第1話 「胎動」(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
梅見葉月「お父さん! なにのんびりしてるの! 遅刻しちゃうよ!」
梅見清和「まだもうちょっと大丈夫だって。 ニュースもゆっくり見せてくれないのか?」
梅見葉月「だったらもっと早く 起きればよかったでしょ」
梅見葉月「あと五分~なんて むにゃむにゃ言ってたのは誰だっけ?」
梅見清和「はいはい、お父さんだよ」
梅見清和「・・・まったく、誰に似て こんな口やかましくなったんだか」
梅見葉月「なんか言った?」
梅見清和「葉月は今日もお母さんに似て 美人だなって言っただけ」
梅見葉月「そういうのは お母さんの仏壇に報告したら?」
梅見清和「・・・そうだな」
リビングの側にある小さな仏壇。
俺の妻、梅見柚香(うめみゆか)は、
娘の葉月が幼い頃に事故で亡くなった。
梅見清和「ちっちゃかった葉月も、 もう来年は大学受験だ。早いよな」
梅見葉月「・・・うわ、またこのニュース」
梅見清和「ん?」
葉月のつぶやきにつられ 、さっきまで
見ていたテレビに視線を向ける。
テレビ「A県B市にて、また女性の不審死が──」
梅見清和「ああ、これか」
最近、ちらほらと見かけるようになった
ニュースだ。
女性の不審死が相次いでいるという。
テレビ「死亡した女性はいずれも 腹部を裂かれた状態で発見され・・・」
梅見清和「って言っても、 三十代近い女性ばかりだしな」
梅見清和「これが女子高校生の話だったら、 もう少し身近に思えたかもしれないが」
梅見葉月「変な病気が流行ってるらしいね。 やだなあ」
梅見清和「なんにせよ、手洗いうがいを しっかりしろってことだ」
梅見葉月「お父さんも気を付けてよ?」
梅見清和「はいはい、わかってるよ」
梅見葉月「もう・・・。それじゃ、先行くね」
梅見清和「あ、おい! お母さんのお守りはちゃんと持ったか?」
梅見葉月「持ったー! お父さんも早く行きなね!」
玄関のドアが閉まると、
テレビの音しか聞こえなくなる。
梅見清和「葉月がいなくなると一気に静かになるな」
テレビ「専門家によると、 未知のウイルスとの見方で──」
梅見清和「・・・っと、 俺ものんびりしてる場合じゃない」
梅見清和「行ってきます、柚香」
梅見清和「今日も一日、無事に過ごせますように」
仏壇に置いた妻の写真に手を合わせ、
俺も会社へと向かった。
〇オフィスビル前の道
〇オフィスビル前の道
梅見清和「はあ、やっと帰れる。 定時直前に仕事振るなよな・・・」
ようやく仕事から解放され、
げんなりしながらスマホを確認する。
五分ほど前に帰るコールを送ったが、
いつもすぐ既読を付ける葉月から
まだ連絡がなかった。
梅見清和「どうせまた友達と長電話だろうな。 この間もそうだった」
〇通学路
梅見清和「明日は休みだし、 今夜はビールでも買って・・・ん?」
少女「うう・・・」
梅見清和「あれ、あの制服・・・ 葉月と同じ高校のだな」
梅見清和「どうした? 大丈夫か?」
少女「お腹・・・お腹、痛い・・・」
梅見清和「・・・!」
梅見清和「なんだ、この腹。妊娠・・・? こんな年で?」
梅見清和「お腹が痛いんだな。 今すぐ救急車を呼ぶから──」
言いかけた俺は、
ふと視線を感じて顔を上げた。
K「・・・・・・」
梅見清和「!」
梅見清和「いつからここに? まったく気づかなかった」
梅見清和「この子の友達かな? おじさんは救急車を呼ぶから、 お友達に声をかけてあげてくれないか?」
K「もう助からないよ」
梅見清和「は・・・?」
K「救急車。呼んでも無意味」
梅見清和「無意味って・・・友達だろ?」
K「違うよ。友達じゃない」
梅見清和「居合わせただけなのか? だからってこんな言い方しなくても」
少女「ううっ」
梅見清和「ああ、ごめんな。大丈夫だから。 ゆっくり息を吐いて・・・」
梅見清和「・・・君、それなら俺の代わりに 救急車を呼んで──」
少女「あああっ!」
梅見清和「!」
K「――始まった」
梅見清和「なっ・・・」
倒れていた少女の腹が、押さえていた
彼女の腕の下でぼこりと不自然に蠢く。
まるで、別の生き物のように。
梅見清和「おい! どうしたんだ!」
少女「いた・・・いだい・・・ いだいいだいいだいいいいい!」
梅見清和「――うわあっ!?」
なにが激しく飛び散ったのか、
なにが勢いよく――裂けたのか。
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紹介文がとっても 斬新でした !
ホラーとして映画にして欲しいくらいです! 続きが気になります😱
こういうホラー大好きです!続きが楽しみ!
女の子の腹が裂ける描写が怖かったです。想像するだけでゾッとする、なのに続きが気になる😱