飼い猫が俺よりモテやがる(脚本)
〇マンションの共用廊下
卓也(たくや)「は~、やっと帰って来れたな⋯」
卓也(たくや)「あ!」
卓也(たくや)「まーた通路の蛍光灯切れてるじゃん」
卓也(たくや)「まあ、ボロいアパートだけど、家賃安いし、ペット可だったのは助かるよな⋯」
卓也(たくや)「ふ、オスカーの奴が今頃一人で寂しがってるだろうから、早く入ってやるか」
〇散らかった部屋
卓也(たくや)「オスカー、ただいまー。帰ったぞー」
オスカー「にゃにゃ!?」
オスカー「お、お帰りー、卓也」
卓也(たくや)「あれ?」
卓也(たくや)「なんであいつ出迎えに来ないんだ?いつもなら飛んで来るのに」
オスカー「き、今日は少し早かったんだね?」
卓也(たくや)「そうなんだよー」
卓也(たくや)「ま、今日は残業をうまく回避してきた⋯ぞって、」
卓也(たくや)「誰だその猫!?」
オスカー「え、えーと、」
オスカー「この子の事、だよね~?」
卓也(たくや)「他に何があるって言うんだ!」
卓也(たくや)「どこの馬の骨、もとい猫だよ!?」
オスカー「この子は、この近くの菊地さんの所に住んでるシャルロットちゃんだよ」
卓也(たくや)「シ、シャルロットだ~?」
卓也(たくや)「なんか、ずいぶん偉そうな名前が付いてるんだな」
オスカー「菊地さんは、全国展開もしてる大きな会社を経営してる社長さんみたいだよ」
卓也(たくや)「なっ!」
卓也(たくや)「そ、そんな所の猫とか⋯」
卓也(たくや)「セレブ猫じゃね⋯?」
オスカー「そんな大した事ないよ、だって」
卓也(たくや)「アホか!大した事大ありだよ!」
卓也(たくや)「俺なんか会社の下っぱで、上のもんにはへーこら頭下げ続け、」
卓也(たくや)「安月給なのに雑草のごとく毎日頑張ってる貧乏人だぞ!」
オスカー「その通りなんだろうけど、改めて聞くと悲惨だね」
卓也(たくや)「同情するなら金と女をくれ!」
オスカー「あはは⋯」
卓也(たくや)「あれ?さっきのシャルロットちゃん、居なくなってるぞ?」
オスカー「うん、卓也が興奮してる姿見て、怖がってたから、とりあえずお家に帰ってもらったよ」
卓也(たくや)「そ、そうか、悪い事したな⋯」
オスカー「たぶん気にしてないから大丈夫だよ」
卓也(たくや)「おいオスカー」
卓也(たくや)「あの子とは絶対、ぜーったい、縁を切るんじゃないぞ⋯?」
オスカー「な、なんか怖いよ卓也⋯」
卓也(たくや)「はあ⋯」
卓也(たくや)「と言うか、なんか納得いかないな⋯」
オスカー「ん、どうしたの?」
卓也(たくや)「飼い主の俺はモテないのに⋯」
卓也(たくや)「なんで飼い猫のお前がモテるんだよ!」
オスカー「そ、それは、ほら⋯」
オスカー「たまたまかもしれないし⋯」
卓也(たくや)「バッキャロー!」
卓也(たくや)「俺が何年彼女居なかったと思ってる?」
卓也(たくや)「あーそうだよ!お前の歳の倍だよー!」
オスカー「た、卓也はきっとこれから良い人に巡り会うと思うから⋯」
オスカー「頑張って!」
卓也(たくや)「なんでだよ~⋯俺だってモテて~よ~うぅ⋯」
オスカー「あらら⋯」
オスカー「これは、今はそっとして、後で寝る時に甘えてあげてフォローしとくか」
――次の日
〇マンションの共用廊下
卓也(たくや)「はー今日もなんとか上司の前から気配を消す事に成功したな」
卓也(たくや)「俺、すごくね?」
〇散らかった部屋
卓也(たくや)「オスカー、かえったぞー⋯」
卓也(たくや)「ってぇーー!またなんかいる~~!!」
オスカー「や、やあ、卓也お帰り」
卓也(たくや)「またメス猫連れ込んでたのかー!」
卓也(たくや)「しかも、」
卓也(たくや)「前回とまた違う猫じゃねぇーかよ~~!!」
オスカー「あ、ああ、紹介するよ。近所の織田さんの所の姫ちゃんだよ」
卓也(たくや)「ひ、姫~!?」
卓也(たくや)「また、大層な名前付けたもんだな⋯?」
