エレベーターで待つ女

草加奈呼

上へ参ります(脚本)

エレベーターで待つ女

草加奈呼

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〇エレベーターの中
エレベーターガール「上へ参ります」
エレベーターガール「本日は、当エレベーターをご利用いただき、ありがとうございます」
エレベーターガール「え、エレベーターガールが 珍しいですか?」
エレベーターガール「はい、ここで採用していただきました」
エレベーターガール「お客様、 ご来場は初めてでいらっしゃいますか?」
エレベーターガール「きっと素晴らしい景色が、 待っていると思いますよ」
エレベーターガール「62階でございます」
エレベーターガール「お気をつけて いってらっしゃいませ」
エレベーターガール「下へ参ります」
エレベーターガール「1階でございます」
エレベーターガール「いらっしゃいませ、お客様」
エレベーターガール「えっ、下でございますか?」
エレベーターガール「申し訳ありません、お客様」
エレベーターガール「このエレベーターは、 62階直通となっておりまして」
エレベーターガール「下へのエレベーターは、 別のフロアにございます」
エレベーターガール「はい、こちらの地図でご案内させて いただきます」
エレベーターガール「お気をつけて」
エレベーターガール「いらっしゃいませ、お客様──」
エレベーターガール「──あっ」
エレベーターガール「おばあ・・・ちゃん・・・?」
エレベーターガール「おばあちゃん、私だよ・・・」
エレベーターガール「やっと、会えたね・・・」
エレベーターガール「うん・・・うん・・・」
エレベーターガール「ごめんね、おばあちゃん・・・」
エレベーターガール「あの時、おばあちゃんは 私を止めてくれたのに」
エレベーターガール「私が、ワガママを言って 戻ってしまったから・・・」
エレベーターガール「せっかく助けてくれたのに、」
エレベーターガール「私が先に逝ってしまって ごめんね・・・」
エレベーターガール「私ね、念願の エレベーターガールになれたよ」
エレベーターガール「うん・・・。ここで、 エレベーターガールをしているの」
エレベーターガール「おばあちゃんも、乗るんでしょう?」
エレベーターガール「うん・・・見ててね」
エレベーターガール「上へ参ります」
エレベーターガール「本日は、当エレベーターをご利用いただき、ありがとうございます」
エレベーターガール「これから向かいます62階は、 天界への道となっております」
エレベーターガール「360度素晴らしい景色となっております。 ぜひご観賞ください」
エレベーターガール「62階でございます」
エレベーターガール「おばあちゃん・・・」
エレベーターガール「お気をつけて いってらっしゃいませ」
エレベーターガール「・・・・・・」
エレベーターガール「下へ参ります」
エレベーターガール「1階でございます」
エレベーターガール「いらっしゃいませ、 天界エレベーターへようこそ」

コメント

  • うわーここへきてギャグではなく😭
    短いお話の中に深くは語らなくてもおばあちゃんとの絆を感じました
    念願の職業につけて良かったです

  • 書かれていたように最近エレベーターガールと言う職業を目にすることはなくなりましたね。
    読み終えた後だからこそ「こういう設定もあるよね」と思いましたが、読む前は「エレベーターガール=デパート」という連想しかなかったので「なるほど~そういう設定かぁ~」と思いながら読み終えることができました。

  • 読んだ後だと、表紙やエピソードタイトルの「上へ参ります」が違った意味に感じられ、温かい気持ちになりました^^エレベーターの外の様子を各々が想像できるのもワンシーンならではですね!

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