3つのプレゼント(脚本)
〇荒廃した教会
クリスマス――。
多くの人が願い、求める日・・・。
クロネコ「またこの日が来たね 今度はちゃんとやるんだよ」
少女「む〜! わかってるよ!」
クロネコ「やることはわかってる?」
少女「三人のひとの求めるものをプレゼントして幸せにする・・・でしょ!?」
クロネコ「わかってるのなら行くよ」
少女「よ〜し! 今度はみんな幸せにするよ!」
クロネコ「今度は頼むよ・・・」
〇血しぶき
〇工事現場
雪斗(ゆきと)「はぁー・・・」
少女「あれが1人目のお兄ちゃんだね!」
少女「何かご本読んでる・・・きゅうじん?」
クロネコ「仕事を探してるんだね」
雪斗(ゆきと)「いつまでも夢とか言ってられないよな・・・」
雪斗(ゆきと)「もう俺一人の生活がどうにかなればいいってわけじゃないんだからな・・・」
「おい、バイト!!休憩終わってんぞ!」
雪斗(ゆきと)「は、はい!」
雪斗(ゆきと)「・・・くっそ、働かずに生きていけねーかなー」
雪斗(ゆきと)「・・・っと?」
雪斗(ゆきと)「なんだこれ? 求人誌から・・・クリスマスカード?」
『今夜、駅前のツリー広場であなたが求めるプレゼントを準備して待っています』
雪斗(ゆきと)「あいつ・・・直接言ってくれればいいのにな」
雪斗(ゆきと)「そういえば今日はイブか・・・」
「おい、何やってんだ!」
雪斗(ゆきと)「す、すみません!」
雪斗(ゆきと)「プレゼント・・・何だろうな?」
少女「お仕事大変そう・・・」
少女「・・・プレゼント楽しみにしててね!」
〇川沿いの公園
真白(ましろ)「〜♪〜〜〜♬︎」
少女「あれが二人目のお姉ちゃんだね!」
少女「すっご〜い! お歌上手だね」
クロネコ「確かに上手いね。お客さんもいっぱいだ」
真白(ましろ)「ふぅ・・・。ありがとうございました!」
真白(ましろ)「緊張した〜・・・」
真白(ましろ)「でも、聴いてくれる人も増えてるし、実力はついてきてるよね!」
真白(ましろ)「この前オーディション番組の話ももらったし・・・」
真白(ましろ)「プロデビューする夢も遠くないかも!」
真白(ましろ)「でも、都会で歌手やるなら大学は辞めなくちゃね・・・」
真白(ましろ)「お父さんにはそんなの絶対許さないって言われちゃったし・・・」
真白(ましろ)「私、どうすればいいのかな・・・?」
真白(ましろ)「あれっ・・・? ギターケースに何か・・・」
真白(ましろ)「クリスマスカード・・・?」
少女「ふふふ・・・」
〇事務所
冬村(ふゆむら)「これで全部か・・・」
少女「あれが三人目のおじちゃんだね!」
少女「紙がすっごいたくさん!お絵描きするのかな?」
クロネコ「違うでしょ・・・。全部借用書って書いてあるね」
冬村(ふゆむら)「こんな額の借金、もうどうにもならないな・・・」
冬村(ふゆむら)「母のいない一人娘に迷惑かけるばかりで何もしてやれないなんて・・・」
冬村(ふゆむら)「それだけは絶対にあってはいけない・・・!」
冬村(ふゆむら)「・・・とにかく、この書類の山を片付けなければな」
冬村(ふゆむら)「・・・ん? これは?」
少女「ふふふ・・・。 楽しみにしててね!」
〇イルミネーションのある通り
真白(ましろ)「雪斗まだかな?」
真白(ましろ)「クリスマスカードとか、意外とカワイイとこあるよね」
冬村(ふゆむら)「・・・」
真白(ましろ)「え・・・、お、お父さん?」
冬村(ふゆむら)「ま、真白・・・。もう来てたのか」
冬村(ふゆむら)「急にあんな呼び出し方しなくてもな・・・」
真白(ましろ)「え・・・?」
冬村(ふゆむら)「ゴ、ゴホン! まぁいい。このあと例の彼氏と会うんだろ? 手短に済ませるぞ」
冬村(ふゆむら)「ほら・・・。これだ」
真白(ましろ)「こ、これって・・・?」
冬村(ふゆむら)「そうだ。昔、私が母さんにプレゼントしたものだ」
真白(ましろ)「ど・・・どうして?」
冬村(ふゆむら)「真白・・・。自分のやりたいようにやりなさい」
真白(ましろ)「え・・・? 急にどうしたの?」
冬村(ふゆむら)「・・・わかってると思うが、私にはお前に残してやれるものは何もない」
冬村(ふゆむら)「だからせめて大学を卒業させていい会社に就職することがお前のためだと思っていた」
冬村(ふゆむら)「だが、気付いたよ。 母さんのように、お前もそんな器用じゃないだろう」
冬村(ふゆむら)「好きなようにやってみなさい・・・。 母さんもきっとそう言ったはずだよ」
真白(ましろ)「お父さん・・・」
真白(ましろ)「ごめんね・・・。私もお父さんのこと全然わかってなかった・・・!」
冬村(ふゆむら)「いいんだ・・・」
クロネコ「ふーん・・・。なんかいい話っぽい。 今回はうまく行きそうだね」
少女「?? これからだよ?」
クロネコ「ん・・・?」
〇血しぶき
〇イルミネーションのある通り
雪斗(ゆきと)「・・・っと。ガラにもなく花屋なんてのぞいてたらこんな時間か!」
雪斗(ゆきと)「真白・・・どこだ? ・・・おっ」
雪斗(ゆきと)「おーい、ま・・・」
雪斗(ゆきと)「誰だ、あのオッサン・・・!?」
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クリスマスプレゼントだから贈り物は良いものに違いないという思い込みを良い意味で裏切られました。ブラックなお話しとても好きです。
文字数の制約の中で見事などんでん返し。感嘆しました。さて、これは本当にバッドエンドなのかと感じてしまいました。少女は父親の望みを叶える存在として周りを巻き込んだようにも……保険金を自らに掛け死を望んでいた父親の望み通りに……すぐに暴力につながるような男とも縁が切れ、娘には保険金。全ては父親の望み通りに、なんて深読みでしょうか……。
場面転換の血しぶきで嫌な予感がしたのですがなかなか救いのないお話でした。でもサンタ的存在が人間でないなら、与える側なりに汲み取った何かを与えるでしょうからもらう側の希望に沿うとは限りませんよね。それが少女という無邪気なキャラで描かれることで怖さも読みやすさも増している気がします! 冬らしさを感じられてよかったです。