読切(脚本)
〇オフィスビル
〇オフィスの廊下
〇オフィスのフロア
藤崎「お先に失礼します」
柴田「藤崎さん。お疲れ」
「お疲れー」
林「シンデレラ、今日もまた定時帰り?」
林「こんな忙しい時期なのに!」
林「部長も何も言わないし腹立つ〜」
〇黒
同じ部署の藤崎は、陰でシンデレラと呼ばれている
毎日必ず定時で帰る事から、そのあだ名がついた
仕事は出来るが社交的ではなく、彼女の事を悪く言う人も多い
〇オフィスのフロア
山瀬「でもあいつ、どうして毎日あんな急いで帰るんだろ」
林「定時に帰らないと、魔法の化粧が落ちちゃうとか?」
林「あは! 今度直接訊いてみようかな?」
山瀬「やめなって」
山瀬「普段大人しい奴に限って、キレると怖いんだから」
柴田「・・・」
〇黒
〇オフィスビル
〇オフィスのフロア
山瀬「聞いた?」
山瀬「林ちゃん、怪我して入院したって」
柴田「ケガ・・・?」
〇街中の階段
昨日帰り道、突然背後から刺されたらしいの
〇黒
〇オフィスのフロア
山瀬「幸い傷口は浅くて、すぐ退院出来るらしいけど」
山瀬「通り魔かな。 怖いよね」
柴田「・・・」
山瀬「ねえ、聞いてる?」
柴田「あっ、はい」
柴田「山瀬さんも気をつけてくださいね」
〇黒
〇施設のトイレ
〇オフィスの廊下
藤崎「お先に失礼します」
柴田「お疲れ」
柴田「大丈夫? 顔色悪いけど」
藤崎「・・・」
藤崎「大丈夫です」
藤崎「すみません」
柴田「ねえ、なんか落としたよ!」
柴田「・・・」
柴田「行っちゃった」
柴田「ガラスの靴でも落としたかな? なんて」
柴田「これは・・・」
〇黒
〇オフィスのフロア
山瀬「ねえっ!!」
山瀬「シンデレラ、今日も定時帰り!」
柴田「あ。今そこで会いました」
山瀬「ただでさえ林ちゃんが抜けてて忙しいのに、普通先輩置いて帰るかね!?」
山瀬「ムっカつく!」
柴田「・・・」
〇黒
〇空
〇ゆるやかな坂道
山瀬(疲れたあ)
山瀬(林ちゃんのお見舞い、間に合うかな)
山瀬(後ろから・・・足音が)
〇黒
〇総合病院
〇病院の廊下
〇病室
藤崎「・・・」
藤崎「見て、亮。 すごく奇麗な月だよ」
藤崎「明日も来るね」
藤崎「早く元気になってね」
〇黒
〇街中の道路
〇歩道橋
〇黒
〇川沿いの道
藤崎「柴田さん」
藤崎「今帰りですか?」
柴田「ああ、うん」
藤崎「・・・」
藤崎「ごめんなさい」
藤崎「皆さん忙しいのに、私だけ帰ってしまって」
柴田「僕は平気だよ」
柴田「君にも何か事情があるんだろうし」
藤崎「ありがとう」
藤崎「それにしても、こんな場所で会うなんて。すごい偶然ですね」
藤崎「家、この辺なんですか?」
柴田「いや、違うよ」
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いったん読み始めたら結末が気になって夢中で一気読みしました。なんとなくいい人の雰囲気を醸し出している柴田のような人間が持つ不気味さと本性を現した時の落差の描き方が絶妙でした。
藤崎さんがただただお気の毒です。ストーカーと思い詰めた歪んだ愛って本当に恐ろしいですね。最後にたたみかけるように真実が際立っていくスピード感が見事でした。