Hello Happy Christmas(脚本)
〇高級マンションの一室
ヒカル「諸君、待ちに待ったクリスマスイブだ」
傭兵A「狩り(マンハント)の時間だな」
傭兵C「地獄まで一名様ご案内ですね」
傭兵B「フン、叩き潰してやるぜ」
ヒカル「ドローンからの情報によれば、やつはすでにこのマンションに到達している」
ヒカル「己が侵入口とするのにふさわしい煙突状の構造物を求め、北側の壁面を登っているところだ」
傭兵B「俺が行く」
傭兵C「ほう、一番槍を狙いますか?」
傭兵B「ああ、残念だったな」
傭兵B「おまえらの出番はナシだ!」
ヒカル「Bが行ったか」
傭兵C「相手は百戦錬磨のサンタクロース。奴ひとりの手には負えんでしょう」
傭兵C「私もフォローに行きましょう」
ヒカル「うむ。頼んだぞ」
傭兵A「・・・」
〇超高層ビル
ザシュッ、ザシュッ──
大きな袋を背負ったサンタクロースが、ビル風に煽られながら高層ビルの壁面を登攀していた
それを屋上から見下ろす黒い人影
誰よりも一番槍にこだわる男、傭兵Bだ
傭兵B「ハハハハハ! サンタクロースが無防備な姿を晒してやがる!」
傭兵Bは自宅から持ってきたロケットランチャーを構えた
傭兵B「俺は生まれてこのかた一度もクリスマスにプレゼントをもらったことがない」
傭兵B「サンタは存在しない。そう信じて生きてきた」
傭兵B「それなのにサンタは、お前は実在した」
傭兵B「俺はどうしても、お前の存在を許すことができない」
傭兵B「子供たちへのプレゼントもろとも、散れッ!」
サンタクロースは夜闇に溶ける屋上に一瞥をくれる
一分の動揺もなく、気負いもなく、ただ静かなまなざしが
ロケットランチャーでは私は倒せぬぞ、と語っていた
傭兵B「グッバイ、サンタ! さようなら、クリスマスッ!」
傭兵Bはロケット弾を発射した!
ドゥッキューーーーーーン!!
〇宇宙空間
ロケット弾は地面に対してほぼ水平に射出された
傭兵B「・・・」
傭兵B「まっすぐにしか撃てないや」
すると突然
ガサガサガサガサガサッ!
サンタクロースがゴキブリのように猛スピードで壁面を登りはじめた
〇屋上のヘリポート
またたくまに屋上へと駆け上がる
スタッ
傭兵B「なッ!?」
ザシュッ
ズサッ
相手を一撃で倒したサンタクロースは、背負っていた袋に傭兵Bを詰めた
袋を閉めたとき、背後の闇にわずかに殺気が立った
サンタは目もくれずに気配を薙ぎ払った
ザシュッ
傭兵A「──ッ」
ズサッ
傭兵Aを一撃で倒したサンタクロースは、傭兵B同様、背負っていた袋に詰めようとする
傭兵A「・・・やめ・・・ろ、おれは・・・ただ、」
傭兵A「プレゼント・・・ほし・・・かっ、た」
ズゲシッ
クリスマスへの想いを吐露しようとする傭兵Aを、サンタは無慈悲に殴り倒した
傭兵C「おやまあ、ずいぶんかわいげのないプレゼントもあったもんだ」
傭兵C「そんなものを貰って喜ぶ子供が、どこの世界にいるんでしょうかね」
サンタクロース「そこをどけ」
傭兵C「私は子供の頃、クリスマスが憎くてたまりませんでした」
傭兵C「暖かい家、家族の団欒とは無縁な生活をしておりまして」
傭兵C「一度でもいいから、誰でもいいから」
傭兵C「私にプレゼントをくれないものかと思ったものです」
傭兵C「よい子であろうと努力しました」
傭兵C「神にも祈った」
傭兵C「だが誰も私にクリスマスプレゼントをくれなかった」
サンタクロース「どけと言っておる」
