隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして

内村一樹

第7話 安い愛(脚本)

隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして

内村一樹

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〇大学の広場
  ──花楓を待つこと30分
  もう18時を過ぎた頃に彼女はやって来た
黒光花楓「ごめん、待った?」
大心池須美「随分遅かったね。 そんなに先生の話が長かった?」
黒光花楓「そう、ホントにさぁ~ 学生の時間を何だと思ってるんだろうね? 喉乾いたよ」
大心池須美「それはお疲れ様だね」
黒光花楓「スーミィは何にする? 待ってもらったし、おごるよ」
大心池須美「そう? じゃあ、抹茶オレで」
黒光花楓「あ、それ美味しいよねぇ ワタシもそれにしようかなっ!」
大心池須美「ありがとう。 ・・・で、結局アンタは何をやってるの?」
黒光花楓「気になる? ふふふ。 気にされるのって、結構嬉しいね」
大心池須美「喋るつもりが無いなら 私はもう帰るけど」
黒光花楓「またまたぁ~ ツンツンしちゃってぇ・・・」
黒光花楓「って、ちょっと!? そんなに急いで飲み干す必要ないんだよ!?」
  そう言う彼女を無視して、私は抹茶オレのパックをごみ箱に捨てた。
  もちろん、すぐに帰るために。
黒光花楓「むぅ・・・」
大心池須美「ちょっと、しがみ付かないでくれる? それに、頬を膨らませても、私に効くわけないでしょ」
黒光花楓「・・・」
大心池須美「花楓ってあれだよね 普段仲の良い人が少ないから 距離感バグってるよね」
黒光花楓「それはスーミィも同じでしょ? 人から離れすぎだよ」
黒光花楓「それに、私は別に距離感バグってるワケじゃないよ」
黒光花楓「仲良くなれるんなら、一気に仲良くなった方が絶対に楽しいじゃん!!」
大心池須美「絶対に、ねぇ」
黒光花楓「まぁまぁ、今は落ち着いて話をしようよ ほら、ここにお座りなさい。 固くて座り心地の悪いベンチだよ」
大心池須美「それはどんな誘い文句なの?」
  ジーッと見つめて来る花楓の圧に負けて、私はベンチに腰を下ろすことにした。
  ホントに硬いなぁ・・・
黒光花楓「何をやってるの、かぁ そうだなぁ」
黒光花楓「簡単に言うと、佐藤さんの感情を消費させようとしてた。 ってのが分かりやすいかな」
大心池須美「いや、ごめん。 全然意味わかんない」
黒光花楓「そうだよねぇ だけど、スーミィも見たはずだよ 今回で言えば、『裁ちバサミ』をね」
大心池須美「ねぇ、説明する気ある?」
黒光花楓「べつに冗談を言ってるんじゃないからね!?」
黒光花楓「スーミィも見たでしょ? 彼女が裁ちバサミを持ってたところ」
大心池須美「それはまぁ見たし、確かに変だったけど」
大心池須美「変っていう漠然としたものよりは、怖いって言った方が正しいかも」
黒光花楓「そうだね。 実際、あの時の彼女は何をするか分からない雰囲気だったし」
大心池須美「それを見たから何なの?」
黒光花楓「あの時の佐藤さんは、いわゆる暴走状態だったんだよ」
黒光花楓「溢れ出す感情に身体が支配されて、理性を失った状態」
黒光花楓「私はそんな彼女の感情を減らすために、 1週間ずっと頑張ってたんだ」
大心池須美「暴走・・・ 裁ちバサミが彼女の感情って言ったけど、 それはどういう意味?」
黒光花楓「簡単だよ。佐藤さんは祇園寺君に未練があった」
黒光花楓「だけど、それと同じくらい強く、彼との縁を断ちたいって気持ちもあったんだ」
黒光花楓「それを、彼女は無意識のうちに抑え込んでたみたいだけどね」
大心池須美「そういうこと・・・」
大心池須美「花楓が言ってることが本当だとして だけどやっぱり、色々とおかしいよね?」
大心池須美「花楓が心を読めたとしても だからと言って、佐藤が暴走するのは 話が違うでしょ?」
黒光花楓「さすがスーミィだね。 もうそこに気づいちゃったかぁ」
大心池須美「そんな不思議な話が、身の回りで頻繁に起きるのは、明らかにおかしいし」
黒光花楓「・・・そうだよ、スーミィが察してる通り 根本的な原因は他にある」
黒光花楓「彼女が・・・ ううん。そうじゃないね。 全部、ワタシが原因なんだ」
黒光花楓「ワタシが人の心を読むと、その人の感情を引っ張り出しちゃうから。 それが、一番の原因」
大心池須美「えっ・・・そっか・・・」
大心池須美「だから、自分で解決しようとしてるの?」

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