潜水艦彼氏

海中オルガン(脚本)

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〇水中
  魂の癒やしはここにある
  心の奥底に沈んでいく
  深く深く・・・もっと深く・・・

〇潜水艦
  まどろみのなかオルガンの音がする
  彼が弾いている
  こうやってベッドのなかで息を潜めて聴くのが心地よい
  倍音の響きが止んだ
シズヤ「おはよう 今日も素敵な演奏だね」
ネモ「おはよう ありがとう」
  毎朝BWV565を弾くのが彼の日課だ
  毎朝・・・と言っても、ここは海の底の潜水艦の中。
  時間の輪郭は跡形もない
  彼の日課が、私の時計になっている
ネモ「のどが渇いたな 君も深海ワイン飲む?」
シズヤ「うん」
  シャンパンタワーに青色の液が注がれていく
「乾杯」
  毎日これを飲んでいるから、もう私の血は青色じゃないかしら?
ネモ「さて、海中オルガン作りを進めよう」
シズヤ「出来上がったらどんな音がするのかしら?」
ネモ「クジラの音」
シズヤ「私も弾いてみたい」
ネモ「ああ、楽しみにしていてくれ」
  作業中の彼の後ろ姿をスケッチする
ネモ「背中に視線を感じる ちょっと恥ずかしいな・・・」
シズヤ「何も恥ずかしいことはないよ 描いててうっとりできるし」
ネモ「そう? あとで絵を見せて」
シズヤ「もちろん」
シズヤ「水中オルガンか完成したら演奏している姿を大きなキャンバスに描きたいな」
ネモ「いいね 潜水艦を増築して君の絵を展示できるようにしよう」
シズヤ「頑張って描くわ!」

〇水中
ネモ「海中オルガンの試奏をするから感想を聞かせてくれ」
シズヤ「オーケー」
  海中オルガンからクジラのシャウトのような音が響く
シズヤ「わあ!! これはクジラメタルね 新ジャンルの音楽だよ」
ネモ「音色を変えるボタンを付けて、いろんなシャウトが出るようにしよう」
シズヤ「曲ができたら沢山の人に聴いてもらいたいわ!」
ネモ「聴くのは、私と君だけで充分だ」

〇潜水艦
ネモ「海の上はろくなことがない」
シズヤ「私もそう思うわ」
  彼は地上で宮廷戦闘楽団に所属していたころ、王様に殺されそうになった
  その事件によって洗脳が解けた彼は楽団の潜水艦を乗っ取り、深海の人になった
ネモ「そうだ、セイレーンの島へ行こう」
シズヤ「ネモのふるさとね!」
ネモ「母さんにクジラメタルを聴いてもらおう」
シズヤ「素敵!」
ネモ「そして母さんに君のことを紹介したい」
シズヤ「嬉しいわ!」
ネモ「よし、潜航開始!」

〇大広間
セイレーン「久しぶり、ネモ。 そちらのお嬢さんは?」
ネモ「私のパートナーだ」
シズヤ「シズヤといいます」
セイレーン「シズヤさん ネモをよろしく頼むよ」
シズヤ「はい!」
セイレーン「・・・二人共、セイレーンの島に住めばいい ここには人間は入ってこない」
シズヤ「たしかに、この島は居心地がいいですね 息がしやすいというか・・・」
シズヤ「でも」
ネモ「私たちは一箇所に長く居られないんだ」
セイレーン「そう。いつでも遊びに来たらいい ここ、セイレーンの島に・・・」
ネモ「ありがとう、母さん」
シズヤ「さあネモ、アレを披露しましょう!」
ネモ「そうだな」

〇水中
  海中オルガンのクジラメタルがセイレーンの島に轟く
  セイレーンであるネモのお母さんは海中オルガンの伴奏に合わせて即興で歌ってくれたわ
  私たちの幸せを祝う歌を・・・!

コメント

  • 宮廷戦闘楽団とセイレーンの間にはいろんな因果やエピソードがあるんですね。それにしてもクジラメタルとは?クジラもメタルも好きだけど頑張っても想像できませんでした。聴いてみたい。

  • 今まで深く考えたことはなかったけれど
    深海って相当深いから確かに、時間を示すものは無いのかも!と思いました🫢
    時間のことも他の人間のことも考えず何からも邪魔されず家族だけで過ごし続けるのってストレスが無くて幸せそうだなあと思います😌

  • 冒頭の2人の会話から神秘の世界に誘われたようでした。我が家には海中で描く手法を得意とした画家の絵画が飾ってありますが、なんとなくその絵の持つ雰囲気と重なりました。

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