自分がゾンビになっていることに気づいていない女

中河原虎太郎

自分がゾンビになっていることに気づいていない女(脚本)

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〇高い屋上
  学校・屋上
ゾンビA「ア゙、ア゙」
橘 今日子「いやぁー!こないでぇ!」
呂芽呂 譲治「カーット!」
呂芽呂 譲治「おいお前!ゾンビというものをてんで分かってねえな!」
ゾンビA「ひっ す、すみません!」
呂芽呂 譲治「他のゾンビと代われ!」
橘 今日子「いや監督。代われないから」
橘 今日子「監督が全員降板させちゃったんでしょ?」
呂芽呂 譲治「おいおい!まともなゾンビは1人もいねえのか!?」
橘 今日子「監督のゾンビに求めるハードルが高すぎるのっ!」
呂芽呂 譲治「阿呆!俺は『本物』のゾンビ映画を撮りてえんだ! ゾンビに妥協はできねえ!」
橘 今日子「あれはどうなったの?遅刻してるゾンビ役の女の子」
呂芽呂 譲治「いやそれが今朝から連絡つかなくてよ」
尊 美花「すいません遅くなりましたー! ゾンビ役の尊 美花と申します!」
尊 美花「ゾンビ映画界の巨匠、呂芽呂監督の作品に出れるなんて感無量です!」
尊 美花「今日はリアルなゾンビを演じられるよう頑張りますっ!」
呂芽呂 譲治「おお!やっと来たか! リアルなゾンビメイクじゃねえか!」
尊 美花「え?何をおっしゃっているんですか監督」
尊 美花「私まだノーメイクですよ?」
呂芽呂 譲治「は? 冗談言ってねえでさっさと位置についてくれる?」
尊 美花「ええ!?いや冗談じゃ」
呂芽呂 譲治「よーい!アクション!」
尊 美花「ちょ!今そっちに!」
  ふわっ・・・プーン
呂芽呂 譲治「くっさあぁ!」
尊 美花「え!?」
橘 今日子「ちょっとなによこの腐敗臭は!?」
尊 美花「いや私ちゃんとお風呂入ってきましたよ!? 私じゃな•••ア゙」
尊 美花「ア゙ア゙ア゙ア゙」
橘 今日子「いやあ嘘!? なんか噛まれたんだけど!?」
呂芽呂 譲治「お、おい!勝手なことしてんじゃねえ!」
尊 美花「はっ! す、すいません!なんか体が勝手に・・・!」
橘 今日子「ちょっと!いきなり噛んでくるとかマジありえないんだけど!」
橘 今日子「なによ」
呂芽呂 譲治「ゾンビになってるぞ?」
橘 今日子「は?」
橘 今日子「意味わかんな・・・ア゙」
橘 今日子「ア゙ア゙ア゙!!!」
ゾンビA「え、噛まれ•••」
ゾンビA「ア゙ア゙ア゙!!!」
ゾンビB「ア゙ア゙ア゙!!!」
ゾンビC「ア゙ア゙ア゙!!!」
尊 美花「みんながまるで本物のゾンビみたいに・・・襲い合ってる!?」
呂芽呂 譲治「お、おい」
尊 美花「え?は、はい」
呂芽呂 譲治「お前なんで遅刻した?」
尊 美花「え?・・・たしか、ここに向かってる途中、人とぶつかって」
尊 美花「あ、そうそう!いきなりその人に首を噛まれて・・・」
尊 美花「って、あ」
尊 美花「もしかして私ゾン・・・ア゙」
尊 美花「ア゙ア゙ア゙ア゙」
  ゾンビ達、監督を取り囲んでいく。
呂芽呂 譲治「そうか•••俺は」
呂芽呂 譲治「やっと『本物』のゾンビ映画を撮れるのか•••」
  監督、カメラを構える。
呂芽呂 譲治「お前らは幸せな役者だよ」
呂芽呂 譲治「なぜなら、演じるのではなく・・・ 『本物』になれたんだからな」
  ゾンビたち、どことなく嬉しそう
呂芽呂 譲治「『本物』のゾンビ映画を撮るぞぉ!」
呂芽呂 譲治「俺を襲えぇー! よーいアクション!!!」
尊 美花「ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」
  こうして・・・
  巨匠、呂芽呂監督の遺作は、後世に語り継がれるゾンビ映画の名作になったのでした。
  めでたしめでたし

コメント

  • 呂芽呂譲治監督のお名前に笑ってしまいました。ワンシーンの短編に詰め込まれた、ゾンビ満載のわちゃわちゃ感、面白いですねー!

  • 監督が言った「まともなゾンビ」ってすごいパワーワードですね。本物のゾンビに囲まれて「生き生き」とする監督、ゾンビ撮りがゾンビになって本望だったのでは。久しぶりにロメロのゾンビ三部作が観たくなりました。

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