運命は君の手に(脚本)
〇通学路
春の陽気のせいで、二度寝してしまった。朝飯抜きはキツイけど仕方ない──ん? 何か今、何とか注意報発令とか聞こえたな──
田中(急げ、まだギリギリ間に合うぞ! ん? 何だこれ?)
田中「ドアが二つ⁈ 何でこんな所に──まるでどこでもド・・・じゃない、クイズ番組の二択ドアだ」
角田「ちょっと! そこのあなた。開けないの?」
田中「え? あの、これ何なんですか?」
角田「あら。ニュース速報で出てたでしょ? 運試し注意報の発令──午後から解除されるみたいよ。行かないならお先に」
──ガチャ
女性は目の前にある右側のドアを開けて、中へ飛び込んだ
角田「やったあ!! ラッキー!️」
田中「当たりのドアが右って事か?!」
田中「よし。俺も右だ。あれ? 開かない! まさか、同じドアは選べないのか? 仕方ない、左だ!」
思い切りドアの向こうへ飛び込んだ
田中「うわあああ」
田中「ウレタン製の竹か びっくりした・・・」
〇オフィスビル前の道
○△不動産の女性「駅前に新しく出来ました○△不動産です〜 ポケットティッシュをどうぞ〜」
田中(会社は目の前なのに、これ受け取るのが正解か⁈)
ここに来るまで、募金をするかしないかで危うく命を落とす所だった
街中、歓喜と失望の声にまみれていた
田中(いつも通りならもうとっくに仕事をしている時間なのに・・・皆んな無事に着いたのだろうか)
○△不動産の女性「ポケットティッシュなんて、幾つあったって困りませんよお」
田中「うっ、まあ確かにそうかも」
○△不動産の女性「花粉症の方にも人気なんですよ!」
田中「あっ、ミントの匂いがする。俺は花粉症じゃないから、会社の誰かにあげようかな」
〇エレベーターの中
浅田「田中さん! 大遅刻ですよ!」
田中「そういう浅田さんもでしょ?」
浅田「そうです!私の運の無さに怒ってるんです! 犬から靴を取り返したけど歯形でボロボロだし、これ労災おりますかね⁈」
田中「靴投げるなよ──労災か、どうだろうな」
浅田「ねえ、エレベーター乗って大丈夫だと思います?」
田中「怖い事言うなよ」
浅田「あ、これ。返そうと思ってたんです。有難うございました」
田中「ええ! このタイミングで返すか⁈」
浅田「流石にゾンビまでは出てこないでしょう」
ゾンビ社員「あっ、私も乗ります! 上ですか? 下ですか?」
「(うわあ、ゾンビ! いや、ゾンビっぽい人間か?) ──上か下か、どっちが正解なんだ⁈!」
ゾンビ社員「はーっくしょい! 花粉症のせいで顔面ドロドロ、お見苦しい姿でお恥ずかしい」
(今年の花粉はやべーって聞いてたけど、ゾンビ化するのかー?!)
田中「ど、どうぞこれ 貰いものですけど」
ゾンビ社員「わぁ!スウスウするう 有難うございます! ──で? どっちに行きます?」
田中「下よりの上かな?」
浅田「上なのか下なのかなんて、どうでも良いじゃ無いですか」
ゾンビ社員「──乗るのか乗らないのか・・・返答によっては──」
「わ、私達、早退しまーす!!」
俺達は猛スピードで会社を飛び出した。
背後でゾンビが盛大にくしゃみをして、ごとりと頭が転がって来た。
おわり
「人生は選択の連続である」とハムレット王は言いましたが、こんな選択はイヤすぎですねーww
このトンデモ2択の連続で刺激いっぱいのショートショート、楽しくて仕方ないです!
世にも奇妙な物語とか星新一のショートショートみたいな感じで、クスッと笑える不条理な世界を楽しめました。こうして見ると、日常生活はいろんな分岐点の集積なんですね。私は毎日、間違った方のドアを開けてるような気がします。トホホ。