、ああ。確かにしたかな。でもだからなんだ？」
ケイ「俺たちはこうも言った」
ケイ「約束を破るやつは大嫌いだ。その時は、あんたを殺す、ってな」
くずたに「まさか・・・！そんなのよくある脅し文句だろ!?」
ケイ「あんたは約束を破った。残念だ」
くずたに「そ、そんなのどうしてわかる!?俺は何もしてない!!」
ユイ「ケイお姉ちゃん。もう、いい？」
ケイ「おう、ユイ。もうちょっと待ってな」
ユイ「ユイこのおじさん嫌い。嘘ばかりつく」
ケイ「俺も同感」
くずたに「だから嘘なんか──」
ユイ「やめて。ユイにはわかるから」
くずたに「なんだこれは！」
ユイ「ユイとオジサンの小指に繋がれた赤い糸。切れてるから」
ケイ「普通では見えない糸だ。切れているのは約束が破られた証拠」
くずたに「そんなの、信じられるわけがない！」
ケイ「約束は守れない、保身のために息をするように嘘をつく」
ケイ「女性を追っかけ回して快楽と満足感を得る」
ケイ「あんたみたいな人間、反吐が出るな」
くずたに「好きかって言わせておけば──」
ケイ「状況、理解出来てる？オジサン」
くずたに「・・・どうして。なぜ俺がこんな目に！」
くずたに「彼女は俺がいないとダメなんだ！彼女は俺の必要性がわかってない！二度と近づかない？そんなわけないだろ!!」
ケイ「破ったこと、認めたな」
くずたに「あんな口約束、信じる方が馬鹿だろ！それを破っただけで殺す？あんたらイカれてる！」
ケイ「だけ？」
ユイ「ちょっとケイ、ダメだよ。結の獲物だから」
ケイ「・・・わかってるよ。これで条件は整った。出てきたな、結」
ユイ「じゃあ──」
結(ゆい)「いただこうか!!」
くずたに「な、な・・・は!?」
結(ゆい)「我との約束を破った馬鹿なヤツめ！」
結(ゆい)「我が罰を与えてやろうぞ！」
くずたに「ヒッ・・・！」
結(ゆい)「自分の行いを悔い、死をもって償え！」
結(ゆい)「我に悦びを与えよ」
くずたに「や、やめてくれ、やめろぉおお!!」
結(ゆい)「馳走であった」
ケイ「バッサリスッキリー」
結(ゆい)「ケイ！」
結(ゆい)「お主はいつも優しく勇ましく、可憐で素敵よの〜」
ケイ「あはは・・・」
ケイ「結も可愛くてかっこよかったぜ」
結(ゆい)「そうだろうそうだろう！やはりお主に言われると嬉しいの〜」
チギリ「やあ。片付いたかな？」
ケイ「チギリ兄さんにムスビ姉さん！どうしてここに？」
ムスビ「迎えに来たのよ。皆でご飯食べに行きましょ」
ムスビ「その前に」
ムスビ「終わったのなら、早く戻ってくれるかしら？」
結(ゆい)「ムスビは相変わらず手厳しいの」
結(ゆい)「ではな、ケイ」
ケイ「ああ」
ケイ「ユイ、大丈夫か？」
ユイ「終わった？」
ムスビ「ええ。今日はごちそうにしましょう」
ユイ「ムスビ姉にチギリ兄」
チギリ「おいで、ユイ。おなかすいたでしょ」
ユイ「うん！」
ユイ「ケイお姉ちゃんも、行こ？」
ケイ「・・・うん」
ユイ「・・・・・・」
ユイ「ケイお姉ちゃん」
ケイ「なんだ？」
ユイ「ありがと。結と仲良くしてくれて」
ケイ「・・・」
ケイ「ああ」
ケイ「俺にとっては、どっちのユイも大切な妹だから」