真夏のメリースマスリク

篠也マシン

今日は楽しいスマスリク♪(脚本)

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〇駅前広場
  今日は待ちに待ったスマスリク。
  仕事を終えた僕は蒸し暑さに耐えかね、ネクタイを緩めた。
正「お父さん、お仕事お疲れ様」
僕「正、一人で来たのかい?」
正「うん!」
正「お兄ちゃんの家にも一人で遊びに行けるようになったし、これぐらい平気さ」

〇男の子の一人部屋
  正は一人っ子だ。
  近所に住む年上の友達を「お兄ちゃん」と呼び、慕っているらしい。

〇駅前広場
正「鞄持つね」
僕「ありがとう」
僕「無理はしなくていいからね」
正「へへ、任せてよ」
  彼は太陽のように輝く笑みを浮かべた。
正「ねえ知ってる?」
正「今日はスマスリクなんだよ」
僕「もちろん」
僕「ニュースもその話題ばかりだからね」
正「お父さんは子供の頃、サンタさんに何をプレゼントしたの?」
僕「僕が子供の頃、スマスリクはなかったからな」
  スマスリクとは、クリスマスと反対のことをする日。
  つまり、子供達からサンタへプレゼントを渡すのだ。
  時期も冬でなく、夏の真っ只中にある。
正「そうだったんだ!」
正「なんでできたんだろう?」
僕「さてね」
僕(ハロウィンとか、昔はなかったイベントがどんどん増えてきた気がするな)

〇おしゃれなリビングダイニング
正「お母さん、ただいま!」
正「ちゃんとお父さんを迎えにいけたよ」
妻「あら、えらかったわね」
  正は鞄を僕に返すと、自分の部屋へ戻っていった。
妻「お疲れ様」
妻「今日はあの子から何かプレゼントをもらえると思う?」
僕「自分からスマスリクのことを話題にしていたからね」
僕「ちょっと期待してるよ」
  正もそろそろ世の中の動きを知っておく必要がある。
僕「いつもプレゼントをあげてばかりのサンタさんにもお礼をしなくちゃ」
僕「バレンタインデーにはホワイトデーがあるんだ」
僕「クリスマスにそういう日があってもいい」
妻「礼には礼をつくすってやつね」
妻「あの子も立派な大人に成長してほしいわ」
  ソファへ座ると、いい匂いがしてきた。
僕「早く君のおいしい料理が食べたいな」
妻「じゃあ早くできるよう手伝ってね、サンタさん」
僕(やれやれ、サンタさんも大変だ)

〇おしゃれなリビングダイニング
正「ご馳走様でした!」
  食事を終えると、正は再び自分の部屋へと戻っていった。
僕(プレゼントを取りに行ったのかな?)
  だがしばらく待っても戻ってこない。
僕「ちょっと期待し過ぎたか・・・」
妻「今お茶を入れるわ」
妻「また来年期待しましょうよ」
僕「そうだね」

〇白いバスルーム
僕(幼い頃、僕もプレゼントのお返しなんてしたことなかったな)
  それどころか、プレセントの中身に不満を言う愚かな子供だった。
僕(僕に正をさげすむ資格はないな)
正「ねえ、お父さん」
  振り返ると、いつのまにか正が立っていた。
僕「どうしたんだい?」
正「これ」
  綺麗にラッピングされており、英語で『メリースマスリク』と書かれてある。
僕「僕に? どうもありがとう!」
  落ち込んでいた気持ちが嘘のように明るくなる。
正「ううん、お父さんにあげるわけじゃないよ」
僕「えっと──じゃあお母さんにかい?」
正「違うよ」
僕「じゃあ一体誰に?」
正「サンタさんに決まってるじゃないか」
正「クリスマスの時、お父さんが言ってたよね」
僕「どういうこと?」
  正は透き通るような笑顔を浮かべた。
正「ほら、『お父さんはサンタさんと知り合いなんだよ』って」
正「だからこれをサンタさんへ渡してほしいんだ」
僕「よし、お父さんに任せてくれ」
  僕が思っている以上に彼は幼く、そして優しかった。

〇オフィスのフロア
後輩「これ、どうしたんですか?」
僕「スマスリクのプレゼントとして、息子にもらったんだよ」
後輩「へえ」
僕「なあ今日はいつもより暑くないし、少し窓を開けてみないか?」
後輩「まったく、いつもエアコンの温度を下げろってうるさいのに」
  後輩が僕をからかい、窓を開けた。
僕(うざったいと感じる夏の日差しも、なんだか心地よいな)
  昨日正が言った言葉を思い出す。

〇白いバスルーム
正「いつも暑い服装のサンタさんに、少しでも涼しくなってほしいんだ」

〇オフィスのフロア
僕(今日は早めに仕事を切り上げ、おもちゃ屋に寄って帰ろうか)
僕(たしか、正がほしがっていたゲームソフトの発売日だったはずだな)
  窓を見ると──
  小さなサンタにもらった風鈴が心地よく揺れていた。

〇男の子の一人部屋
お兄ちゃん「な、うまくいっただろう?」
正「うん」
正「お兄ちゃんの言う通りだったよ」
  スマスリクからしばらくたったある日、
  僕は近所に住む年上の友達の家に来ていた。
正「おかげで、ほしかったゲームソフトを買ってもらえたよ」
正「どうもありがとう」
お兄ちゃん「どういたしまして」
お兄ちゃん「正ももう小学生なんだ」
お兄ちゃん「ほしいものを手に入れるためには、頭を使わないといけない」
正「でも、お父さんをだましたみたいで気が引けちゃったな」
お兄ちゃん「おいおい」
お兄ちゃん「そんな甘いこと言ってたら、この先生きていけないぜ」
お兄ちゃん「正もそろそろ世の中の動きを知っておく必要がある」
お兄ちゃん「どうせスマスリクなんて、どこかのメーカーが仕掛けた策略だ」
お兄ちゃん「お返しをもらった親は、クリスマスにこれまで以上のプレゼントを準備するって寸法さ」
正「なるほど!」
お兄ちゃん「正、君はもっとクールな人間にならないとだめだ」
お兄ちゃん「そのためにはあどけない子供を演じてでも、他人を利用する術を覚えておくんだ」
正「うん!」
正「お兄ちゃんはさすがだね」
正「いつも僕では考えつかないことを教えてくれる」
正「いつかお兄ちゃんみたいな、頭もよくてかっこいい人になりたいな」
  僕の言葉に彼は得意げに笑った。
  僕はうちわのように手で顔を仰ぐ。
正「それにしても暑いね」
正「エアコンでもつけようよ」
お兄ちゃん「そうだな」
  僕はクールな彼に向かって微笑んだ。
  これからもたくさん利用してあげるよ
  お兄ちゃん

コメント

  • 今の若手スポーツ選手や学生起業家などで活躍している人を見ると、こういう面は多少あるだろうなと思います。
    感想欄で「末恐ろしい」と言う方が多いので、「えっ、そうなの!?」と逆に驚いてました(^_^;)
    私個人としては、むしろしっかりせざるを得ない子供達に「君達に負担を押し付けてすまない」と反省しきりです…
    (アラフォーで未婚、親の脛齧りなもので…)(^_^;)

  • お兄ちゃん悪い子…と思っていたら、子どものほうが一枚上手だったみたいですね。笑
    子どもからのプレゼントって、親は喜びますもんね。

  • 両親の期待や喜びを背に、子供の悪知恵はどんどん成長する…。
    いやぁ末恐ろしい…、いずれ人を利用して人財産あげそうな子ですね…笑

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