席替え(脚本)
〇教室
純太郎(遂にきた席替え!)
純太郎(何故か高校入学以来ずっと冴さんの隣だったもんな・・・)
純太郎(でもこれでやっと別の人とも隣になれるはず)
佐伯冴は他クラス他学年の生徒が覗きに来るほどの美人であるが、告白するような者は一人としていなかった。
冴「は?」
が冴の口癖。
鋭く冷ややかな視線と共に繰り出される一音は屈強な体育教師すら震え上がらせる。
端的に言って恐い。
純太郎(観賞専用の姫・・・失礼なあだ名だけど、その通りなんだよな)
例に漏れず純太郎も冴のことが恐い。
隣という性質上、必然的に冴の「は?」を浴びる回数は純太郎がトップだ。
その分慣れているし、冴がどんな人物かもある程度分かっているため、他者より症状はマシだが。
担任教師「じゃあ順番にくじを引いて仮の席を決め、そこから各々相談して確定してくれ」
純太郎「えーと俺の席は・・・うわ最前列」
純太郎「まあいいか、今のところ冴さんの隣じゃないみたいだし」
冴「は?私の隣じゃなくてってどういう意味?」
純太郎「いや、入学以来ずっと隣だったからさ」
冴「そう・・・」
それから全員がくじを引き、ひとまずの配置が決定した。
純太郎「よろしく!」
クラスメイト男子「おう、よろしく」
しかし、最後列から威圧感が迫ってきた。
冴「ねえ、ちょっといい?」
クラスメイト男子「はっ、はい!大丈夫です!ご用件は何でございましょうか!」
冴「席、変わってくれない?」
純太郎(えっ!?)
クラスメイト男子「ま、誠に申し訳ございませんが、わたくし視力に少々難を抱えておりまして対応致しかね・・・・・・」
冴「────は?」
クラスメイト男子「ひぃ!?あ、あれ、なんか突然視界がクリアに?見える!無限の彼方まで!」
冴「そう。なら────」
純太郎「ちょっと待ってって。そんな簡単に視力が回復するわけないだろ」
純太郎「冴さんには何か席を変わってほしい特別な理由があるの?」
冴「は?・・・ないけど」
純太郎「ならいいよね?」
冴「よくないなんて言えるわけ・・・」
純太郎「え、何か言った?」
冴「別に何も・・・」
冴が渋々引き下がると、入れ替わるようにして
クラスメイト女子「あのー、純太郎くん」
クラスメイト女子「私の席一番後ろになったんだけど、身長があれだからさ、変わってほしいなって」
純太郎「あー・・・うん、いいよ」
冴にああ言った手前、特に応じない理由がない純太郎はそう答える他なかった。
――そして
純太郎(うぅ・・・さっきの今で気まずいけど)
純太郎「ごめん。俺なんかの隣に何度もなって冴さんも嫌だよね」
純太郎「やっぱり誰かに変わってもらえないか聞いてみるよ」
冴「は?」
純太郎「ん?」
冴「別に私は誰が隣でも気にしないけど」
純太郎「そうなの?わかった。ありがとう」
純太郎「じゃあ”これまで通り”よろしく!」
冴「────は?」
純太郎(ヒェッ!?何故か怒ってらっしゃる!?)
クラスメイト女子(あちゃーやっぱり純太郎くんは鈍太郎くんだなぁ・・・)
クラスメイト女子(ファイトだよ、冴!)
純太郎以外はみんな冴の気持ちに気付いていて、二人を隣りにしようと四苦八苦している様子が面白いくて微笑ましい。もう純太郎じゃなくて鈍太郎に改名した方がいいくらい底抜けに鈍感なところが冴にとってはたまらない魅力なんでしょうね。
鈍太郎くんに苦労する冴ちゃん、可愛いです😆
「は?」で様々な意志表現をする冴さん、可愛いですねー!ヴォイスのない活字での表現だからこそ、イマジネーションが刺激されて楽しいです!