怪盗ダリアと呪いの宝石

Alma@Wellクリエイター

第1話(脚本)

怪盗ダリアと呪いの宝石

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〇書斎
対馬 学「ははは!!」
対馬 学「いかに、怪盗と言えども、こんな雑多な中から見つけることは、難しいでしょう」
警官「そうですね!」
警官「我々もおりますし!」
警官「今夜こそ、捕まえてみせますよ!」
岬 ケン(そうだ。 今日こそ、絶対に捕まえてやる)
岬 ケン(覚悟しろよ、 怪盗ダリア!)

〇書斎
  呪いの宝石である
  『サニー・ブライアン』を
  今晩盗みに参ります。
  
  ──怪盗ダリア──
対馬 佐知子(呪いなんて信じていなかったけれど)
対馬 佐知子(確かに、夫は変わったわ)

〇書斎
X「こちらは、大変希少な宝石でして、」
X「元々は、イギリスの──。 そうそう、」
X「レスターに訪れたことがあるとお話しされていましたが、」
X「まさに、その土地の貴族が所有していたんです」
X「縁がありますね」
X「ちょっと持って、宝石を光にかざして見てください」
対馬 学「おお!」
対馬 学「なんだか、不思議な感じがする!」
対馬 学「いま、この宝石の中に、小学生のワシが見えたぞ!」
X「それは、すごい!」
X「過去の自分が見えるということは、今や未来の自分に対して、なにかアドバイスをくれるかもしれませんね」
対馬 学(自分が自分に?)
対馬 学(アドバイス?)
対馬 学(思えば、ワシは、いつも誰かの言葉に従ってきた)
対馬 学(進路も、会社も、家族も)
対馬 学(親、友達、上司に勧められるまま)
対馬 学(自分の気持ちを気に留めたことなど、ない)
対馬 学(宝石の中のワシは泣いてる?)
対馬 学(そうか。 ワシは悔しかったんじゃな)
対馬 学(自分の気持ちをないがしろにしてきたことが、)
対馬 学(ないがしろにされてきたことが)
対馬 学「ふむ」
対馬 学「はは! 美術館で、君みたいに含蓄の富んだ青年に会えると思わなかったよ!」
X「僕などまだまだ勉強不足もいいところですが、恐縮です」
対馬 学「これからは、 ワシは、ワシの気持ちを大事にしようと思う」
対馬 学「ぜひ、譲ってくれ」

〇広い和室
対馬 学「今から、散歩に行ってくる」
対馬 佐知子「今日は、一緒に映画を見に行くって・・・・・・?」
対馬 学「止めた。 ワシは、今したいことをする」
対馬 学「行ってくる」
対馬 佐知子「気をつけて」
対馬 学(よし、ワシはワシの気持ちに従ったぞ)

〇おしゃれなリビングダイニング
対馬 学「今日は魚にしよう」
対馬 学「買ってきたから」
対馬 佐知子「ありがとう」
対馬 佐知子(冷蔵庫にまだ、昨日の分があるのに)

〇おしゃれなリビングダイニング
対馬 佐知子(なんでも、かんでも、自分で決めてしまう)
対馬 佐知子(相談もされないなんて)
対馬 佐知子「まるで、私、言いなりのロボットみたい」
対馬 佐知子(今までそんなことなかったのに)

〇通学路
知人「別に、歩道いっぱいに広がって歩いてたわけじゃないんだけど、」
知人「急に、声を荒らげるもんだからさ」
知人「ダンナさん、犬苦手になったかな?」

〇商店街の飲食店
友人「俺の予定に構わず、誘ってくるのは、ちょっと困るよ」
友人「そりゃあ、いつでも良いとは言ったけどさ──」

〇通学路
近所のひと「ゴミの捨て方が悪いって、いきなり強く注意されて」
近所のひと「びっくりしているのですが」

〇おしゃれなリビングダイニング
対馬 学「このドラマ、面白いな」
対馬 佐知子(本人は、機嫌いいけれど)

〇書斎
対馬 佐知子「ねぇ、あなた」
対馬 佐知子「あの宝石を手に入れてから、」
対馬 佐知子「あなたは、ちょっと意固地になってる気がするわ」

〇書斎

〇書斎
対馬 学「なんだ、急に明かりが消えたぞ!」
警官「すぐ確認します!」
警官「怪盗は、地下から侵入したようです!」
岬 ケン「俺がいるからには、逃さんぞー!」
警官(今日も、うざいなぁ)

