第8話 新しい仲間(脚本)
〇けもの道
と、その頃。
杏奈「んもう、みんなどこにいるのー!」
杏奈「あれ?ここってさっきも通ったような・・・」
杏奈「やっぱりー!!」
そこには、杏奈が10分ほど前に
目印に置いておいた小石があった。
杏奈「はぁ・・・ このままだと沙利と合流するどころか 家にも帰れないよー・・・」
と、杏奈はあることに気づく。
杏奈「これって、あたしだけにかかってるから 他のものが歩けば問題ない、よね?」
杏奈「来て・・・!」
ツキノワグマ「ガルゥっ♡」
そう、杏奈が考えたのは召還した
クマの背にのり、沙利の元に向かう、
ということだ。
杏奈「ツキちゃん、背中乗ってもいい?」
ツキノワグマ「ガル」
クマは、いいよ、と言っているように鳴き、
杏奈を乗せる。
杏奈「沙利の魔力があるところまで、お願い!」
杏奈がそう言うと、クマは駆け出した。
〇アマゾン川のほとり
沙利「ついていきたい、ですって?」
沙利「・・・それは、一緒に旅をしたい、 ということかしら?」
〈機械人間〉の少女「まあ、そうなる!」
〈機械人間〉の少女「アタシ、暇になっちゃったし 行くところもロクにないから・・・」
沙利「私はいいと思うけど・・・ ヴァンパイアさんは?」
ヴァンパイア「ふむ・・・」
ヴァンパイア「魔物に固有魔術を付与できるのだ 何かしら役に立つとは思うが、 杏奈に聞いてみないとこればかりは 分からないな・・・」
沙利「そうね・・・」
沙利「あなた、固有魔術を付与できるのなら、 解除することもできるのかしら?」
沙利が、〈機械人間〉の少女に尋ねる。
〈機械人間〉の少女「・・・ええっと その仕方は知らなくて・・・」
沙利「・・・どうしましょうか」
沙利「解除をできない付与士なんて・・・」
彼女の言葉を聞いて、嘆息する沙利。
ヴァンパイア「・・・杏奈ならどうにかできるかもしれぬぞ」
沙利「え? でも、杏奈は魔術関連については あまり知らないはずだけど・・・」
〈機械人間〉の少女「ね、さっきから言ってる『アンナ』って 誰のこと?」
二人の会話に少女が割って入ってくる。
沙利「えっと、私たちの仲間よ」
ヴァンパイア「そなたが付与した魔物のおかげで 迷子になった、な」
〈機械人間〉の少女「う、それはごめんなさい・・・」
ヴァンパイアにそう言われ、
少女がしゅん、とうつむく。
沙利「ヴァンパイアさん、もうそれくらいに してあげたら? 多分この子も悪気はなかったのだし」
ヴァンパイア「・・・まったく 沙利はそういうところがいいと思うぞ」
ヴァンパイア「信用しすぎない方がいいとは思うがな」
沙利「ええ、ありがとう」
機嫌を取り戻してくれたヴァンパイアに
沙利がにっこりと微笑む。
ヴァンパイア「それで、杏奈のことなのだが 彼女の使う葉の力は魔術と よく似ているものなのだ」
沙利「・・・そうなの?」
ヴァンパイア「ああ・・・だが、魔術ではない つまり__」
ヴァンパイア「異能の力、なのだ」
沙利「・・それなら、この子と一緒、というわけね」
ヴァンパイア「そういうことだ だから、まずは__」
沙利「・・・杏奈を見つけにいかないとね」
〈機械人間〉の少女「アタシも同行していい?」
少女がそう尋ねた。
と__
杏奈「うわぁぁぁ!!!」
杏奈「つ、ツキちゃん、ストップストップ!!」
クマに乗った杏奈が、沙利の背後の茂みから
出てきた。
沙利「あ、杏奈!? どうやって〈迷い〉の呪詛を解いたの?」
杏奈「あ、沙利! えっと、ツキちゃんに乗ってきたの!」
沙利「ツキちゃんに?」
杏奈「うん!」
杏奈「そしたら、ありえないスピードで ツキちゃんが走り始めちゃって・・・」
沙利「・・・そうだったのね でも、無事でよかったわ」
杏奈「へへ、そう言ってくれてありがとう!」
〈機械人間〉の少女「えっと、その人がアンナさん?」
杏奈「うん、枝里源杏奈だよ! あなたは?ここは森の中だし、大丈夫なの?」
〈機械人間〉の少女「うん アタシは人間じゃなくて〈機械人間〉だし のんびり海水浴をしてたら この人たちに出会ったのー」
杏奈「〈機械人間〉!? そんなものがまだあったんだ・・・ どういう構造してるの!? 中見せてー!」
沙利「ちょっと、杏奈・・・ そんなのは後でいいでしょ?」
沙利「いろいろあなたに 説明したいことがあるのよ・・・」
杏奈「確かに・・・ 〈機械人間〉なんて凄い人がいるし、 なぜかヴァンパイアさんもいるし・・・」
沙利「ええ・・・」
沙利「少し長くなりそうだから、 あなたの家ででもいいかしら?」
杏奈「うん、大丈夫! 存分にあたしの家使ってー!」
そんな杏奈の承諾があり、
