#10 カラフル・スクランブル(脚本)
〇綺麗なコンサートホール
水瀬「うそ、でしょ・・・」
水瀬「村上・・・さん・・・?」
村上「やっぱり 水瀬くんだよね?」
村上「よかったー、 すぐに私だって気付いてくれて!」
村上「驚いちゃったよー!」
村上「まさか水瀬くんが──」
〇黒
村上「──あ、待って!」
『僕』はその場から走り出した。
〇渋谷のスクランブル交差点
水瀬(どうしよう・・・)
水瀬(どうしよう、どうしよう!)
なりふり構わず走り抜ける僕を
道行く人が振り返って見ている。
水瀬(やめて・・・)
水瀬(見ないで・・・)
──ドンッ
女性「きゃっ!」
男性「どこ見てんだよ!気を付けろ!」
水瀬「っ・・・」
男性「あ──おい!」
──見ないで、見ないで。
〇黒
お願いだから、
もう見ないでよ──!
〇高架下
水瀬「はぁ・・・はぁ・・・」
水瀬(どうして気が付かなかったんだ!)
水瀬(村上さんが居るかもしれないって、 少し考えればわかるのに・・・!)
水瀬(どうしよう、見られた・・・)
水瀬(どうしたら──)
村上「水瀬くん!!」
水瀬「──!」
村上「ふぅ・・・」
村上「やっと追いついた・・・」
水瀬「・・・どうして」
水瀬「どうして追いかけてくるの!? ほっといてよ!!」
村上「水瀬くん・・・」
村上「私──」
水瀬「どうせおかしいと思ってるんでしょ!?」
水瀬「隠れてこんな格好して・・・!」
水瀬「わかってるよ、 自分が普通じゃないってことくらい!」
水瀬「だけど、どうしようもないじゃん!」
水瀬「僕だって、なれるなら本当は普通の──・・・」
村上「・・・ねぇ、水瀬くん」
村上「私、聞きたいことがあるんだけど──」
水瀬「・・・・・・」
村上「・・・メイクとウィッグって、何使ってるの!?」
水瀬「・・・はぁ!?」
村上「それだけ走って全然崩れてないんだもん!」
村上「私も同じの使いたい!」
水瀬「いや、他に色々言うこと──」
村上「うん!」
村上「水瀬くん、すっごい綺麗!」
村上「最初は全然わかんなかったんだけど、 可愛い絆創膏貼ってたから」
村上「よく見たら、綺麗なお姉さんが 水瀬くんで驚いちゃった!」
水瀬「・・・おかしいって思わないの」
村上「おかしくないよ! すごく似合ってるもん」
水瀬「そうじゃなくて!」
水瀬「だって、こんな・・・」
水瀬「僕はっ・・・」
村上「『村上さんは可愛い服ってキャラじゃないよね』」
村上「──ってクラスの子に言われたことあるんだ」
村上「中学生の時の話だけど」
村上「私、昔からリボンとかフリルとか 大好きだったから、ショックでさ」
村上「だから、学校では 好きな物もずっと我慢してたの」
村上「・・・でもね」
村上「渋谷に来ると そんなのどうでもよくなっちゃうんだ」
村上「だって・・・見て!」
〇渋谷のスクランブル交差点
村上「みんな、おしゃれして好きな服着て」
村上「ちょー楽しそうに歩いてる!」
村上「だから私もこの街では、 好きな服着て可愛いメイクして」
村上「なりたい自分になるんだ!」
〇高架下
水瀬「なりたい自分・・・」
???「渋谷のみんなー!」
「!」
〇渋谷のスクランブル交差点
iroha「ciao♡ irohaだよー!」
iroha「・・・ライブを始める前に、ちゃんとお話しないとね」
iroha「アタシ、irohaは」
iroha「今日で活動を休止します」
iroha「・・・ネットでは色々と噂になってるよね」
〇高架下
村上「iroha・・・」
水瀬「・・・・・・」
iroha「だーけーどー!」
〇コンサート会場
iroha「アタシは絶対戻ってくる!!」
iroha「実は海外留学に行くんだ」
iroha「だからこれは、レベルアップするための ポジティブなお休み!」
iroha「待っててね」
iroha「何があっても自分らしくいられるような」
iroha「自信たっぷりの アタシになって帰ってくるから!」
iroha「──『自分らしさ』に迷っている誰かに、この曲が届きますように」
iroha「それでは、聴いてください」
iroha「『カラフル』」
〇高架下
iroha「〜〜♪」
水瀬「・・・irohaも、村上さんも」
水瀬「・・・すごいよ」
水瀬「自分らしくとか、なりたい自分とか・・・」
水瀬「そんなの、僕には無理だ」
村上「今の水瀬くんは、 なりたい自分じゃないの?」
水瀬「え?」
村上「水瀬くんも今は、自分が好きな 『自分らしい』格好してるんでしょ?」
村上「だったらもっと楽しもうよ!」
水瀬「・・・『自分らしい』──」
iroha「“誰だって自分の色は自分で決めれる”♪」
iroha「“君の色は何色?”」
ずっと、自分の色がわからなかった。
だけどまだ決めてないだけ──
きっと、透明だったんだ。
だったら『あたし』がなりたいのは、
黒じゃなくて・・・
水瀬「・・・とりあえずその 『水瀬くん』っていうの、やめて欲しい」
村上「そうだね!」
村上「何にしよっか・・・ 『水瀬ちゃん』とか?」
水瀬「いや、普通に 『水瀬』でいいかな・・・」
ムラカミ「じゃあ私も『ムラカミ』でいいよ!」
ムラカミ「あ、でも漢字じゃなくてカタカナね」
ムラカミ「そっちの方が可愛いから!」
水瀬「・・・ふ」
水瀬「ふふっ・・・ あははっ、なにそれ」
ムラカミ「え! なに? そんなに笑うとこ!?」
水瀬「はぁ・・・」
水瀬「まぁ、いいや」
水瀬「そういえば、 用事ってライブだったんだ」
水瀬「それなら素直に そう言えばよかったのに」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
遅くなりましたが、完結おめでとうございます!
毎話、水瀬の葛藤が切なく何度もうるっとさせられました。
「こうあるべき」という型にはまった考え方をしてしまいがちな世の中ですが、本当に同じ人なんて一人もいないんですよね。皆が生きやすい世の中になればいいなと、改めて考えさせられました。
水瀬が胸を張って『女』と言い切ったラストと、可愛らしい二人のスチルが最高でした!
素敵な物語をありがとうございました!
最初から最後まで感情の揺れ動きがとても丁寧に描かれていて、ぐいぐいと引き込まれていくお話でした!違いも受け止めて、自分らしくあろうとするラストの水瀬の姿…眩しかったです!
ムラカミもirohaも大好きです😊!!
素敵な物語をありがとうございました🙌✨
完結お疲れ様でした&おめでとうございます!!
読み切り版のラストの爽やかさが連載版でより深みが増している気がしました!
まだ家族の問題とかいろいろあるのでしょうが…自分の色を見つけた彼女たちなら、これからも自分らしく生きていけるはず😭
素敵な作品をありがとうございました!