〇書斎
対馬 学(怪盗が現れたのか!?)
対馬 学(しかし、この暗がり)
対馬 学(盗むことなど出来ないはず)
対馬 学(わしが動かなければ、)
対馬 学(場所などわかるまい!)
対馬 佐知子(警察もいるのに、どうやって──)

〇書斎
警官(さて)
警官(宝石はどこにあるのかな)
警官「対馬さん、お二人とも、お怪我はありませんか?」
対馬 学「ああ、問題ない」
対馬 佐知子「ええ」
対馬 学(地下に配備された警官か?)
対馬 学(本物?)
対馬 学(怪盗は、変装もすると聞いたぞ)
対馬 学(なりすましかもしれんし)
対馬 学(金庫もロックを解除されて意味がないと言うし、)
対馬 学(それなら、身近に置くほうが安全じゃ)
対馬 学(まさか、)
対馬 学(ペン立ての中にあるなど、わかるまい!)
ダリア(なるほどね)

〇書斎
対馬 学「ふぅ」
対馬 佐知子(良かった。明るくなったわ)
警官「地下は、問題ありませんでした」
警官「──?」
警官「対馬さん?」
岬 ケン(テーブルに、ダリアの花!)
対馬 学「ば、」
対馬 学「ば、」
対馬 学「ばかな!」
対馬 学「ない!」
対馬 学「ない!」
対馬 学「『サニー・ブライアン』が・・・・・・」
対馬 学「ぬ、盗まれてる・・・・・・」
対馬 学「ど、どうして?」
対馬 学「わししか、知らないのに・・・・・・」
対馬 佐知子「いつの間に!」
岬 ケン「くそ!」
岬 ケン「まだ、近くにいるはずだ!」
警官「屋上よ!」

〇書斎
対馬 学「あれがないと、ワシはワシの気持ちが見えんのに」
対馬 佐知子「あなた、どういうこと?」
対馬 学「お前が言っていた、意固地というのはどういう意味なんだ?」
対馬 佐知子「自分の気持ちを優先するのは、大事だと思うけど」
対馬 佐知子「それに執着しすぎてる気がする」
対馬 佐知子「バランスを欠いてると思うの」
対馬 佐知子「私、あなたのことが今は恐いわ」
対馬 学「信じられんかもしれんが、あの宝石には、ワシの小学生の姿が映るんだ」
対馬 学「ワシがワシのしたいことを優先すると、小学生のワシがスゴく喜ぶから、」
対馬 学「そのワシが喜んでるのを見て、嬉しくて」
対馬 佐知子(私が宝石を見てもなにも見えなかった)
対馬 佐知子(細かいことは良くわからなけど、このひとは、ずっと苦しんでいたのね)
対馬 佐知子(今まで自分の気持ちを優先しなかったから)

〇フェンスに囲われた屋上
ダリア(さー、この子かな?)
ダリア(──)

〇島国の部屋
雨宮 美波「わー! キレイ!」

〇フェンスに囲われた屋上
ダリア(反応がない)
ダリア「違う」
ダリア「解呪」
ダリア「よし」
ダリア「そっか、今日は・・・・・・」
ダリア(流星群)
ダリア「はー」
ダリア(せっかくの流星群の夜だっていうのに、)
ダリア(ひとりで見上げるなんて)

〇書斎
対馬 佐知子(自分の気持ちを優先できなかったことに気付いて苦しむなんて)
対馬 佐知子(自分以外のひとの気持ちが見えずに、周りのひとの心が離れてしまうなんて)
対馬 佐知子「確かに、呪いの宝石ね」
対馬 佐知子「あなた」
対馬 佐知子「今まで、苦しかったのね。 近くにいたのに、気付かずにごめんなさい」
対馬 佐知子「周りを大切にするあなたの優しさに甘えていたわ」
対馬 佐知子「あなたが、色んなことを話してくれて、それで一緒に決めてくれているのだと思ってた」
対馬 佐知子「でも、あなたは譲ってくれていたのね」
対馬 学「え」
対馬 学(一緒に決める? 譲る? ワシは、ただ流されていたのではないのか?)
対馬 佐知子「あなたは、今の自分に否定的なんだと思う」
対馬 佐知子「だから、過去の自分を喜ばせようとしてたのね」
対馬 佐知子「これから、私も手伝えないかしら?」
対馬 佐知子「今までのあなたの数々の選択が、良いものだったと、いつか認められるといいわね」

〇川沿いの公園

〇渋谷のスクランブル交差点

〇海辺

〇フェンスに囲われた屋上
ダリア(家族も、親しいひともいなく、)
ダリア(ひとりぼっち)

〇教室
クラスメート「すごいね! クラスで1番なんて!」
クラスメート(勉強してるの見たことないし、カンニングじゃないの?)

