銀の剣と刃の魔女

小潟 健 (こがた けん)

読切(脚本)

銀の剣と刃の魔女

小潟 健 (こがた けん)

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〇断崖絶壁
  周囲の見渡す限りを海に囲まれた島の端に、その島を一望できるほどの高い丘があった。
  その丘には小さな木造の家が一つあり、傍らに置かれた安楽椅子には一人の老婆の姿があった。
  右目を閉ざした老婆は残る左目で海を見ていた。
  白い濁りのある瞳は、しかし鷹の如く鋭い視線である。

〇海
デュナ「さぁ、このババアの仕留め損なった獲物をお前さんはどうするんだい? アデライーデ」
  老婆『デュナ』は視線の先、声も聞こえ無い遠くの海上へと問い掛ける。
  視線の先ではデュナの問いに答える様に、白銀が閃き、1拍の後に巨大な血飛沫が吹き上がる。

〇断崖絶壁
デュナ「そうさね、それがこのババアには無かったアデライーデだけの剣。 アタシの教えた技と揃えば最強の刃に成る」
デュナ「これで何の未練も残さず逝けるってもんさね」

〇空
  デュナの視線は海面付近から上空へと上がる。
  その先にいるのは伝統の魔女帽子を目深に被った少女。
  孫のアデライーデだ。
アデライーデ「さすがに疲れたね、帰りは超特急でヨロシク」
  アデライーデは、巨大な竜にまたがっていた。
  それは宝石の様に美しい銀色の竜だった
ミスリル「グルルゥ・・・(俺も多少なりとも疲れているんだが・・・)」
アデライーデ「ババア最後の晩餐なんだから、化けて出ないようにウマイめしを作ってやらないとね」
ミスリル「グルルゥゴウゥ(だからもっと早く準備しておけと)」
アデライーデ「・・・ぐぬぬ」
ミスリル「ガルゥ(フン、しっかり掴まっていろバカ姉貴)」
  一人と一匹はデュナの元へと急ぎ飛んで行く

〇小さな小屋
  夜、丘の上の小さな家の中にはデュナとアデライーデ二人の姿があった。
  開かれた窓からは巨大な竜『ミスリル』が中を覗く。
デュナ「さて、腹も膨れたことだし、遺言でものこそうかね?」
アデライーデ「隠し財産でもあるのかい?」
デュナ「全部地下の刀剣に使ったからねぇ・・・売っても良いがどれもこれもミスリルよりでかい屋敷を2つや3つも買える値打ちだからね」
デュナ「せいぜいボッタクられない様にする事さね」
アデライーデ「そんな金が有るなら本島に家建てなよ・・・」
デュナ「だがお前らの腕なら小銭に困る事は無いハズさね。あの刀剣は有効に使い潰しな」

〇小さな小屋
デュナ「遺言は今ので良いかねぇ?」
ミスリル「グルルゥゥ(もう少し締まったヤツにしてくれ)」
アデライーデ「生意気な弟が異議申し立てを出したから別のヤツで」
デュナ「面倒だねえ・・・」
デュナ「・・・アデライーデ、アタシの遺した『刃の魔女』の名を越えてみな」
デュナ「魔女として、探険者として生きるなら死んだババアに負けるんじゃあないよ」
デュナ「・・・ミスリル、お前にとってアデライーデと一緒に人間の世界に行くのは、きっと窮屈に感じるだろうね」
デュナ「場合によっちゃあ、壊して風通しを良くしてやるのも良いかもねぇ・・・お前さんの好きにしな」
ミスリル「グゥゥ・・・(自重させろよババア・・・)」

〇小さな小屋
デュナ「さあて、もうアタシの魔力も途切れそうだ」
デュナ「予定通り、ベッドの中で死なせて貰うとするよ」
デュナ「後始末も、予定通りに頼んだよ」
ミスリル「グル(お休み、デュナ)」
デュナ「お休み、ミスリル」
アデライーデ「ババア・・・・・・一緒に寝ても良い?」
デュナ「良いよ。 ベッドでもう少しおしゃべりしようかね」

〇小さな小屋
デュナ「泣くんじゃないよアディ」
デュナ「明日からのお前を思うとね、アタシはワクワクしてくるんだよ」
デュナ「明日より良い日は無いさね」

コメント

  • こんばんは
    ファンタジーの世界観が素敵でした
    龍に跨った女の子
    続編も読みます

  • 楽しくお別れを告げるおばあちゃんがすごくかっこいいです。
    人の死は避けられないものだとしても、満足した生き方をした彼女はすごいです。

  • おばあさんの遺言は孫たちに、魔女と探検家の生き方はおばあさんを越えて生きなさい。と言っているようです。おばあさんの死期が近づいているのが辛いです。

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