気を楽に(脚本)
〇公園のベンチ
ピタッ・・・
ピタッ・・・
佑月「・・・」
神座敷「・・・」
佑月「・・・」
神座敷「・・・」
佑月「・・・何で着いてくるんですか」
神座敷「だって、私はアナタの世話係ですので」
佑月「辞めてくだ・・・」
神座敷「それに組長からの命(めい)ですので、勝手に辞めたら殺されますし!」
佑月「・・・」
神座敷「昔やんちゃで、勝手にカチコミした時、組長に殴られて〜」
神座敷「カチコミで負った傷より、そっちの方が完治するの時間かかったんですよ?」
佑月「・・・」
神座敷「そもそも、何故そんなに辞めて欲しいんですか? やっぱり私って怪しいですかね?」
佑月「・・・僕といる人は、皆、辛い思いをさせてしまう」
神座敷「何故?」
佑月「僕は、お父さんの、組長の息子で、組の弱みになります」
佑月「皆、僕を庇って無茶するっ」
佑月「悠二叔父さん・・・パパも──」
神座敷「はぁぁぁぁああ」
神座敷「これだからガキのおもりは面倒なんだよなぁ・・・」
佑月「!?」
今までヘラヘラしていた顔が、真剣な顔つきになる
神座敷「あのな」
神座敷「お前は「組長の」弱みに過ぎない」
神座敷「お前が弱ると、組長が弱り、組も弱る」
神座敷「でも、「組の者全員」の弱みじゃあない」
神座敷「少なくとも俺は、お前がどうなろうと、この組がどうなろうと知ったこっちゃない」
神座敷「実際世話になったのは先代だしねぇ」
神座敷「じゃあ何で若頭やってんのかって言ったら・・・」
神座敷「「先代からの」命だから ・・・あと、親友からもお前を頼まれた」
神座敷「だからやりたくもない御子様の御相手してやってるワケ」
佑月(・・・)
神座敷「・・・まぁ、要するに」
神座敷「貴方様は私の弱みではないので、出来る限り御守り致しますが、いざとなったら自分優先にしますので安心して守られてください★」
佑月「・・・いや、『守られてください』って、守る気ないですよね」
神座敷「いや、「死なせるな」と言われたので、一応は有ります。やる気」
佑月「それは逆に言うと、瀕死にならない限りは助けないという事であってますか?」
神座敷「はい」
佑月「・・・すぅ」
佑月「やはり大丈夫です」
神座敷「そんな事言わずに〜」
佑月「いえ、アナタは生理的に無理な人種ですので」
神座敷「私にとっては好きな人種ですので」
神座敷「あ、待ってくださいよ〜 どうせ帰る場所は同じなんだから〜♪」
佑月「・・・」
佑月(『いざとなったら自分優先にしますので』)
佑月(そう言われて、「嫌だな」よりも「それは良かった」という安心が来た)
佑月(少し、『気を楽に』と言われているように思ってしまった)
佑月(・・・)
佑月「初めてだな。あんなムカつく態度する人」
〇屋敷の大広間
佑月(神座敷・・・?)
神座敷「何やってんだよ、アンタ!!」
神座敷は勢いよく立ち上がり、こちらへやって来る
佑月(わっ。びっくりした、神座敷ってこんな荒々しかったっけ・・・?)
神座敷「その傷。誰にやられた!?」
佑月(怖い・・・)
「別に」
佑月「!?」
佑月「転んだだけです」
佑月「え、ぼ、僕・・・?」
神座敷「・・・そうかよ」
佑月「・・・心配してくれたんですか」
神座敷「そうだよ。余計な心配かけさせんな」
佑月「・・・はい」
???「まあまあ、佑月が怖がっているからやめなさい」
秋「佑月、向こうで手当てしよう」
佑月「パパ・・・!?」
神座敷「秋(しゅう)様・・・甘やかさないで下さい!!」
秋「も〜、神座敷君は佑月にもう少し笑顔で接しなよ〜?」
神座敷「貴方が甘いんです!」
秋「はいはい」
神座敷「あ、ちょっと!まだ話は終わってません!」
佑月「・・・知らない。こんな事知らない・・・」
佑月「だって、パパは・・・」
〇木造の一人部屋
???「御坊!!」
佑月「ン・・・」
佑月(・・・あれ)
佑月「あ・・・そっか、帰って直ぐに寝ちゃったんだ」
???「御坊!!まだ寝ていらっしゃるのですか!?」
佑月「いや、もう起きました」
寝起きで重い身体を頑張って起こして、おぼつかない足取りで扉へと向かう
佑月「あ、矗(のぶ)さんでしたか」
坂井 矗「あ、御坊。食事の時間です」
佑月「わざわざありがとうございます」
坂井 矗「行きましょう」
矗さんは僕に手を差し伸べる
佑月「・・・はい」
本当は、僕を養子に迎えてくれたのは「お父さん」じゃなくて「パパ」だ
「パパ」は先代組長で、現組長(お父さん)の息子
パパは事故で意識不明となり、今は、引退していたお父さんが復帰して、代理を務めている
・・・事故は、僕のせいだ
そうやって暗くなっている僕を見兼ねて、パパの真似をしているのだろう
いつもこうしてパパが毎日、手を繋いで食卓まで連れて行ってくれたから
佑月(それにしても、あの夢は一体・・・?)