アグレッシブな女

サブ

エピソード1(脚本)

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〇一軒家
  私――天野カガミは一人の少女が玄関前に倒れているのを見つけた。
天野カガミ「アキ・・・何してんの?」
  私は倒れている少女――鶴森アキに声を掛ける。
  ぐうー
  間抜けな音が聞こえた。
鶴森アキ「カガミお姉ちゃん・・・お腹すいたよぉ・・・」
  アキは息も絶え絶えに言う。
鶴森アキ「今から塾に行かないといけないのに・・・死んじゃうよぉ・・・」
天野カガミ「んな、大げさな。途中で何か買えばいいじゃん?」
鶴森アキ「実は今日財布落としちゃってさ・・・」
天野カガミ「ぷ、そうなんだ」
  私は思わず笑ってしまった。
  アキは本当におっちょこちょいだ。
  近所に住んでいる私は何度も困っているアキを助けたことがある。
天野カガミ「ん、じゃ、これ食べる?」
  私は鞄からサンドイッチを出してアキに差し出した。
  ちょうどさっき私はコンピニに寄っていたのだ。
鶴森アキ「か、神様!」
  食料を見てアキは目を輝かせる。
  そして、私の持っているサンドイッチに飛びつこうとした。
  サッ
  しかし、私は手を高く上げてアキを避けた。
  アキは身長が低く、私が腕を伸ばせば絶対に彼女は届かない。
鶴森アキ「ちょ、な、なんで! なんで、意地悪するの!?」
  小さなアキは必死にぴょんぴょんと飛び跳ねる。
天野カガミ「カ・ガ・ミ・先・輩でしょ?」
鶴森アキ「分かったよ! カガミ先輩!」
  アキは頬を膨らませて怒ったように言い放つ。
天野カガミ「・・・ま、許してあげる」
  私はアキにサンドイッチを渡した。
鶴森アキ「わーい!」
  アキはよほど空腹だったのか夢中になってかぶりつく。
  その姿はまるでリスみたいだ。
  とても幸せそうな姿を見て、私はふと──
  アキの事が無性にひっぱたきたくなった。
  もし突然にアキの柔らかな頬を叩いたら、一体彼女はどんな顔をするだろう?
  驚くだろうか? それとも泣いちゃうかもしれない。
鶴森アキ「ん? どうかした?」
  視線に気づいたのか、アキは首を傾げた。
天野カガミ「ううん、何も? それより美味しかった?」
鶴森アキ「うん! 美味しかった! ありがとうカガミお姉ちゃん!」
鶴森アキ「よーし元気出た! それじゃあ行ってきます!」
  食べ終わったアキは元気いっぱい走って行った。
天野カガミ「だから、カガミ先輩だっての・・・」
  走って行くアキの後姿を見ながら、私は必死に右腕を掴んでいた。
  アキが通りの向こうに消えるのを見て、私は脱力した。
  今日も我慢出来た。
  私の中には可愛くて無邪気なアキを滅茶苦茶にしたいという黒い欲望があった。
  それは日に日に強くなっている──
  いや、もうこれ以上は考えるのを止めよう。
  私はアキの笑顔を思い出す。
  アキにとって私は頼れるお姉ちゃんなのだ。
  だから、私の願いは一生叶わない。
  けど・・・その日を待ちわびている私もいる。

コメント

  • 空腹でどうしようもなくなっているアキちゃんに食べ物をあげて、カガミ先輩は優しい人だなあと思っていたけど、それだけじゃなくて黒い感情も併せ持っていたんですね。
    心の中で何を考えているのかわかるようで、実際はその人にしかわからないものなんだなあと思いました。

  • 自身の中に蠢く「天真爛漫で純真無垢なものを痛めつけたい」という嗜虐心というか加虐心の暴発を必死に食い止めるカガミの描写が秀逸でした。いつか我慢できなくなって一線を越える瞬間が怖いような見てみたいような。

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