アンティークと指輪と私

ぽむ

エピソード27(脚本)

アンティークと指輪と私

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〇ヨーロッパの街並み
カケル「よし、今日も絶好調!」
  オレはフリーのジャーナリスト。
  今日もスクープを探しに、
  街へ探索に来た。
  
  この不思議な街を調べるために・・・。
カケル「この街の不思議な噂は、常々聞いている。 実際にオレも、不思議な体験をしたからな」
カケル「ん?ポケットに何か・・・?」
  ゴソゴソ
カケル「これは・・・」
カケル「そうプロレスラーである マッチョさんの取材をしてたときに、 ロッカーで拾った指輪!」
カケル「正体不明のマッチョさんの 本当の正体を暴こうと思って 取材をしていたんだが・・・」
カケル「同じロッカーから出てきた青年が怪しいと思ったんだが、証拠が出なかった。 唯一の手がかりが、これだ!」
カケル「ん?」
  カララン
弟子「アナタに似合う いい指輪があって良かったです!」
パティシエさん「ここのお店は、アンティーク中心だけど、デザインが良くて、センスあるわよね。 一点ものだし!」
弟子「ここは元々は時計屋で、 いまのご主人になられてから 宝石の鑑定と宝飾や 美術品の修復も行なっているそうですよ。」
パティシエさん「あぁ、それでなのねぇ。 細かい装飾とステキなデザインよね!」
カケル「そうなのか、鑑定ねぇ・・・」
カケル「よし、そこの店で どんなものなのか とりあえず鑑定してもらおう」

〇屋敷の書斎
  カララン
カツヒロ「いらっしゃいませ」
カケル「えーと、こちらで宝石の鑑定を、 していると聞いたのですが・・・」
カツヒロ「ええ、何かございますか?」
カケル「これなんだけど、見てもらえますか?」
カツヒロ(こ、これは! どれにも当てはまらない!)
カツヒロ(私がずっと待っていて、 正体が分からず、 長年調べている宝石と同じだ!)
カケル「どうかしましたか?」
カツヒロ「これを、 どこで手に入れましたか!?」
カケル「え、えーと。 (ロッカーで拾った、なんて言ったら、 オレが盗んだみたいだよな・・・!?)」
カケル「母の持ち物なので、 よくわかりません!」
カツヒロ「そうですか。 良ければ少し調べたいので数日、 預からせて、もらえませんか?」
カケル「いいですよ、返してもらえれば。 オレも詳しく知りたいので! じゃあよろしく!」
  カラララン

〇山中の川
  そう私がこの宝石を手に入れたのは、
  父とともに鉱石採取に行ったときだった。
  知り合いに頼まれて、地質調査をしていた。
  ワタシはまだ子どもだったが、
  父の手伝いを早くからしていた。
  そのためか、石を見分けるのが
  得意になっていた。
カツヒロ「父さん、こんなの見つけたよ!」
父さん「ほう、オマエも見分けられるようになったのか。よく見つけたな。」
カツヒロ「エヘヘ〜」

〇屋敷の書斎
父さん「おい、カツヒロ!」
カツヒロ「なあに?父さん」
父さん「ほら、できたぞ。 オマエが見つけたんだからな」
父さん「磨いて加工したら こんなに綺麗になるもんだな。 オマエの目利きは、 たいしたもんだな!」
カツヒロ「わあ!すごいや! ありがとう父さん!」
父さん「今にオマエの大事な人にでも 譲ったらいいさ」
カツヒロ「大事な人?」
父さん「そうだよ」
母さん「あら何の話をしているの? ゴハンできたわよ。」
父さん「男同士の大事な話だよ! な、カツヒロ。」
カツヒロ「うん!」
母さん「まぁまぁ。ウフフフ」
カツヒロ(父さんの大事な人って 母さんなのかな?)

〇屋敷の書斎
カツヒロ(あの頃は楽しかった。 もう父も母もいない)
カツヒロ「感傷に浸ってる場合じゃない、 石の正体を探るんだ」
カツヒロ「ボクは望んだ通りに 父の跡を継ぐことができたし 今はそれで満足な暮らしもしている。 それでいいんだ」
カツヒロ「この石を贈る人は まだいないけどね、ハハハ・・・」
カツヒロ「はぁ」
  ・・・
カツヒロ「とりあえず頼まれた美術品の修復が終わったし、届けに行くか」

〇美術館
カツヒロ「ごめんください。 美術品の修復が終わりましたので、 お届けに参りました。」
ジュリア「いつもありがとうございます。 ご足労いただいて、申し訳ありません」
ジュリア「父が半世紀をかけたコレクションを守れるのは、娘の私しかいないものですから・・・」
ジュリア「ワタシはこれらの美術品に 愛着がありますの」
ジュリア「被災することなく混乱期も乗り越えた、大切な文化財を守るのは、私の使命でもあるのですわ」
カツヒロ「素晴らしい志しをお持ちですね、 僕にとっても、お仕事を頂けて ありがたいのです。 どちらに運んだらよろしいですか?」
ジュリア「こちらに・・・ あっ」
カツヒロ「危ない!」
  つまづき
  よろけた彼女はワタシの懐に
  飛び込んできた。
カツヒロ「だ、大丈夫ですか?」
ジュリア「いいえ、すみません。 美術品は・・・」
カツヒロ「大丈夫ですよ。 ちゃんとこちらに置いてありますから。 それより、そちらこそ大丈夫ですか?」
ジュリア「少しだけ足が・・・ ひねったみたい。」
カツヒロ「肩を貸しますよ。 座れるところまで移動しましょう」
ジュリア「ありがとうございます」

