トナカイを見つけたら‥(脚本)
〇マンション前の大通り
トナカイがいた
割と自然に、
いつもの事ですよとでも言っているかのように、
そこにトナカイが立っていた
私以外にも周りに多くの人がいたけれど、
誰もトナカイに気がついていない
いや、気がついているけれど
気にしてないのかもしれない
皆、トナカイに慣れているのか?
私以外は‥
トナカイ「‥‥」
ただ、少し気になったのは、
そのトナカイが困っているように見えた
いや、そもそも本物のトナカイを見たのは初めてだし、
ましてや困ったトナカイなんて考えた事もない
だから、あくまで想像なんだけど‥
村崎しおり「何か困ってる?」
トナカイ「‥‥」
まあ、そうだ、
トナカイは話せないし、
こちらの言葉もわかるわけが‥
胸にかけてある鈴が鳴った、
まるで返事でもしているように
また鳴った‥
何か言いたいのかな?
‥えっ?
鈴?
トナカイって、鈴つけてるっけ?
鈴を付けるのって、
たしか猫じゃ‥?
それと‥
熊?
違う!
あれは熊除けに人がつけるんだ‥
あっ、鳴った
村崎しおり「どうかしたの?」
そう聞くと、
トナカイは側にある大きなマンションを見あげた
村崎しおり「このマンションに入りたいの?」
トナカイ「‥‥」
‥どうもそうではないようだ
このトナカイ、
誰かが飼ってるのかな?
だって鈴が付いてるし‥
村崎しおり「あっ、もし入りたいなら、 あっちに入り口があって、 でもたぶんオートロックだから‥」
村崎しおり「オートロックってわかる?」
‥また、困った顔をした
村崎しおり「うーん、困ったな? 理由がわからない‥」
鈴‥
トナカイ‥
鈴‥‥
鈴?
あっ!もしかして!
村崎しおり「下見!?」
村崎しおり「ねぇ?下見に来たの?」
村崎しおり「そうなんだ! たぶん、屋上なら橇を止められると思うよ」
村崎しおり「ただ、煙突が無いんだけど‥」
トナカイ「‥‥」
村崎しおり「でも大丈夫だよ! ベランダからこっそり入れば」
喜んだように鈴を鳴らしたトナカイが、
口に何か小さな物を咥えていた
そしてそれを私に渡してくれた
村崎しおり「これ、くれるの?」
そう言って顔をあげると、
そこにもう、トナカイはいなかった
村崎しおり(‥また別の場所へ下見にいったのかな?)
村崎しおり(こんなマンションがたくさんあるから、 きっと下見も大変なんだろうな)
帰りながら、
私はそんな事を考えていた
それをもらった次の日から、
不思議と信号待ちが無くなったし、
混んでる電車でも必ず座る事ができた
何でだろう?
必ず座れるとわかったら、
あっさりと人に譲る事ができる
それに人に席を譲るって
何だかちょっとニコニコになれる
たぶんこれは、
ちょっと早いクリスマスプレゼントなんだろう
だからみんなも困ってるトナカイを見つけたら
助けてあげるといいよ
おしまい
街中のBGMの他は鈴の音しかないのが、音色を際立たせていて素敵でした。癒やされました🔔
この話!凄い面白いですね👍
まずトナカイがいる環境が面白いし、その後の鈴はクマ、ちがうそれは...という考え方。脳内で呟く独り言感がとても出ているし、なんだったら私も同じこと考えてると思います
あと、当たり前ですけどって顔で、とか信号と電車に待たなくていいとか、凄く共感出来ました!しおりといい友達になれそう思うと嬉しかったです😂
ほっこりしました。
ちょっと季節外れですけど
あ、🎐でも有ですね