〇散らかった職員室
先生「なんか、困ったことがあれば言えよ!」
先生(俺の時間を使われたくないから、相談なんて絶対にすんなよ!)

〇アパレルショップ
店員「よく、お似合いですよ!」
店員(さっさと選んで、早く帰ってよ)

〇フェンスに囲われた屋上
ダリア「ちょっと疲れちゃった」
岬 ケン「見つけたー!」
岬 ケン(え?)
岬 ケン(な、泣いて?)
ダリア(早・・・・・・)
ダリア「返しておいて」
岬 ケン「え!」

〇フェンスに囲われた屋上
岬 ケン「もういない・・・・・・」

〇SHIBUYA109
岬 ケン(盗んでおいて、返すなんて)
岬 ケン(何が目的なんだ!?)
岬 ケン(それに、)
岬 ケン(それに、なんで泣いてたんだ?)

〇フェンスに囲われた屋上
対馬 佐知子「宝石、戻ってきて良かったわね」
対馬 学「ああ。 不思議なんだが、もう中に何も見えないんだ」
対馬 佐知子「そうなの」
対馬 佐知子(怪盗が盗んだというのは、宝石ではなくて、呪いの方なの?)
対馬 学「嫌な言い方や態度をとって悪かった」
対馬 学「他のひとにも謝ってくるよ」
対馬 学「ごめんな」
対馬 佐知子「いいえ。 私も、話しを聞かずにごめんなさい」
対馬 学(昔から、ずっと優しいな)
対馬 学「ワシといてくれてありがとうな」
対馬 佐知子「私が選んだひとですから」
対馬 学(そうか。 佐知子だって選んでる。 今は、互いの選択の結果なんだな)
対馬 学(今、こんなに穏やかな気持ちなのに)
対馬 学(過去に囚われるあまり、気付かなかったな)
対馬 佐知子「いい夜ですね」

〇SHIBUYA109
岬 ケン「ん」
雨宮 美波「──」
岬 ケン「雨宮、こんな時間になにしてる!」
雨宮 美波「げ、岬先生」
岬 ケン「げ、じゃない!」
岬 ケン「制服姿で、こんな遅くに」
岬 ケン「補導されるぞ、ほら駅まで送ってやる」
雨宮 美波「どうも」
雨宮 美波「先生こそ、こんな時間になにしてるんですか」
岬 ケン「ボランティアだ!」
雨宮 美波「はぁ、遅くまで大変ですね」
岬 ケン「まぁな!」
雨宮 美波(色々聞くのも白々しいし、黙っておこう)
岬 ケン「模試はどうだった?」
雨宮 美波「前回よりは、ちょっと悪かったですね」
岬 ケン「そうか! まだまだ学べることがあって、」
岬 ケン「ますます勉強が楽しくなるな!」
岬 ケン「点数が悪いのは、悪いことじゃない!」
雨宮 美波「はは、どうも」
雨宮 美波(相変わらず、能天気だな)
雨宮 美波(でも、そういうとこに、ちょっと元気が出る)

〇SHIBUYA109
X「へー」
X「次は、あいつにしようかな!」

コメント

  • こんばんは
    ダリア華麗に盗んでいきましたね
    私も怪盗のお話書いてたのでこうゆう作品見れるのとてもワクワクしています!

  • タイトルの「怪盗ダリアは、今日も探している」の探し物はお宝ではなく「心の隙間を埋めるもの」なのかな、とふと思いました。ラストで泣いているダリアを見た岬ケンは「宝石は返されたけどぼくの心が盗まれた」という展開になるような気が・・・。

  • 都会の幻想に潜む私達それぞれが持つ孤独感や喪失感をダリアが体現してくれているようでした。また彼女が現れる時は星空がきれいな夜でしょうね。

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