一向は彼女の家に向かった。
〇屋敷の書斎
杏奈の家、地下。
杏奈「えぇぇぇ!?」
杏奈「じゃああたし、その子に踊らされていた ってこと?」
沙利「・・・まあ、悪いように言えばそうなるわね」
時間はもう11時を回っている。
そんな夜中、杏奈は驚愕していた。
それもそうだ。
自分が迷っていたのが魔物のせいではなく、
意図のある者の仕業だと分かったのだから。
杏奈「でも、付与士なんて 特殊能力憧れるなあ・・・」
沙利「もう、何言ってるのよ あなたも十分特殊だと思うけど?」
杏奈「う、それは否定できない・・・」
キラキラと目を輝かせる杏奈に、
沙利が事実を言う。
〈葉使い〉は〈機械人間〉よりも、
世界的に数が少ないのだ。
沙利「まあ、〈機械人間〉さんの 詳細は後にして__」
沙利「ヴァンパイアさんはどうして、 杏奈を探していたの?」
沙利「一週間前にした質問、 今日は答えてもらうわよ?」
後ろの方に隠れていたヴァンパイアに
向かって、そう尋ねる沙利。
ヴァンパイア「ああ・・・ ずっと言えていなくてすまなかった」
ヴァンパイア「我のような強い種族がこんなことを 言うのも恥ずかしいのだが、 我は杏奈の力を借りにきたのだ・・・」
杏奈「・・・え? あたしの力?」
ヴァンパイアが告白したことに、驚く二人。
ヴァンパイア「ああ」
ヴァンパイア「我は今、追われている身なのだ・・・ 我でもどうにもならないような奴だ」
沙利「ヴァンパイアさんでも そんなことがあるのね・・・」
ヴァンパイア「うむ、初対面でそれを言うのは少し プライドが邪魔してできなかったのだ」
杏奈「そうだったんだね」
杏奈「でも、打ち明けてくれてよかった!」
杏奈「そんなに強い人なら、 あたしもわくわくしてきたよ!」
杏奈「だって、あたしに戦って欲しくて ここまで来たんでしょ?」
にっこにこの笑顔を
ヴァンパイアに向ける杏奈。
ヴァンパイア「まあ、そうだな・・・」
だが__
沙利「杏奈、あなたが今どういう 立場にあるか分かってる?」
沙利が怒りぎみで、そう言い放つ。
杏奈「え?」
沙利「あと3週間で学院に編入 しなければならないのよ? そんなのしてる暇なんて・・・」
そうだ。
杏奈と沙利には、学院という大きな存在が
待ち受けているのだ。
杏奈「確かに、今はない、かもね」
そんな沙利の言葉を聞いても、
杏奈は動揺などしていなかった。
杏奈「でも、ゴールデンウィーク 開けに行くんだから、 それから何ヵ月かしたら長期休み!」
杏奈「その時なら大丈夫なんじゃない?」
先を見据えたように、胸を張って言う杏奈。
沙利「はぁ・・・ 先の自分のことしか考えていないの、 やっぱり杏奈らしいわね」
ヴァンパイア「・・・だな」
沙利とヴァンパイアは
共通の思いを共有した。
ヴァンパイア「追ってくるかも知れぬが、 半年くらいなら大丈夫だと思う」
ヴァンパイア「杏奈、沙利 我のことは気にせず 今は学院に集中して欲しいのだ」
きっぱり、ヴァンパイアがそう告げる。
沙利「ありがとう、ヴァンパイアさん」
杏奈「ヴァンパイアさんは優しいね・・・」
杏奈と沙利がそんな思いに浸っていると、
ヴァンパイア「あと・・・」
ヴァンパイアが言いにくそうに
声をかけてくる。
ヴァンパイア「__ヴァンパイア、 というのはよそよそしい・・・」
ヴァンパイア「ちゃんと名前で__」
リティア「__リティアと呼んではくれないか・・・」
ヴァンパイア__リティアは照れくさそうに
うつむいて、そう言う。
沙利「ええ! いつかは名前を教えてくれると思ってたから よかったわ」
杏奈「うん! リティア・・・ いい名前だね!」
リティア「二人とも、ありがとう・・・」
リティア「より仲が深まった気がするな」
沙利「ふふ、そうね」
沙利「それと、学院に集中して、 って言っていたけれど__」
沙利「〈機械人間〉さんのことがあるから そういうわけにもいかないのよね・・・」
杏奈「うん・・・ 一緒に冒険するのは かくまってることになるもんね・・・」
リティア「それなら、我が全てを受け持ってもよいか?」
悩む杏奈を見て、リティアがそう提案する。
沙利「・・・え?」
杏奈「そんなの、リティアが 悪いわけでもないし・・・」
リティア「今の我は守りたいものや、失うものが そなたたちとは違ってないのだ」
リティア「それに、我はヴァンパイア。 これは最終手段だが、 最悪武力でどうにかできる」
沙利「そう、ね 最終手段は本当に使わないで欲しいけど」
杏奈「うん・・・ でも、リティアがしてくれるなら、」
杏奈「あたしはほんっとに嬉しい!!」
杏奈(信頼できる仲間だし!)
