二作目投稿(脚本)
〇先住民の村
マリー「ちょっとお父さん!」
父「おう我が最愛の娘マリーよ!どうしたんだ、そんな怒った顔して?」
マリー「なんで私が怒ってるか胸に手を当てて考えてみてよ!」
父「う~むむむ⋯」
父「うむ、全然わからん!」
マリー「はあ~~」
マリー「だ・か・ら・、毎回言ってるじゃない!半裸で外をうろつかないでって!」
父「ああ、なーんだ、その事か」
マリー「なーんだ、じゃないよ!なんだじゃ!」
父「そ、そんなに怒鳴らなくっても、いいじゃないか~?」
マリー「私が外でどんなに恥ずかしい思いをしてるか、分からないから、そんな平然としてられるのよ!」
マリー「「お嬢ちゃんとこのお父さんって・・・その、あれなの⋯?裸族なの?」って!」
父「そんな風に言われていたのか⋯」
父「まあ父は裸族ではないから、安心しろ!」
マリー「じゃあ服を着ろ!今すぐ着ろ!さあ着ろ!」
父「ぎゃー!マリーよ、強引に服を着せようとするな~~!あと、この頭に被せてるの、ズボンだから!のぁ~~!!」
――間
父「はぁ、はぁ⋯」
マリー「はぁ、はぁ⋯」
父「マ、マリー、とりあえず落ち着いて父の話を聞いてくれ」
マリー「な、なによ⋯」
父「父が外で噂されているのは知っていたさ・・・」
父「だが、覚悟のうえで、この半裸スタイルなんだ」
マリー「どういう事?」
父「マリー、父の職業が何なのか、言ってみなさい」
マリー「え?ヘンタ⋯」
父「それは職業ではなく趣味だ!」
父「いや、趣味ではない!ええいややこしい!」
父「とにかく父の職業、そ・れ・は」
父「「踊り子」だっ!」
マリー「えぇ~~!お、踊り子~~!?」
マリー「⋯って、なんなの?」
父「よく分かってないのかいっ!!」
マリー「そ、そんなこと言われたって、よく分からないものは、分からないわよー!」
マリー「お隣のお父さんは、戦士でパーティーの最前線に立って、モンスターからみんなを守る大事な仕事だし」
マリー「いとこのお姉ちゃんは魔法使いでパーティーの攻撃役を担ってて大勢のモンスターに囲まれても華麗な魔法でズババっとやっつけるし」
マリー「とにかくカッコイイのよ!!」
父「な、なるほど⋯しかしだなマリー、踊り子も立派な職業なんだぞ?」
マリー「どういうことよ?」
父「踊り子という職業は、確かに今まで、やれ色物キャラだの、パーティーのお荷物だの言われてきた⋯」
マリー「最低な評価されてるじゃないの⋯」
父「まあ慌てるな、話は最後まで聞くものだ」
父「そんな踊り子だったが、ある時、颯爽と現れた踊り子の少女がそのイメージを変えてしまったんだ」
マリー「へー、そんなすごい子がいたんだね」
父「あぁ、当時まだ若かった父は、それを見て痺れたね。その子の踊りは、華麗で美しく、妖艶でいて、さらに⋯強かった」
マリー「す、すごいベタ褒めじゃない⋯」
父「ほんとにすごかったんだ⋯」
父「それからその子は勇者パーティーに入って、魔王討伐に向かい、ついには魔王を打ち倒すという、伝説を作ったんだ」
マリー「むちゃくちゃすごい子じゃん!」
父「そうだ、のちに勇者が語った話では、踊り子のその子が居なければ、魔王には勝てなかったそうだ」
マリー「で、まさか⋯その伝説の踊り子に憧れて、お父さんは踊り子になった、とか言わないわよね⋯?」
父「⋯」
父「その、まさかだよ⋯」
マリー「バッカじゃないの!?そんな雲の上の人に憧れて踊り子目指すとか、そもそもお父さん男じゃないの!」
父「ハッハッハ、マリーよ。最近は男の踊り子も増えてきてるんだぞ?伝説の踊り子、様様(さまさま)だな」
