Dyson cloud ~宇宙の上京物語~

イヌドングリ

ダイソン雲(脚本)

Dyson cloud ~宇宙の上京物語~

イヌドングリ

今すぐ読む

Dyson  cloud ~宇宙の上京物語~
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇宇宙ステーション
  HZ農業基地群・畑中家の基地

〇研究施設の廊下
畑中 治「お~い、誰かキセノン入れといてくれ!」
畑中 六実「やだよ~、忙しい~」
畑中 六実「どーせ、兄ちゃんがやるでしょ?」
畑中 治「六実、お兄ちゃんはな、明日から大学に行くんだ 土星の方まで行っちゃうんだぞ」
畑中 治「それに、やっとかないとほかの基地にぶつかってしまうんだ、だから──」
畑中 一郎「いいよ親父、俺がやっとく」
畑中 六実「ありがと~、それでこそ兄ちゃんだよ」
畑中 六実「明日会う子と絶対、仲良くするんだから」

〇地下実験室
畑中 一郎(次で最後か、明日は大学にいるんだよな)
畑中 一郎(・・・意外と、寂しくないな)
畑中 一郎(もっとこう、込み上げるものがあるかと思ってた)
畑中 一郎(そういや教室って一度しか行ったことがないよな)
畑中 一郎(第三農業基地小、いつもは配信授業で見てる先生の実物が見れて)
畑中 一郎(授業どころじゃなかったっけな)
畑中 一郎(毎日、あんなところに通えるんだよな)
畑中 六実「兄ちゃん、まだやってる?」
畑中 一郎「どうした? 友達に会う準備はいいのか」
畑中 六実「いちおう」
畑中 六実「それより作業に慣れとかないと」
畑中 一郎「おう、コツを教えてやるよ」
畑中 一郎「これを、こうして・・・こう」
畑中 一郎「やってみ」
畑中 六実「これを、こうして・・・こう?」
畑中 一郎「そう、この方が簡単だろ?」
畑中 六実「確かに」
畑中 六実「・・・」
畑中 六実「・・・」
畑中 六実「兄ちゃん、大学で友達できるかな?」
畑中 一郎「これでも一応、友達は多い方だぜ?」
畑中 六実「でも、みんな次会えるの数十年後じゃん」
畑中 六実「毎日会えるってどんな感じなんだろ?」
畑中 六実「きっと楽しいんだろうね」
畑中 一郎「向こうに行ったら教えてやるよ」
畑中 六実「絶対だよ」

〇飛行機の座席
  土星基地群行き連絡船
畑中 一郎(あれが故郷か)
里田 カーリ「あの・・・! そこの席!」
畑中 一郎(座席間違いか?)
畑中 一郎「あの、すみません」
畑中 一郎「席、間違えてませんか?」
乗客「ああ、すまない、お嬢さん」
里田 カーリ「ありがとうございます、これから大学で」
畑中 一郎(ど、同級生!?)
畑中 一郎「そ、そうなんですね・・・」
畑中 一郎「いい、新学期になると、いいですね」
里田 カーリ「はい!」
畑中 一郎(か、可愛い・・・)

〇研究所の中枢
畑中 一郎「これが、大学か──」
新入生「よう! 初対面だよな?」
新入生「オレはカピター、君は?」
畑中 一郎「俺は、畑中一郎」
畑中 一郎「すごく、広い部屋だよね さすが大学って感じ」
新入生「・・・そんな広いか?」
畑中 一郎「俺が通ってた小学校の、教室よりは?」
新入生「あっ、お前、ハビタブル・ゾーン出身?」
新入生「ダイソン雲の田舎モンじゃん!」
新入生「オレが色々教えてやっから、なんでも聞きな~」
畑中 一郎「ありがと」
畑中 一郎「・・・」
畑中 一郎「ちょっと、用事、思い出した」

〇研究施設の廊下(曲がり角)
畑中 一郎(どおりで離れるとき、寂しくないわけだ)
畑中 一郎(ほんとはスッカスカなのに、遠目には有象無象の塊じゃないか)
里田 香織「──あの」
畑中 一郎(・・・俺はあの場所が嫌いだったのか)
里田 カーリ「あの!」
畑中 一郎「えっ、あ、ごめん」
畑中 一郎(あれ、この人って確か連絡船で──)
里田 カーリ「さっきはありがと」
里田 カーリ「同級生なら言ってくれればよかったのに」
畑中 一郎「そ、そうだったね」
里田 カーリ「ここの景色、好きなの?」
畑中 一郎「・・・いや、それほどでも、ないかな」
里田 カーリ「そうなんだ」
里田 カーリ「わたしは、好きなんだ」
畑中 一郎「そうなの?」
里田 カーリ「だって、すごいじゃない?」
里田 カーリ「ダイソン雲!」
里田 カーリ「たくさんの人が作ったものが、太陽を覆って」
里田 カーリ「この星系の食を支えてるなんて」
畑中 一郎「そう、かな?」
里田 カーリ「ある大昔の偉い学者さんは、」
里田 カーリ「太陽を覆ってエネルギーを余すな! って考えてたのよ ダイソン球っていうんだけど」
畑中 一郎「へ~」
畑中 一郎「その学者さんがダイソンさん?」
里田 カーリ「そう! だから、ダイソン雲って──」
里田 カーリ「少しずつダイソンさんの夢に近づいてる気がしない?」
畑中 一郎「でも作ってるの米だよ?」
里田 カーリ「わたしたちのエネルギーじゃない!」
里田 カーリ「それに美味しいし」
  この時、ふと寂しさが込み上げてきた
  あの場所を、故郷を好きになれる気がした
  六実、大学はいいところだぞ

〇黒背景
  畑中 一郎
  COEIROINK:AI声優-青葉
  
  畑中 治
  COEIROINK:AI声優-銀芽
  畑中 六実
  COEIROINK:ディアちゃん
  
  里田 カーリ
  COEIROINK:AI声優-朱花
  乗客
  COEIROINK:AI声優-銀芽
  
  新入生(カピター)
  COEIROINK:おふとんP
  ナレーション
  COEIROINK:KANA

コメント

  • 宇宙に浮かぶ食料生産拠点のダイソン雲といった壮大な概念と、地球上の大学生の感覚そのままの一郎とのコントラストがいいですね。農村地帯=田舎という概念が宇宙にもそのままスライドしていて、ダイソン雲=田舎出身を疎ましく思う一郎の心情が面白くもあり不思議なようでもあり。土星でのキャンパスライフにも興味津々です。

  • 私も自分の育った土地があまり好きではなかったので、一郎君に非常に共感できました。
    他の人から見た視点に、ある瞬間に気付かされるのもめっちゃわかります!!

  • 宇宙の田舎出身の畑中一郎くん、壮大なSFの雰囲気とのギャップがちょっと和みますね…☺️
    技術が大きく発展しても、人間の生活や抱える悩み、価値観などは変わらない部分が多いのかもしれませんね…。

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