沼で落ちる男(脚本)
〇森の中の沼
沼の精?「貴方が落としたのは、 死体ですか?生体ですか?」
語呂 均(ごろ ひとし)(なんだこれは・・・どういう状況だ!?)
語呂 均(ごろ ひとし)(なぜ早芽(さめ)がいる!? 確かに先月、殺して沈めたのに!!)
なぜ二人に増えている!?
語呂 均(ごろ ひとし)(それに──)
語呂 均(ごろ ひとし)「お前はなんだ!? 何が目的だ!」
沼の精?「私はこの沼の精 沼に落ちしものの案内人」
沼の精?「で?貴方が落としたのは、生きてる彼女?死んだ彼女?」
沼の精?「正直者には両方あげちゃうよ!」
語呂 均(ごろ ひとし)「待て!今『生きてる』と言ったか?その早芽は、まだ生きているのか?」
沼の精?「ええ、今は眠っているだけ。 落としたのはこちら?」
沼の精?「言っとくけど、嘘ついたら両方没収だからね!」
語呂 均(ごろ ひとし)(どう言うことだ? 捨てた時点ではまだ生きていたのか?)
語呂 均(ごろ ひとし)(いや、確かに早芽は死んでいた。そう言うことを問われてるんじゃない)
語呂 均(ごろ ひとし)(まず、この異常な状況、あいつは妖怪か何かに違いない)
語呂 均(ごろ ひとし)(嘘をついて両方とも持ち去らせれば、証拠隠滅できるんじゃないか?)
語呂 均(ごろ ひとし)(いや、そう都合良く消してもらえるとも限らん。冷静になれ)
語呂 均(ごろ ひとし)(そうだ、あれは事故だったんだから、正直に話すんだ!早芽さえ生きて戻れば──!)
語呂 均(ごろ ひとし)(・・・)
語呂 均(ごろ ひとし)「なぁ、生きてる方の早芽だが、どの時点の早芽なんだ?つまり──」
美津口 早芽(みつぐち さめ)「死んだ時のことなら覚えてるよ?」
語呂 均(ごろ ひとし)「え・・・?」
語呂 均(ごろ ひとし)「マジかよ・・・マジで生きてんのか?お前」
美津口 早芽(みつぐち さめ)「生きてるよぉ!」
美津口 早芽(みつぐち さめ)「でもね、ゴロ君が罪を認めてくれないと、消えちゃうの」
美津口 早芽(みつぐち さめ)「正直に答えてくれるよね? 私を殺して沼に捨てたって」
語呂 均(ごろ ひとし)「もちろんさ! もう一度二人でやり直そう!」
美津口 早芽(みつぐち さめ)「は?私、あんたに殺されて沈められてンだけど?」
語呂 均(ごろ ひとし)「それはこれから無かったことになるだろ?」
語呂 均(ごろ ひとし)「お前もこれに懲りたら、もう別れるなんて言うなよ?」
美津口 早芽(みつぐち さめ)「・・・」
沼の精?「そろそろお答えいただけますか~?」
沼の精?「貴方が落としたのは死体?生体?どっち?」
語呂 均(ごろ ひとし)「はい!死体です!僕が捨てたのは美津口 早芽の死体です!」
沼の精?「すばらしい!正直兄さんにはご褒美です!」
前へお進みになって、二人の手をお取りください!
語呂 均(ごろ ひとし)「さぁ、早芽、手を・・・」
語呂 均(ごろ ひとし)「え?」
語呂 均(ごろ ひとし)「何だよこれ!? 早芽は?」
警察官B「それは我々が君に聴きたいことだ。署までご同行願おうか」
「いやー、毎度大したもんだ!」
警察官A「犯人を寸劇に巻き込んで自白させるとは、とんだ演技派探偵じゃないか」
沼の精?「大袈裟ですよ。私はただ、観客の求める物語を演じるだけの、しがない演劇部員」
沼の精?「真実を浮かび上がらせるのは、物語そのものの力ですわ」
警察官A「よくわからんが、とにかく君も来てもらえるかな?もうここに用はないだろう?」
沼の精?「ええ・・・」
沼の精?「──クルッ」
沼の精?「ご満足いただけましたか?お客様」
ええー!これは着眼点が独特でかなり面白いし、こんなお話見たことないですね!すごいです!
タップノベル沼からヒントを得るなんて
色々な言葉に注目するのは大事ですね
ミステリー感も感じられて面白かったです
イソップ物語のごとき冒頭、しかし選択内容が……、から始まるドキドキのお話。すごく引き込まれました。寓話の世界の話かと思っていたところでの現実的帰結に驚きです!
超常的な現象に現実的な打算が組み込まれているのがよかったです!
そして、最後の演出…マジで背景が動いたかと錯覚するハマりっぷりでビビりました。