マリー「そんなのどうだってもいいわよ!とにかく、私のお父さんが踊り子で、半裸(はんら)なのが問題なのよ!!」
父「待てマリー、この半裸にも実はちゃんと、理由があるんだ」
マリー「また、しょーもない理由なんでしょ?」
父「それは⋯」
父「伝説の踊り子が、それはとても際(きわ)どい水着衣装だったからだー!!」
マリー「イヤー!!このドHENTAI~!!(父にビンタ)」
父「ぐはっ!!ちょ、マリー、まて、イタッ、イタタッ、か、顔は、顔はぶたないで!踊り子、顔が命だから、ギャ~~~!!」
――間
マリー「はあ、はあ⋯」
父「はあ、はあ⋯マリーよ、話は、最後まで聞くんだ⋯」
マリー「な、なによ⋯言い訳があるなら、聞くわよ」
父「踊り子について、よく知らないみたいだから説明するが、踊り子という職業は己の身体そのものが武器になる職業なのだ」
マリー「身体が武器に⋯?」
父「そうだ。いかに身体の美しさを極限まで引き出して舞(まい)を舞(ま)えるかが、大事なのだ」
父「その肉体美の美しさが、強さに直結する職業と言っても、過言ではない」
マリー「マジなの⋯?」
父「お父さん、マジな事しか言わないぞ」
マリー「だ、だとしても常に半裸でいる必要があるの?!」
父「踊り子たるもの、いついかなる時も、常に美しくあれ。これは、伝説の踊り子が残した名言だ」
マリー「また伝説かい!もうどんだけ伝説に影響受けてるのよ!」
父「マリー⋯父が踊り子というのは、そんなに嫌か⋯?」
マリー「えっ、いや⋯」
マリー「そ、そこまででは、ないっていうか⋯」
マリー「ちょっとは恥ずかしいけど⋯お父さんが男手ひとつで、私を育ててくれて、いつも私の事考えてくれてるのとか知ってるし、嫌とかは」
父「マ、マリ~~~!!」
「いや~~~!ちょっと涙やら鼻水やら飛ばしながら抱きついて来ないで~!キモいから、こっちこないで~~!!(走り去る)」
――間
〇先住民の村
父「行ったか⋯。娘には悪かったが、いろいろ聞かれる前に退散してくれて、助かったな」
静かになった部屋で、父は本棚の上に立て掛けられた一枚の写真に向かって、語り出す
そこには、父と父に抱えられた私と、もう一人、若い女性が写っている
父「俺達の可愛くて愛しい娘は、今日も元気だよ⋯。あの子も成長してきて、最近は出会った頃の、君そっくりみたいだよ⋯」
父は遠い記憶の、母の姿を思い出しながら、優しい眼差しで話を続ける
父「あの子もずいぶん大人になった⋯。そろそろ、君との約束を果たす時だな。あの子なら、もうちゃんと真実を受け止めれるはずだ⋯」
父から語られる、誰にも知られる事がなかった、父が踊り子になった理由(わけ)⋯
父「私が、あの時魔王にトドメを刺し損ねた事で、最高の踊り子だった君を失う事になってしまうとは・・・勇者が聞いて呆れるよな⋯」
そう、父は元勇者で、私の母は⋯伝説の踊り子だったのだ
父「君を失ってからの日々は、とても辛かったよ⋯。だけど、自分には落ち込んでいられなかった⋯」
父「君は、最後に、娘という最高の忘れ形見を、残していってくれていたからな⋯」
そんな最強で、最高な二人から、私は生まれたのだ
父「君の事だから、娘の為に勇者を辞めるなんて、反対だと言うかも知れないが⋯」
隠されていた、元勇者の、父の秘密、それは⋯
父「娘に、君の踊りを伝えれるのは、1番近くでずっと見ていた、俺しかいないんだ⋯」
父「あの子は、君に似て美しく、とても才能があるよ⋯」
周囲の村人や、仲間達に、変な目で見られても、その生き方を選んだのは
父「いつか君が言っていた「この子が大きくなったら私の踊りを覚えてほしい」という願いを叶える為にも、俺は踊り続けるよ⋯」
