隣くんを見た女

銀次郎

隣りの席が空いていても…(脚本)

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〇電車の中
間宮大翔「隣、いたでしょ?」
森下凛「隣?何が?」
間宮大翔「いたじゃない、隣に」
森下凛「だから、何が?」
間宮大翔「何って、隣くんだよ」
森下凛「とな?えっ?」
間宮大翔「隣くん、隣にいたでしょ」
森下凛「となりくん?」
間宮大翔「そう、混んでるのに隣に誰も座らない時 そこに隣くんがいるんだよ」
森下凛「‥何、それ?」
間宮大翔「だから隣に誰も来ないからって 荷物とか置いちゃダメだからね」
森下凛「‥‥」
  これ‥何の話‥
間宮大翔「‥つけてね」
森下凛「えっ?」
間宮大翔「本当に気をつけてね」
森下凛「何を?」
間宮大翔「何だよ、聞いてなかったの?」
森下凛「‥ごめん」
間宮大翔「だから、もし混んでる電車なのに 凛以外誰も席に座って無かったら」
間宮大翔「それは隣くん達で席が一杯だから」
森下凛「隣くん達?」
間宮大翔「もしそのまま座り続けてると‥」
森下凛「‥‥」
間宮大翔「あっ!着いたよ、降りよう」
森下凛「えっ?ちょっと待って! 座り続けてるとどうなるの?」
間宮大翔「とにかく、気がついたらすぐ席を立つ それで大丈夫だから」
森下凛「‥うん」
  そこでこの話は終わってしまった
  隣くん達?座り続ける?
  モヤモヤはしたが、とりあえず言われた事を忘れないようにしよう
  そう思っていた‥
  数日後
  仕事のため始発の電車に乗る事になった
  朝が早かったからか
  座席に座るといつまにか眠っていたようだ
  しばらくすると
  たくさんの人の気配がする
森下凛(混んできたな‥)
  そう思い顔を上げると
  車内はかなりの混雑だった
  ふと隣をみると
  誰も座っていない
森下凛(隣くん?)
  そんな言葉を思い出して
  唖然とした
  隣りだけじゃない
  見える限り
  誰も座席に座っていない
  自分以外‥
間宮大翔「隣くん達で席が一杯だから」
  ふいに彼の言葉を思い出した
間宮大翔「もしそのまま座り続けてると‥」
森下凛(大変だ!立ち上がらないと! このまま座り続けてると!)
森下凛(座り続けてると‥)
森下凛(どうなるんだろう?)
  好奇心が湧いて来た
  私は怖さと好奇心が混在したまま
  しばらく座り続けてみた
森下凛(あれ?座席にボンヤリしたモノが‥)
森下凛(これ‥)
森下凛(隣くん?)
  そう思った時
  目の前の男性が
  急に座席に腰を下ろした
  いや
  正確には
  私のいる場所に腰を下ろしたのだ
森下凛(えっ?)
  だが気がつくと
  私はその男性に横に座っていた
森下凛(何で横に?)
  困惑している私の耳に
  笑い声が聞こえて来た
  そして
  さっきまでのボンヤリが
  人の形に見えてきて
  そのボンヤリは嬉しそうに笑っていた
  しばらくすると
  ボンヤリ達は席を立ち
  どこかに消えていった
  すると目の前の乗客達が
  次々と座席に座りだし
  気がついたら座席は埋まっていた
  何げなく前を見ると
  座っている乗客達が
  電車の窓に映っている
  私の席に座った男性も
  だけど‥
  男性の隣にいるはずの
  私の姿が映っていない
  混雑した車両の中で
  男性の隣りだけ
  ぽつんと席が空いていた
  まるで‥
  隣くんがいるかのように
  終

コメント

  • 受賞おめでとうございます!🎉✨
    隣くんの正体やなぜ恋人が隣くんを知っているのか、説明されないところが逆に怖さや不気味さを引き立てていますね~。

  • 解決されない「不安定」が恐怖を引き立てています。
    いわゆる中国の「志怪小説」を思わせるテイスト。
    小気味いい(ちょっと違うかも)ホラーと感じました。

  • ゾクゾクしました!朝の通勤電車という舞台で、対極と言える空気感を醸し出すところに恐ろしさが……。1000字以内のワンシーンということで、不思議、不穏、不安といった要素が凝縮して閉じ込められていて、一層ホラー要素が際立ちますね!

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