エピソード3 コラボカフェ危機一髪!?(脚本)
〇桜並木(提灯あり)
──今日は桜まつりのひ
黑條 之(こくじょう ゆき)「──春、うらら」
──ふっと空を仰いだ
雲がゆったりとした流れで泳いでいた
・・・目線を戻す
花見客はほかにもいるらしく
皆、思い思いに楽しんでいる様子がうかがえた
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「・・・んあ」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「──飲み足りない」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「ふぇあ~」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「・・・ん」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「・・・でてこないなぁ」
十六夜 ちとげ(いざよい ちとげ)
酒豪の少女
片手に持った酒升の扱いは危うげで
逆さのまま二度、縦に振り
・・・空っぽの中身を下からのぞきこむ
──力任せに酒升を何度も振る
──見事に酒升は地面に叩きつけられ
・・・砕け散った。
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「酒升がぁ~」
・・・
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「・・・ほやぁ?」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「──こんなところに」
ひざを使って移動する
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「酒樽だぁ~」
・・・酒樽ではない。
朝星 ひので(あさほし ひので)
十六夜の姉である。
そうとも知らず
ひのでに両腕を広げて抱き着く
──がばっ!!
朝星 ひので (あさほし ひので)「・・・」
──危うく弁当を落とすところだった
・・・いろいろ言いたいことはある
──弁当か酒樽呼びかと言われたら
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「ぎゅぅ~」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「えへへ」
──酒樽である
朝星 ひので (あさほし ひので)「・・・誰が酒樽ですって?」
朝星 ひので (あさほし ひので)「──ぶっ潰すわよ」
懐から鉄球を取り出す。
──名は妙浄(みょうじょう)
しっかりと弁当を安全な場所へ
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「──あへぇ」
黑條 之(こくじょう ゆき)「──そうだわ」
黑條 之(こくじょう ゆき)「──桜の下に埋めましょう」
黑條 之(こくじょう ゆき)「──きっと、きれいになるわ」
──艶のある黒々しいその紐の名は
関の紐(せきのひも)
朝星 ひので (あさほし ひので)「──そうね」
朝星 ひので (あさほし ひので)「それがいいわ」
黑條 之(こくじょう ゆき)「荷造り、荷造り 地獄行~」
──おやめなさい
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「──切れた」
──萌黄色の着物を着た女性は
櫛の持ち主らしく
土を手で払い、懐に収めた。
櫛の名を五十鈴(いすず)
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「──飲み過ぎですよ」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「こんなへべれけになるまで飲んで」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「・・・うー」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「まーた、ひのでは埋めようとして・・・」
朝星 ひので (あさほし ひので)「──いいじゃない ・・・別に死なないんだし」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「之(ゆき)も・・・埋めようとしないの」
黑條 之(こくじょう ゆき)「桜。来年はきれいになりますよ?」
黑條 之(こくじょう ゆき)「だめ、、ですか?」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「やめときなさい ちとげを埋めたら、」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「桜が、枯れるわ」
黑條 之(こくじょう ゆき)「・・・あら」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「・・・さて、」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「居るのは分かっています」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「──出てらっしゃい」
吸血忍者☆ぽりん「──なによ」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「・・・やっぱり」