傭兵C「普段は慈善活動だなんだとすまし顔をしている金持ち連中も」
傭兵C「胡散臭い善人面を張り付かせた坊主どもも」
傭兵C「そしてあなたも」
ドゥクシッ
傭兵Cを殴り倒したサンタクロースは、背負っていた袋に詰めた
サンタクロース「サンタ道とは修羅道よ」
はち切れそうな袋を軽がると担ぎ上げ、サンタは再び歩きはじめる。目指すのは
サンタクロースの存在を頑なに否定する女、ヒカルの部屋だ
〇高級マンションの一室
ヒカル「全員やられたようだな」
ヒカル「よい子にはプレゼントを、わるい子には鉄拳制裁を」
ヒカル「それがサンタ道だと聞いている」
ヒカル「サンタクロースの存在を頑なに否定する私は、座して制裁を待つ身となったか」
ヒカルが死を覚悟した、そのときだった
ドゥゴォオオゥウゥン
壁をぶち破ってサンタクロースが現れた
ズザッ
ボトボトボトッ
傭兵C「!?」
傭兵A「!?」
傭兵B「!?」
ヒカル「これはいったい、なんのつもりだ」
サンタクロース「頭の後ろで手を組んで、全員その場に座れ」
サンタクロース「わるい子はサツガイだ」
ヒカル「ふんっ、誰がおまえの言うことなんか──」
ババババババババババ
サンタはリビングの壁をハチの巣にした
ヒカルはその場に跪いた
ヒカル「クッ、圧倒的な威圧感・・・これが本物のサンタ・・・」
サンタクロース「全員、心の準備はできたか?」
ヒカル「ええ、煮るなり焼くなり好きにして」
傭兵C「え?」
傭兵B「は?」
傭兵A「!?」
サンタクロース「これより、わるい子の処刑を開始する」
傭兵B「ちょっとまてッ!?」
傭兵A「処刑!?」
傭兵C「い、いったい、なんの、は、はなしですかッ!??」
サンタは問答無用でマシンガンを撃ち放った
〇雷
きゅぽん
〇高級マンションの一室
サンタクロース「メリークリスマス、よい子のみんな」
ヒカル「!?」
傭兵B「なにがどうなってやがる!?」
サンタクロース「わるい子はたった今シャサツした。お前たちは全員よい子だ」
傭兵B「は?」
サンタクロース「これは私からのプレゼントだ」
ヒカル「こんなもの、もらったって」
ヒカル「あ、これ! 欲しかったタブレットだ!」
ヒカル「べつにいまのでいいかなって思ってたけど、本当は欲しかったやつ!」
傭兵B「お、俺、生まれてはじめてプレゼントをもらった!」
傭兵A「俺も・・・」
傭兵C「いいんですか? 私までもらってしまって?」
サンタクロース「もちろんだ。もっとはやく来られたらよかったのだがね」
傭兵C「それは・・・」
サンタクロース「メリークリスマス」
踵を返して立ち去ろうとするサンタクロースに、ヒカルが追いすがる
ヒカル「サンタさん!」
ヒカル「サンタクロースはいないって決めつけててごめんなさい!」
サンタは振り向かなかったが、応えるようにかるく手を挙げた
〇タワーマンション
よい子もわるい子も
メリークリスマス
聖人君子の修羅道、それがサンタ道なのですね!緊張感あり笑いありの作品の空気感とスカっとお見事なラスト、とても楽しいですね。
どうなるかと思いきや、優しい世界でした。
サンタさん強いですね!壁を上っている時とか、かっこよかったです!
悪い子がいなくなって、良い子にプレゼントって、すごく粋ですね。
楽しかったです!
サンタクロース…どこかのケンシロウのようなお方だ…笑
にしてもサンタクロースへの恨み辛み…けどあっさり受け入れてしまって!でもプレゼント貰えてよかったです笑