リティア「ああ」
リティア(我はこの笑顔のために 二人を庇うのだろうな・・・)
人知れず、そう思うリティア。
〈機械人間〉の少女「じゃあ、アタシは、 これからみんなの仲間になれる、ってこと?」
話が一段落して、〈機械人間〉の
少女が呟く。
リティア「まあ、そういうことだな」
杏奈「あと、ずっと気になってたんだけど、 この子の名前って何て言うの?」
杏奈は、彼女の側により、そう尋ねる。
リティア「・・・む、それは我も知らないな ずっと話していたのだが」
リティア「それで、そなたは何と言うのだ?」
杏奈の疑問を、リティアが尋ねる。
が__
〈機械人間〉の少女「ええっと・・・ それはアタシも知らなくて__」
〈機械人間〉の少女「__ずっと名前は番号だったから・・・」
と、自信なさげに言う少女。
杏奈「・・・っ、そんなの許せない! 〈機械人間〉だったとしても、 感情はあるんだから、 名前くらいつけてもいいのに・・・!」
リティア「そう、だな だが、作った側にも 何か理由があったのだろう」
リティア「どうだ、杏奈、沙利」
リティア「我たちで、この少女に名前を つけてはあげないか?」
杏奈「えぇ!?あたしたちが!? 難しすぎるよ・・・」
沙利「そうね・・・」
沙利「でも、いい名前をつけてあげられたら、 この子にとっての最高の 思い出になるんじゃない?」
杏奈「確かに! リティア、あたしたち、 頑張ってこの子に似合う名前を探すよ!」
沙利「ええ! だから、少し手伝ってくれない?」
リティア「ああ、もちろんだ 我にできることなら、何でも協力しよう」
〈機械人間〉の少女「みんな・・・!」
〈機械人間〉の少女「ほんっとにありがとう! アタシも、みんなが困ってる時は 絶対力になるね!」
リティア「ああ、頼りにしているぞ」
杏奈「あたしも、この子ともっと 仲良くなりたいな!」
〈機械人間〉の少女は、杏奈たちが
学院に通う間、リティアが面倒を見て、
その名前はみんなで考えることが決まった。
新しい仲間と共に、
夜は深まって行った__。
〇古いアパートの一室
杏奈「ふわぁ・・・ 昨日寝たのは午前1時くらいだから、 まだ眠たい・・・」
翌日、杏奈の部屋だ。
〈機械人間〉の少女「杏奈ちゃんと寝れてよかった~ とっても心地よかったよ!」
杏奈が起きた隣で、ベッドの上に立ち、
伸びをしている〈機械人間〉の少女がいた。
昨日の夜もし彼女になにかあったら
いけない、ということで
あまっていた部屋ではなく
杏奈の部屋で一緒に寝ていたのだった。
杏奈「〈機械人間〉でも、 ちゃんと寝れるんだね・・・」
〈機械人間〉の少女「うん! ほら、沙利ちゃんが居間にいるんだから、 早く行こ?」
杏奈「うん・・・」
杏奈「というか、なんであなた、 沙利が居間にいるなんてこと分かったの!?」
〈機械人間〉の少女「・・・え? ただ魔力の流れで、 人がどこにいるのかは分かるよ?」
杏奈(凄い・・・ これも〈機械人間〉の力なんだろうな・・・)
魔術で同じことが簡単に
できてしまうことも知らずに、
杏奈は彼女を少し尊敬していた。
〇古いアパートの居間
杏奈「おはよー!」
〈機械人間〉の少女「お、おはよう・・・」
二人が居間に行くと、
花に水をやっているリティアがいた。
リティア「おはよう、二人とも」
リティア「夜はよく眠れたか?」
〈機械人間〉の少女「うん、ばっちり、だよ」
杏奈「あたしも!」
杏奈「ちょっと眠たいけど・・・」
リティア「うむ、杏奈はそれくらいが いいような気もするがな」
呆れ半分で、苦笑いするリティア。
〈機械人間〉の少女「あれ?沙利ちゃんはどうしたの? もう起きてると思ったんだけど・・・」
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