財布が、ないッ!!!

財津

エピソード1(脚本)

財布が、ないッ!!!

財津

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〇男の子の一人部屋
陽希「やべぇ...」
陽希「財布が、ないッ!」
  明日は好きな人とのデートなのに。
  しかも告白しようと思っているのに!
陽希「ええ...」
  学生バッグも探した。制服のポケットの中も探した。部屋も隅から隅まで探した。
陽希「なんでないんだよ」
  他にも家中探し回ったが、ない。
  昨日の夜まではあった。部屋でレシートを捨ててバッグに入れた記憶がある。
  時刻は午後9時。約束は明日の10時だ。
陽希「それまでに見つけてしまわねぇと」
  全財産が財布の中にある。

〇男の子の一人部屋
陽希「定期も、ないッ!」
  学校までの電車の定期もない。
  集合は学校より二つ前の駅。お互いの定期の範囲内で決めた。
陽希「いつも引き出しにしまってるんだけど」
  引き出しはおろか、学生バッグ、制服のポケットにもない。
陽希「なんで?」

〇男の子の一人部屋
陽希「待ってくれ...」
陽希「あやちゃんへのプレゼントも、ないッ!」
  ずっと棚の中に入れていたのに。
  絢ちゃんが欲しがっていたハンドクリーム。
  デパートの物でお小遣い三ヶ月分だ。
  でもいいんだ。絢ちゃんが喜んでくれれば俺は─
陽希「って違ーう!!」
陽希「そのプレゼントがないんだよ!!!」
  自慢だが、部屋は常に綺麗にしている。
  だから大まかな配置や、どこに何があるのかも分かる。
陽希「なんで...」

〇男の子の一人部屋
陽希「ははは...」
陽希「洋服も全部、ないッ!」
  どういうことだ?
  クローゼットを開けたら洋服が全てなくなっていた。
陽希「...」
  これだけ昨日まであった物がなくなっているということは、
陽希「空き巣に入られたか?」
  母さんと弟にも聞いてみるか。

〇おしゃれなリビングダイニング
陽希「母さん、和希、いるか?」
お母さん「陽希! ドタバタうるさいわよ!!」
陽希「それがさ」
和希「お兄ちゃんどうしたの? また数IAすら分からないの?」
陽希「そうじゃなくて...いやそれはそうなんだけど...」
陽希「俺の部屋の物がなくなってるんだけど、何か取った?」
「えっ?!」
お母さん「お母さんを疑ってるの?」
陽希「いやあくまでも可能性の話で...」
和希「僕そんなことしないよ、バカでもお兄ちゃんのこと好きだもん」
  こいつ一言多いんだよな...
陽希「ごめんごめん...じゃあ俺の部屋、空き巣に入られたっぽい」
「えっ?!」

〇男の子の一人部屋
陽希「最初は気づいたのは財布、定期、プレゼント...小物がなくなってた」
お母さん「でもそれってあんたが管理してなかったんじゃないの?」
和希「お兄ちゃんがなけなしのお金を使って買ったプレゼントをなくすとは考えにくいな」
  当たってる...
陽希「それまでは分かるんだよ。でもさ、」
  ガチャ
陽希「洋服も全部なくなってるんだ」
「本当だ...」
お母さん「お母さんクリーニングに出したりしてないわよ」
和希「僕も体の大きさだけはお兄ちゃんに負けてるから、服借りたりしてないよ」
陽希「二人を疑って悪かったけど、明日出かけるんだ」
陽希「いる物全部なくなっててどうしようかと思って...」
「...」
お母さん「警察に連絡するわよ!今すぐに!」
和希「待ってお母さん。もう12時だよ。お兄ちゃん寝坊しちゃうよ」
お母さん「何言ってんの!他にも盗られてるかもしれないのよ!」
  プルル...
  プルルル...
お母さん「...繋がらないわね」
お母さん「陽希、明日は出掛けなさんな」
陽希「えっ?!」
お母さん「明日またかけるわ。これは緊急事態よ」
お母さん「分かった?」
陽希「...わかった」
陽希「連絡してくるよ」

〇おしゃれなリビングダイニング
陽希「はぁ...」
  プルル...
  ピッ
絢「もしもーし、はるくん?」
陽希「あやちゃん!夜遅くにごめん」
絢「大丈夫だよ!私も電話しようとしてた!」
  絢ちゃんは優しい。そしてかわいい!
陽希「ありがとう。実は明日なんだけど、」
絢「あ、ごめん、そのことでさ...」
陽希「ん?」
絢「明日ちょっと用事が入って、行けなくなっちゃった...」
  これは、奇跡だ!
陽希「実はあやちゃん、俺もなんだ...」
絢「えーーっ」
絢「あはは!お揃いだね!」
陽希「別の日にまた行ってくれる?」
絢「もちろん!また決めよう!」
  良かった...
陽希「あ゛や゛ぢゃ゛〜〜ん゛」
絢「ええ?!泣かないでよ〜」
絢「...明日会えないから、もう少し繋げとこっか」

〇男の子の一人部屋
  次の日
陽希「...12時?!爆睡してしまった!!」
陽希「...ん?」
  開けていた引き出しに、見覚えのあるカードがある。
陽希「これは...俺の定期ッ!」
  もしかして──
  ガサッ
陽希「やっぱり棚に置いていた!プレゼントッ!」
  ガチャ
陽希「洋服も全部戻っているッ!」
陽希「ということは...」
  ジーッ
陽希「あった!俺の財布ッ!」
  しかしなんで昨日なかったんだ?

〇おしゃれなリビングダイニング
陽希「おはよう」
お母さん「陽希!良かった!」
和希「相手の人は?!」
陽希「何?」
和希「これ観て!」
  和希のスマホを覗く。
陽希「!」
  『本日午前10時頃、
  丸丸駅前で刃物を振り回していた男を
  逮捕しました。
和希「丸丸駅って集合場所でしょ?」
陽希「そう...」
  警察によりますと、
  男は「カップルが来るはずだ、殺してやる」
  等と供述していたとのことです。
  男は住所不定の無職で、
  怪我人はいませんでした。』
「...」
陽希「今日は行かないように、誰かが隠してたのかな」
陽希「...なくなった物が、今朝全部戻ってたんだ」
「えっ?!」

〇男の子の一人部屋
  プルル...
陽希「あやちゃん!大丈夫?!」
絢「大丈夫...」
  声が震えている。
絢「...見つからなくてよかったかも」
陽希「えっ?」
絢「あっ!」
絢「...実は昨日遅くまで、定期とか財布とかが見つからなかったんだよね〜」
絢「だから用事って嘘ついちゃって...」
陽希「...俺もなんだけど」
絢「えーーっ」

〇男の子の一人部屋
陽希「無事で良かった」
  お互いあの男のことを知らなかったし、約束もメールでした。
  なのにどうして俺らが10時に丸丸駅に来ると分かったのか。
  そしてどうして俺らのいる物がなくなったのか。
絢「本当にね」
  分からないけど、とにかく、
陽希「あやちゃん、俺─」
  この想いを伝えないと。

コメント

  • 何か見えないものに守られていたような感じですね。
    彼女も同じようなことが起こっていたのも不思議で。
    でも、行かなくて本当によかったです。

  • 誰のおかげなんだろう…。
    神様…?それとも未来からきた自分とか…。
    色々な可能性があって考えてしまいました笑
    しかしもし自分の財布や服がなくなったら相当焦りますね…。

  • どのような動機で犯人はこの2人を殺害しようとしたのかは不思議ですが、ドキっという感じもあり2人ともが物がなくなっているという展開も面白かったです!

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