完全黙秘の女

ちろり

わたしの恋(脚本)

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〇取調室
  取調室──
刑事1「お前が被害者の脇腹を刺したことを 多くの目撃者が証言してるんだ──」
  刑事が机を叩く
刑事1「なんでこんな事をしたのか いい加減、吐いたらどうだ!」
チアキ(──だって、チアキは悪くないもん 悪いのは全部カズ君だよ)
チアキ(こんなにチアキが愛しているのに── 裏切ったんだから・・・)
チアキ(──知り合って、一年)
チアキ(──カズ君は、初めて会った時から 爽やかな笑顔で接してくれた・・・)
チアキ(カズ君が毎朝淹れてくれる 濃いめのコーヒー)
チアキ(それに添えてくれる 小さなメッセージ)
チアキ(「いい1日を!」とか 「雨だけど頑張って!」なんて 飾らない言葉が私を励ましてくれた・・・)
チアキ(そんな小さな幸せの積み重ね──)
チアキ(二人だけの時間がずっと続く そう思ってたのに──)
チアキ(あの日、カズくんが街で あの女と仲良く笑い合って 歩いていた──)
チアキ(私は思わず駆け寄って叫んでいた──)
チアキ「どういうこと! これって裏切り?!」
三ツ木涼子「カズくん、誰、この人? 裏切りって何のこと?」
山下一也「えっ?知らねーよ、こんな奴 て言うか、むしろ お前の援交仲間かなんかじゃないのか?」
チアキ(カズ君 チアキのこと、知らない人を 見るような目で見た──)
チアキ(それに、よりによって援交って 人をバカにするにも程がある──)
チアキ「もう頭に来て、夢中で 持ってたカッターナイフで 斬りつけちゃったけど──」
警官「課長、聞き込みの結果ですが この内藤と被害者、恩田一也の間には 何も関係が浮かんで来ませんね」
警官「強いて言えば、勤務先と 被害者の務めていたコーヒーショップが かなり近い場所にあるので」
警官「店を訪れていれば 顔見知りの可能性はあります」
刑事1「こいつが女なら、一方的な妄想を 膨らませたストーカーや」
刑事1「裏の交際の末の痴情のもつれって線も 浮かんでくるのだがなあ」
刑事1「恩田一也と一緒にいた女との関係はどうだ? こいつが裏切り者って叫んでたって証言もある 三角関係のもつれって線はないか?」
警官「今、当たっておりますが そちらの線もまだ出てきておりません」
刑事1「ふむ、そろそろ話してくれんかな 内藤智明さんよ」
内藤(トモアキじゃない 私、チアキだよ──)
内藤(動機は、乙女の純情を フミニジラレタってやつ──)
  終わり

コメント

  • 恋愛においては主観と客観の差が大きいことがありますが(主観:一途な片思い、客観:ストーカー、等)、まさにコレは!鋭いオチ、面白いですね!

  • 冒頭からいかにも女性が言いそうなセリフでリアリティーがあったので、後半の警察官が報告するくだりから一瞬「ん?」と思いましたが、ラストで納得しました。タップノベルは大どんでん返し(?)作品の需要が高いようですね。私も書いてみたいと思いました。

  • メッセージの文言からスターバックスのカップだということはすぐに分かりましたが、チアキの姿がトモアキの脳内の自分の姿なんだ、と分かったときにはぞーっとしました。実写では不可能なナイスアイデアな二段落ちですね。

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