〇モールの休憩所
カツヒロ「あれ?」
ジュリア「どうなさいました?」
カツヒロ「いや、大事な宝石を落としてしまったようで・・・ おかしいな・・・ ちゃんとケースに入れたはずなのに・・・」
ジュリア「あら大変じゃないですか・・・」
カツヒロ「いえ、それは後で探します。 それより、その怪我ではお困りでしょう? すぐに病院に行かなくては!」
ジュリア「いえそんな・・・」
カツヒロ「ちょっと待っていてください。 車を回してきますから 待っていてくださいね!」
ジュリア「すみません、 ご迷惑をおかけしてしまって・・・」
カツヒロ「いいえ心配ですから、酷くなる前に お医者様に診てもらいましょう。 では行ってまいります!」
  タッタッタッタッタッ
ジュリア「なんて律儀で 優しい人なのでしょう・・・」
ジュリア(ワタシ、好きでずっと このお仕事をしてるけど、 正直、人手不足で仕事も多くて)
ジュリア(予想以上に、 大変なお仕事だった・・・)
ジュリア(理不尽な人もいるし 言うこと聞いてくれなかったり 文句を言われたり)
ジュリア(自分の時間も、 なかなか取れないし。 集客PRも割と苦手で、 辛いなって思うようになってた)
ジュリア(恋愛にも縁がないし。 優しくされちゃうと、涙が出ちゃう)
ジュリア「えーん」
ジュリア「あら?」
ジュリア「大事なもののようだし 預かっておこう・・・」

〇車内
カツヒロ「すぐ着きますからね」
ジュリア「すみません」
ジュリア「そういえば・・・」
ジュリア「こちらを館内で 落とされませんでしたか? 宝石を探していると聞いたので・・・」
カツヒロ「あぁ!ありがとうございます! 探していたんです! 大事な父からの贈り物で・・・」
ジュリア「もう落としちゃダメですよ。 大事なモノなんでしょう?」
カツヒロ「そうですね。 ボクが見つけて、父が磨いてくれた。 ボクの宝物なんです」
ジュリア「見つけた?」
カツヒロ「そうなんです。 地質調査で訪れた、 渓谷の河原で見つけたんですよ。 綺麗なところです」
ジュリア「あの話題の化石を発掘したところかしら?」
カツヒロ「そういえば、化石発掘でも有名なところでしたね。 所有者が知り合いで、父が存命の頃から 地質調査を頼まれていたんですよ」
カツヒロ「他人の土地を、 勝手に掘るわけには、いきませんからね、」
ジュリア「そうですか、 私も行ってみたいですわ」
カツヒロ「足が良くなったら、 よかったらご案内しましょうか?」
ジュリア「そうですね! ぜひお願いします」

〇奇妙な屋台
謎占い師「きょうは、いいお天気ですねぇ~」
店主「そうね。 あら、マッチョさんは?」
謎占い師「また、例の採掘場にいってらっしゃるようで・・・」
店主「そうなのォ、 管理するのも、大変よねぇ。」
  こんにちは・・・
店主「アラ、コンニチワ!」
ジュリア「こんにちは」
店主「足を悪くしてたって聞いたけど、お加減はいかがかしら?」
ジュリア「おかげさまで治りましたわ。 親切な方がいて、すぐに処置していただいたものですから」
ジュリア「それより・・・相談というか 悩みを聞いてもらおうと思って、占ってもらえないかしら」
謎占い師「どうなさいましたか? よかったら 占いの部屋へ行きましょうか?」
ジュリア「ええ、お願いします・・・」
謎占い師「そうですか・・・ では占いの部屋へ行きましょう」
店主「行ってらっしゃい〜」

〇占いの館
謎占い師「どうぞ、お話を聞きましょう」
ジュリア「ワタシ今まで、 父のコレクションを守らなきゃって、 美術館のお仕事を ひとりで頑張ってきたけれど」
ジュリア「今回の怪我で、 無理してたんだなって。 心が折れてしまって。 守り抜いた美術館を閉めようかと思っていて・・・」
ジュリア「美術品は、他の大きな美術館か 個人収集家に寄贈しようかと・・・」
謎占い師「でも、アナタはその美術品を 愛しているのでしょう?」
ジュリア「ええ・・・ でも、もう仕方ないのかなって・・・ 疲れてしまったの。 フツウの幸せを考えてもいいでしょう?」
謎占い師「わかりました。占いましょう!」
謎占い師「では、リラックスして・・・」
謎占い師「意識を集中するのです・・・」
謎占い師「車・・・ 風と水の流れ・・・ 輝く宝石・・・」
謎占い師「アナタは手放してはいけない。 大事なものを。 と言う、水晶からの お告げが出ました!」
ジュリア「それは・・・やめない方がいいということでしょうか?」
謎占い師「ワタシに言えるのは そのお告げだけですので・・・ 解釈はご自身の心の中、 ということでしょうか・・・」
ジュリア「・・・そうですか。 参考にさせていただきます、 ありがとうございます。 お代はこちらに置いておきます」
謎占い師「ごひいきに・・・」