父「だから⋯そこで見ていてくれよ⋯」
マリー「お父さん⋯」
父「マ、マリー!⋯いつから、そこに居たんだ⋯?」
マリー「実は、最初の方から⋯。逃げ出した事謝ろうって、戻ってきたらお父さんが独り言言ってたから⋯。今の、全部ほんとなの⋯?」
父「⋯そうだ」
父「父が踊り子になった理由も⋯母さんを死なせたしまった理由もだ⋯。私が、私が悪いんだ⋯」
マリー「違う!お父さんは世界の為に、全力で戦ったんだから!なにも悪くないじゃないよ!」
マリー「お母さんも⋯きっと、悔いはないと思うよ⋯」
父「だが、お前に母が居ないという、寂しい思いをさせてしまっているんだ⋯」
マリー「いいの!」
マリー「た、たしかに物心ついた時から、お母さんが居なかったのは、少し寂しかったけど⋯」
マリー「でも私には⋯」
マリー「こ、これ、言うの、ちょっと恥ずかしいけど⋯お父さんがずっとそばにいてくれたから、全然寂しくなかったよ」
父「そ、そうか⋯」
父「ほんとに、素直な良い子に育ってくれたな⋯。その言葉を聞けただけでも、父は最高に嬉しいよ⋯」
マリー「ちょっと、これぐらいの事で最高だなんて、簡単に言わないでよね?」
マリー「まだ、言う事あるんだから⋯」
父「ん、どうした?まだなにか、父に言う事があるのか⋯?」
マリー「うん⋯その⋯さ⋯」
マリー「私、踊り子になろうと思うんだ」
父「っ!⋯す、すまん、突然な話でビックリしてしまった⋯」
父「マリー、ホントに⋯いいのか?」
マリー「うん、さっきお父さんの話を聞いてて、私決めたんだ」
マリー「その踊りって⋯お母さんの踊りなんでしょ⋯?」
父「⋯そうだ」
父「あいつ⋯母さんの踊りのように上手くはいかないがそれでも記憶の母さんの踊りを忘れないようにあの日から練習はかかせた事はない」
父「間違いなく、母さんの踊りだ」
マリー「お父さんが、そんな努力を続けていたなんて、私知らなかった⋯」
マリー「もちろん、お父さんのように、簡単にお母さんの踊りが出来るとは思わないけど⋯」
マリー「お母さんを、一番近くに感じられる踊りだから⋯」
マリー「私、頑張るから!!」
父「よく、よく言ってくれた⋯」
父「たしかに⋯これは父にとって、これ以上無いくらい、最高の言葉だったよ⋯マリー⋯ありがとう⋯」
――間
あれから、私達がどうなったかと言うと⋯
父「マリーよ~~~!なぜ私が選んだ衣装を着ないんだ~~!?」
マリー「イヤよ~~~!なんで私が、お父さんとそんなダサいお揃いの格好で、外出歩かないといけないのよ~~!?」
父「マリーよ!これはかの高名な神官様から祝福を受けた、ありがた~い衣装なんだぞ~?バチが当たってもおかしくないぞ~?」
マリー「そんなの頼んでないわよ~!」
父「まったく、しかたない⋯。ではこの、昔母さんに送って突き返された、秘蔵の際どい水着⋯」
父「これでどうだー!」
マリー「こ、この⋯」
マリー「どHENTAI~~!!!」
おしまい
ダンサーじゃなくて「踊り子」を名乗るのにはそんなに深い訳があったんですね。でも天国でお母さんが「いや、そうじゃなくて」って苦笑いしてそう。マリーとコンビを組んで親子踊り子として国内を巡業したら喜ばれそうですね。でもマリーよりも半裸のお父さんの方が目立ちそうだな。
表紙が最高です!!
インド映画のテイストを感じました。
笑いから感動への転換が上手いです。
そして再度笑わせるのが、自由自在ですね!!
私もマリーの立場だったら、彼女と同じように2人の間に生まれたこと嬉しく感じたと思います。色々な要素が詰まった、温かいお話でした!