卓也(たくや)「ん?まてよ、まさかこの流れは⋯」
オスカー「うん、織田さんの家、何百年も続く武家の御屋敷なんだって」
卓也(たくや)「すげーー!!」
卓也(たくや)「そ、そんな所の飼い猫がうちに居るのか!?」
オスカー「あー、大した事ないよ、だって」
卓也(たくや)「だから大した事あるんだよ!」
卓也(たくや)「もう大した事だらけなんだよ!!」
卓也(たくや)「俺なんて田舎の寂れた村出身で、どんだけ先祖さかのぼったってそんな偉い人に行き着かないよ!」
卓也(たくや)「せいぜい農民が関の山だよチクショー!」
オスカー「まあ、僕は田舎が住みやすくて、好きだけど」
卓也(たくや)「お前に田舎の何が分かるって言うだ!」
卓也(たくや)「ほんとになんもないんだぞ!?」
オスカー「ご、ごめんよ⋯」
卓也(たくや)「俺なんて給料も安けりゃ貯金もない!」
卓也(たくや)「将来設計もなけりゃお先真っ暗だよドチクショー!」
オスカー「聞けば聞くほど悲惨だねー⋯」
卓也(たくや)「うるさい!」
卓也(たくや)「同情するなら一生遊んで暮らせる金と、」
卓也(たくや)「俺の事をずっと好きで居てくれて一生別れないそんな彼女を紹介してくれ!!」
オスカー「め、めちゃくちゃな事言ってるな⋯」
卓也(たくや)「ああ!姫ちゃんが居ない!」
卓也(たくや)「またやっちまった~!」
オスカー「あー、大丈夫だよ、前回同様気にしてないと思うから⋯」
卓也(たくや)「あ~~!俺はなんてダメな男なんだ~~!」
卓也(たくや)「人間の女性にも嫌われてるのに、さらにメス猫にまで嫌われるなんてよ~~!」
オスカー「あー⋯まーたスイッチ入っちゃったな⋯」
オスカー「仕方ない⋯えい!」
〇散らかった部屋
卓也(たくや)「うわ!な、なんだ!?」
卓也(たくや)「急に、真っ暗になったぞ!停電か!?」
オスカー「すぐ元に戻ると思うから、落ち着いた方がいいよ、卓也」
卓也(たくや)「あ、ああ⋯」
卓也(たくや)「こんな時は慌てず騒がずだな⋯」
オスカー「よし、もういいかな。⋯えい!」
〇散らかった部屋
卓也(たくや)「お!付いたぞ!」
卓也(たくや)「いや~ビックリしたな~」
オスカー「そだね」
オスカー「ところで卓也」
卓也(たくや)「ん、どうした?」
オスカー「どう、落ち着いたかな?」
卓也(たくや)「あ⋯」
卓也(たくや)「⋯」
卓也(たくや)「オスカー、その⋯」
卓也(たくや)「ありがとな⋯」
オスカー「どういたしまして!」
卓也(たくや)「なんか、かっこ悪い所見せたな⋯」
オスカー「ううん、」
オスカー「そんな事ないよ」
卓也(たくや)「え⋯?」
オスカー「僕、卓也には感謝してるんだ」
卓也(たくや)「感謝だなんて⋯」
オスカー「お腹が空いて死にそうになってた僕を、拾って病院に連れてってくれた事、」
オスカー「ほんとに感謝してるよ」
卓也(たくや)「あ、ああ⋯」
オスカー「それから僕を飼う事を決めてくれて、」
オスカー「こんな素敵な名前までくれたんだから」
卓也(たくや)「あの、オスだからオスカーっての、気に入ってたのか⋯」
オスカー「どんなに他の人が卓也の事を悪く言ったって、関係ないよ」
卓也(たくや)「オスカー⋯お前⋯」
オスカー「だって⋯」
オスカー「そんな素敵な卓也の事が、僕は世界一、大好きだから!」
おわり
オスカー、モテモテですね😂💕
きっと飼い主思いの優しい子だからモテるんでしょうね☺️
飼い主とオスカーのやり取りが仲良すぎて、とてもほっこりしました。
どっちが飼い主かわからないくらいオスカーは落ち着いた大人だなー。相手を全く否定しない優しさがあるし。白い猫だからちょっと神秘的な力もあるみたいだし。最後に卓也に感謝の気持ちを述べるシーンも完璧で、まさにモテるべくしてモテる猫だと納得しました。こんな素敵なオスカーと巡り合えて卓也も幸せ者ですね。