〇見晴らしのいい公園
カツヒロ「いい天気ですね!」
ジュリア「そうですね! お誘いありがとうございます! 楽しみにしていましたの!」
カツヒロ「では、行きましょうか!」

〇車内
ジュリア「今日、 ワタシお弁当作って来ましたの。 後でご一緒に食べましょう!」
カツヒロ「えっそんな・・・嬉しいなぁ」
ジュリア「ウフフ」
ジュリア(そうよ、普通の人のように フツウに恋愛して、 フツウに結婚して、 普通に過ごすの・・・)
カツヒロ「どうか、しましたか?」
ジュリア「いいえ、なんでもないわ。 楽しみですわ」

〇森の中
謎マッチョ「ん?」
ジュリア「そうなんですね」
カツヒロ「よく子どもの時から、こちらに来ていたんですよ」
ジュリア「すごく空気もいいし 木の香りが素敵です。 風も心地よいし!」
謎マッチョ「ふむ。 彼が女性を連れてくるなんて 初めてじゃないか?」
謎マッチョ「よし、多めに撒いておこうか」
  バシャーン
謎マッチョ「コレでよし! じゃあ採掘場に戻るか」

〇山中の川
ジュリア「いい風・・・」
カツヒロ「こちらです」
ジュリア「とても水が綺麗だわ」
カツヒロ「まだ、ありますね。 ボクには見分けられるみたいなのです、」
ジュリア「これが原石?」
カツヒロ「そうなんです、不思議でしょう?」
カツヒロ「ダイヤモンドでも、 ある程度の石の性質が見えるものですが、こちらは本当に磨かないと、わからないのです」
ジュリア「本当に不思議・・・」
カツヒロ「それに、父の職人の腕がなければ あれだけの輝きの宝石にならなかったと思います」
カツヒロ「ボクはそれを目指して 技術を磨いてきました」
カツヒロ「その父がボクに言ったんですよ。 その石は一番大事な人に譲りなさいって」
カツヒロ「わかったんです。 何が僕にとっていちばん大事なのか・・・」
カツヒロ「ボクはアナタにコレを持っていて 欲しいのです!」
ジュリア「えっ それって・・・」
カツヒロ「ボクは アナタにとても感銘を受けました。 おひとりでお父様のコレクションを守って頑張っておられるのを見て」
カツヒロ「ぼ、ボクにお手伝いさせては くれませんか・・・ ボクは気も効かないし 人より間が抜けているかもしれない」
カツヒロ「できることといったら 製作作業や修復作業くらい・・・」
カツヒロ「そんなボクでもよかったら アナタの隣にいさせてください・・・」
ジュリア「そんななんて、言わないでください。 もし・・・ ワタシたちも原石なのだとしたら」
ジュリア「二人で磨いていけたら、 いいのではないのでしょうか?」
ジュリア「アナタは・・・素敵です! 技術もあるし、私のお話にも 理解を示してくれています。 わたしこそ・・・」
ジュリア(やめてしまおうなんて 思っていたのに・・・)
ジュリア「お願いします。」
ジュリア(大事なものは、手放してはいけない。 本当にそうね・・・)
カツヒロ(ほんとに?夢じゃない?)
カツヒロ(父さん・・・ 大事なもの見つけたよ・・・)

〇奇妙な屋台
謎マッチョ「というわけで、 カツヒロさんは美術館内でお店を移設することになったそうなのです」
謎占い師「評判がとてもいいようですね。 「幸運のリング」を求めて 殺到しているようですよ」
店主「よかったわね〜」

〇屋敷の書斎
カケル「こんちわー」
カツヒロ「あぁアナタでしたか。 こちらは、お返しします」
カケル「それでー、 なにか、分かりました?」
カツヒロ「全くわかりません! ですが・・・」
カケル「ですが?」
カツヒロ「大事なものが その中には詰まっていますよ! 大切になさってください!」
カケル「は、はぁ・・・」

〇奇妙な屋台
店主「サテ店じまい店じまい。」

コメント

  • ジュリアさんとカツヒロさんの馴れ初めもやはりマッチョさんの宝石がきっかけなんですね。本当にマッチョさんはフットワークが軽くて神出鬼没だなあ。

  • カケルさんが拾った指輪の設定、まだ生きてるー!と楽しくなってしまいました。不器用な2人の誠実な恋模様、なんてステキなんでしょう!

  • 2人の家業に対するリスペクトとその仕事への情熱が、2人を結びつける要因だったように感じました。新たな幸せを手にした2人は最強ですね。

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