フロム・ザ・ノースポール(脚本)
〇白
この物語は事実に基づいている。──
熊澤「とか言うと、読者の方に疑われることが多々あるのですが」
熊澤「まぁ、それは私が作家だからなのかもしれませんが」
熊澤「前書きで、この物語は事実に基づいて...なんて書くと皆さんの気を引けますからね」
熊澤「でも、これから話すことは実際起きたことなんです」
熊澤「まぁでも、ただ事実を話すだけじゃ芸が無い」
熊澤「さっきも言ったように私は作家です」
熊澤「なのでここはひとつ、作家らしくフィクションを交えて皆さんにお聞かせしましょう」
熊澤「これはある少年の物語」
〇アパートのダイニング
彼の家は決して裕福では無いのですが、かと言って特別貧乏な訳でもなく、どこにでもあるのような平凡な家でした。
少年が6歳になる誕生日でもあり、クリスマス・イブの夜のこと
〇アパートのダイニング
少年「お母さぁん!今年はサンタさん来るかな!?」
お母さん「毎年言ってるでしょ?クリスマスが誕生日の子のところにはサンタさんは来ないの」
少年「えー!」
少年「今年も来てくれないの?」
彼は誕生日がたまたまイブの日だったために、誕生日プレゼントは貰えるのですが、クリスマスプレゼントは貰えませんでした。
母親はクリスマスプレゼントを買ってやりたいのは山々なのですが、
生憎、1ヶ月に誕生日とクリスマス、両方のプレゼントを用意できるほど彼の家はお金に余裕が無かった。
お母さん「でもその代わり、こどもの日に欲しいもの買ってあげるから」
そのためクリスマスプレゼントの埋め合わせとして、こどもの日にはプレゼントが貰えた。
しかし、少年は欲しいものを買ってもらえることより、サンタクロースからプレゼントを貰うことに価値があった。
けど、わがままを言うと怒られるので少年はいつも我慢していた。
少年「うん、わかった!」
お父さん「ただいま~」
少年「あ、お父さん、おかえり!」
お父さん「ただいま」
お母さん「あ、おかえり」
お父さん「うん、ただいま」
お父さん「はい、お待ちかね、誕生日プレゼントだ!」
少年「わあ!!これ欲しかったやつ!!」
少年「お父さん、ありがとう!!」
お父さん「お母さんにも言うんだぞ」
少年「お母さん、ありがとう!!」
お母さん「どういたしまして」
少年「俺これずっと欲しかったんだ!」
お父さん「そうか!」
お母さん「良かったねぇ」
少年「うん!!」
少年が誕生日プレゼントを夢中になっていると、
子ども部屋から、シャンシャンシャンと鈴の音が聴こえてきた。
少年は直感した。
少年「サンタさんだ!!」
お母さん「え?」
お父さん「ん?どうした?」
少年「サンタさんが来た!鈴が鳴った!」
お母さん「鈴、鳴った?」
お父さん「いや、何も聴こえなかったぞ?」
少年「こっちだ!!」
〇勉強机のある部屋
少年が子ども部屋に入ると、勉強机には赤色にラッピングされた小さな箱が置いてあった。
少年「プレゼントだ!! お母さん!プレゼントがある!!」
お母さん「え!?」
お父さん「おい、どうしたって?」
お母さん「いや、プレゼントが置いてあるって・・・」
お父さん「プレゼント?」
少年「雪だ!雪が入ってる!」
お父さん「雪?」
少年の地域では雪が降ることはあまりなく、ましてや積もることなど滅多に無かった。
そのため、少年は雪というものをまともに触れたことが無かった。
少年「すげー!雪だ!冷たい! 見て!お父さん!サンタさんが雪をくれた!」
お父さん「お、おう、そうか!よかったなぁ!」
少年「うん!!」
少年は窓へ駆けると空に向かって大きく手を振りお礼を言った。
少年「サンタさん、ありがとう! サンタさん、ありがとう! ありがとう、サンタさん! サンタさん、ありがとう!」
お父さん「お、おい。 あれ、お前だろ?」
お母さん「私じゃないわよ。 あなたじゃないの?」
お父さん「違うよ、俺今帰ってきたばかりだぞ」
お父さん「それに、雪なんてどうやって用意するんだよ。 今年まだ1度も降ってないんだぞ」
お母さん「じゃあ、あの雪は誰が?」
お父さん「知らないよ」
少年は手を振り続けた、疲れて眠ってしまうほど
〇白
熊澤「箱の中の雪は翌朝には溶けかけ、少年が学校から帰ってくる頃にはすっかり水へと姿を変えていました」
熊澤「あの雪は誰が持ってきたのか、そして鈴を鳴らしたのは誰かなのか」
熊澤「それは今となっては知る術は何もありません」
熊澤「ただ1つ言えるのは、毎年クリスマスになると親は子に夢を見せたく、子を思い、プレゼントを用意する」
熊澤「そしてそれと同時に、ソリに乗ってサンタクロースが北極点より夢を配るために世界を駆ける」
熊澤「かもしれない」
熊澤「でも、耳を澄ませてみて」
熊澤「ほら、鈴の音が」
子どもはやっぱりクリスマスに思いを寄せてしまいますよね。
だって特別な日ですから。
一緒にされてしまうのがかわいそうだなぁと思いましたが、プレゼントがあってよかったです。
クリスマスって何か不思議なことが起きる日なのでしょうか。
楽しみや嬉しさが垣間見えるイベントではありますが、良い事や不思議な事が起こってほしいっていう願いもあるのかもしれませんね。
サンタさんのプレゼントの中身が素敵です!簡単に用意できないけれど子どもが喜ぶもの、お金で買えない価値があって、クリスマスシーズンらしい楽しさがあって…。一方には親が一生懸命準備したプレゼントがあり、奇跡と引き立てあっていると感じました。家族の愛情、夢見る気持ち、どちらも素敵な子どもの思い出ですね。