ラスボスサンタ

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〇神殿の門
魔王の側近にして常勝無敗のミノタウロス様「ば、馬鹿な・・・」
魔王の側近にして常勝無敗のミノタウロス様「魔王の側近にして・・・常勝無敗・・・・」
魔王の側近にして常勝無敗のミノタウロス様「完全無欠、才色兼備、文武両道、万邦無比、精明強幹、有智高才、全知全能、天下無双の・・・このミノタウロス様が・・・」
魔王の側近にして常勝無敗のミノタウロス様「こんな・・・人間の餓鬼に・・・」
勇者「お前は強かったよ」
勇者「だが、いつの時代も、悪が正義に勝ったためしはない」
勇者「お前の敗因は、悪として俺の前に立ったことだ」
魔王の側近にして常勝無敗のミノタウロス様「ガフッ・・・」
勇者「・・・・・・」
勇者「魔王の側近・・・手ごわい相手だった・・・」
勇者「これで残るは、魔王のみ!」

〇謁見の間
  勇者は、重い扉を開く。
  人間を襲う魔族たちの頂点──魔王。その居城の最深部に、勇者はついに辿り着いた。
「くっくっく。待っていたぞ、勇者よ」
勇者「お前が・・・魔王か」
「くっくっく。その通りだ」
勇者「ああ!?」
勇者「馬鹿な・・・そんな!?」
サンタクロース「どうした勇者、顔が青いぞ?」
勇者「サ・・・サンタクロース・・・」
サンタクロース「いかにも。我の名は、サンタクロース」
勇者「ぐ・・・まさかとは思うが・・・。 毎年クリスマスイブの夜に、子どもたちにプレゼントを配っていたのは・・・」
サンタクロース「くっくっく。我だ」
勇者「ああ、なんてことだ!!」
  勇者は気づいてしまった。
  魔王を倒すということは、今年のクリスマスから、サンタクロースのプレゼントが子どもたちに届かなくなることを意味すると。
  それはつまり、子どもたちの夢を一つ、潰すことに他ならない。

〇貴族の応接間
勇者(子ども時代)「ママ! ママー!」
勇者の母「騒々しいですよ。何事ですか?」
勇者(子ども時代)「あのねー! これ!」
勇者の母「あらまあ。可愛らしい靴下」
勇者(子ども時代)「えへへー。サンタさんにプレゼントを入れてもらうために、お小遣いで買ったんだー!」
勇者の母「まあまあ。うふふ。クリスマスまで、まだ十日はあるのに、この子ったら」
勇者の母「もう、サンタさんに何をもらうか決めたの?」
勇者(子ども時代)「うん! ちゃんと紙に書いて、靴下の中にいれたの!」
勇者の母「あらまあ。じゃあ、サンタさんからプレゼントがもらえるように、ちゃんといい子にしとかないとね」
勇者(子ども時代)「うん!!」
勇者(子ども時代)(早くクリスマスにならないかなー)

〇謁見の間
サンタクロース「わかる。わかるぞ勇者。今、お前が考えていることが」
サンタクロース「子ども時代を、思い出しているな。このサンタクロースとの思い出を・・・」
勇者「ぐ・・・」
サンタクロース「くっくっく」
サンタクロース「はーっはっは!」
サンタクロース「その顔が見たかったぞ、勇者よ!」
勇者「ま・・・魔王おおおおおお!!」
  サンタクロースは玉座から立ち上がり、手から氷の魔法を放出する。
サンタクロース「さて、どうする勇者? 我は今から、お前を攻撃する」
サンタクロース「お前が死ぬまで、全力で、だ」
勇者「・・・・・・」
サンタクロース「お前はどうする?」
サンタクロース「このまま我を、子どもたちの夢ごと消すか?」
サンタクロース「はたまた、我に無抵抗でやられて、子どもたちの夢を守るか?」
勇者「魔王おおおおおおおおおおおお!!」
サンタクロース「くっくっく」
サンタクロース「では、ゆくぞ」

〇黒
  世界一残酷な戦いが、幕を開けた。
  この戦いの結末がどうあれ、世界は悲しみの渦に飲み込まれることになる。

コメント

  • とにかく勇者が生き残ったと信じたいです。魔王がサンタクロースであることができるのなら、勇者にそのかわりができないわけがないです。彼なら、永遠にサンタクロースとなり得ると思います。

  • これ、勇者はどうすればいいんでしょうね?笑
    その前に魔王がサンタクロースなわけなんですが、ミノタウロスとの戦い時の「悪に~」とのセリフの通り、魔王はひょっとして悪サイドにいただけのいい人?
    とかなんか楽しかったです!

  • この魔王…善なんでしょうか?悪なんでしょうか?悩ましいところです。倒されないためにプレゼントを配るってちょっと健気で…すみません、笑ってしまいました。こっちの世界のサンタパワーは善なるおじいさんに宿ってくれてよかったです。回想のタイミングが絶妙で、勇者の苦悩が分かりました。

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