吸血忍者☆ぽりん「・・・やろうってんの?」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「・・・その気なら受けて立つわ」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「どーうぅどーうっ!」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「いいよ。いっしょに飲もう」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「うそついたらはりせんぼんの~ます」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「はい、あーん」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「・・・」
吸血忍者☆ぽりん「・・・(相変わらずね)」
吸血忍者☆ぽりん「何もしないでしょうね」
蔓巻 とどめ (つるまき とどめ)「・・・私は、しないわよ」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「──今日はみんな友達」
十六夜 ちとげ (いざよい ちとげ)「・・・ね」
朝星 ひので (あさほし ひので)「・・・そうね」
黑條 之(こくじょう ゆき)「・・・ええ」
──
──こうして夜は更けていくのであった
〇店の入口
御子柴 みつる「──ついに、この時がきた」
──コラボカフェ
フリー入場制
ワンフード、ワンドリンク
それぞれ一品につき一つの
描きおろしコースター
じゃじゃ馬ソルジャーの世界観における
桜まつりをテーマとしたもので
桜が咲く季節に合わせて開催された
御子柴 みつる「─これはまさに、”桜まつり”なのである」
御子柴 みつる「──ドヤァ」
コースターとは別に
描きおろしのイラストを使用した
限定グッズを
店内併設ストアで販売
キャラクターをイメージした
コラボ料理
御子柴 みつる(その中でも、ボクのイチ推しは 吸血忍者☆ぽりん)
御子柴 みつる「──狙うは、ぽりん ただ一人」
御子柴 みつる「──いざ、入店!!」
〇カウンター席
店員「──お待たせしました こちら、ぽりんのぷりん☆アラモードで ございます」
じゃじゃ馬ソルジャーの
キャラクターである
蔓巻(つるまき)とどめ
のグッズを付けた店員が
料理を運んできてくれた。
店員さんの推しへの愛が伝わってくる。
店員「──ごゆっくりどうぞ」
御子柴 みつる「わぁっ──♡」
メニュー紹介によれば、
吸血忍者には欠かせない血をイメージした
ラズベリーソース。
ほどよい酸味は、ツンデレな性格。
流暢なボイスは
プリンの滑らかな舌触り
とろける心地のプリンの味は
人々を魅了する
ぽりん自体をあらわしている。
仕上げのホイップ&デコレーション。
四つ葉クナイとミニキャラのイラストが
刺さっている。
──お値段 990円
御子柴 みつる「──さすが、わかってらっしゃる」
御子柴 みつる「──はぁ~ 来てよかったぁ」
──ぱく
ひと口、ふたくち。
味をかみしめていく
まさに、ぽりんのイメージにぴったりだ。
〇カウンター席
十六夜(いざよい)ちとげ推しの子「”千本針の升ソーダ”お願いします」
十六夜(いざよい)ちとげ推しの子「──わぁッ!! 『刺しまくってる!!』って感じ」
十六夜(いざよい)ちとげ推しの子「トレードマークの升入り ちゃんと再現されてるんだ!」
朝星(あさほし)ひので 推しの人「”日の出おにぎり”一つ」
朝星(あさほし)ひので 推しの人「──おお、これこれ!」
朝星(あさほし)ひので 推しの人「ひのでがつくる 通称 具っとモーニングむすび」
朝星(あさほし)ひので 推しの人「ひのでの家はお米が買えない分 具を一杯入れるんだよな」
朝星(あさほし)ひので 推しの人「最初出てきたとき ファンの間で話題になってたんだよなー うんうん」
御子柴 みつる(あ)
御子柴 みつる「あっちはちとげ推しで」
御子柴 みつる「──こっちの人はひので推しだ」
御子柴 みつる「(みんな、愛がある人達ばっかりだから さすがにアンチはいないよねぇ~)」
御子柴 みつる「いやぁ~ コラボカフェさいこー!!」
「──なんだよ・・・」
御子柴 みつる「・・・へ?」
〇カウンター席
黑條 之(こくじょう ゆき)の推し「──つまんねー」
黑條 之(こくじょう ゆき)の推し「──最悪」
黑條 之(こくじょう ゆき)の推し「──来て、損した」
御子柴 みつる「(──んぁあ”?)」
──か細い声が隣から聞こえる
一杯のソフトドリンクを大事そうに
両手で包んでいる。
うつむきがちに悔しそうな顔をしているのがわかる
目の前の桜並木も見る気はないようだ。
・・・ボクとしては、聞き捨てならない
──けど、
──しかし、ここに来ている以上ファンなのだ
──パソコンの向こう側とは違う。
・・・考えよう。
──使い古されたリュックサック
──交通系ICカード
──たった一つの缶バッジ。
──小学6年生辺りだろうか
──近場から来たわけではなさそうだ
御子柴 みつる「──ねぇ、キミは」
御子柴 みつる「──どうして つまらないなんて思うの」
黑條 之(こくじょう ゆき)の推し「──あっ・・・」
気まずそうな顔と目が合う
黑條 之(こくじょう ゆき)の推し「──別に、つまんねーから つまんねーだけだし」
ぷいっとそっぽをむく
黑條 之(こくじょう ゆき)の推し「──つっかかってくんなよ」
そういって、グラスを握る手に力が入る