転生したら女(脚本)
〇見晴らしのいい公園
心残りがあった。だから、これは神様がくれた奇跡なんだ。そう思った。
くるみ「──チョコ」
くるみ「ごめんね。私がもっとちゃんと──」
チョコ「ワン!!」
くるみ「会いたいよ、チョコ」
?「くるみちゃん、どうしたの!?大丈夫?」
?「また、じょーしにいじめられた?」
くるみ「え、えっと?」
くるみ「きゅ、急にどうしたのかな?あなた、迷子?」
?「迷子じゃなくてチョコだよー」
くるみ「いやいや、そんなわけ──そっか」
くるみ「私の独り言聞こえてたのね? 慰めようとしてくれてありがとう。」
くるみ「でも、チョコはもう天国に行っちゃったから──戻って来ないの」
?「天国、まだ行ってないよ」
?「だって、チョコはまだここにいるからね!」
くるみ「ええ??」
?「死んで目が覚めたら人間になってたんだよ〜」
?「はっ!!くるみちゃん、信じてないな!?」
くるみ「信じられないよ、だって」
くるみ「そもそもチョコは男の子だもの」
?「そこか~」
?「人間になったら女の子になっちゃったみたい!!」
くるみ「軽くない!?」
くるみ「あーダメだ。頭の中ごちゃごちゃしてきた」
?「──チョコに戻って来て欲しくなかった?」
くるみ「そんな事ない!!」
くるみ「本当にチョコなの?」
?「本当の本当にチョコだよー!!」
チョコ「この公園、一緒によく来たよね。 くるみちゃん、悲しい事とか嫌な事があるとここに来るから。」
チョコ「だからね、ここに来れば会えると思ったよ」
くるみ「あなた、本当にチョコなんだ」
くるみ「私、チョコに謝りたかったの」
くるみ「私がしっかりしていたら、チョコをもっと幸せにしてあげられたかもしれないのにって」
チョコ「それは違うよ」
チョコ「生きている時、チョコはずっと幸せだった!! 病気は痛くて苦しくて嫌だったけど不幸だなんて思わなかったよ?」
チョコ「くるみちゃんはすぐに自分を責めちゃうから──だから」
くるみ「だから?」
チョコ「だから、チョコは帰って来たの」
チョコ「チョコの心残り──くるみちゃんに伝えたい事があったんだ」
チョコ「犬の言葉じゃ、ちゃんと届かなかったから」
大好きな君の泣き声が聞こえる。
「チョコ、嫌だよ──置いていかないで」
大丈夫だよ。どこにも行かないよ。
そう言いたいのに──届かない
そのうちに君の泣く姿すら見えなくなった。
約束破って、あんな風に泣かせて
──ごめんね
でもね、本当に届けたかったのは「ごめんね」じゃなくて──
チョコ「「ありがとう」「大好き」って伝えたかったんだよ」
15時を過ぎると、少女姿のチョコは消えてしまった。それはチョコが息を引き取った時間とほぼ同時刻だった。
くるみ「最後まで心配かけてごめんね」
くるみ「犬だからとか人間だからとか関係ない──言葉なら最初からちゃんと届いてたよ」
くるみ「会いに来てくれて、私と出会ってくれて──ありがとう」
──バイバイ、チョコ
私もあなたが大好きよ
私も犬を看取った事があるので胸にくるものがあるお話でした。オスなのに女の子に転生したのは神様のイタズラかな。亡くなった後はどうしても「さみしい」「ごめんね」という言葉を口にしがちだけど、やはりくるみとチョコのように「ありがとう」「大好き」という言葉を心の中で唱え続けた方がいいですね。
動物は言葉を話さない分、私達人間よりずっと本能や感性に優れていると思います。そんな彼らの目線になり接することで、主人公とチョコのようにより強い信頼関係がうまれるんでしょうね。
チョコー!!!!!
こんな奇跡があったら良いなぁと思えるお話でした!!