映画好きな女

武智城太郎

読切(脚本)

映画好きな女

武智城太郎

今すぐ読む

映画好きな女
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇劇場の座席
映子「うん、いい雰囲気ね」
映子「空調も座り心地も快適」
映子「客の入りも、混み過ぎずガラガラ過ぎず、ちょうどいい塩梅だし」
映子「やっぱり映画鑑賞は、平日の午前に限るわね」
映子「上映開始まで、あと15分か」
映子「残りの時間を、ロビーで手に入れた近日上映作品のチラシを眺めて潰すのがいいのよね」
映子「パンフレットについては値段もバカにならないから、買うかどうかは鑑賞後に決めるわ」
映子「いよいよ、幕が開く」
映子「そして、ビスタサイズだったスクリーンが、拡大してシネスコサイズに」
映子「いちばんワクワクする時間ね」
映子「映画泥棒から、予告編に」
映子「日常から非日常の世界へ・・・」
映子「ついに本編が始まったわ」
映子「『DONE/ドーン 熱砂の惑星』が」
映子(ハッタリが効いた導入部は悪くない・・・)
映子(さすがはハリウッドSF大作。画面の隅々までCGで埋め尽くしたリッチな映像・・・)
映子(お決まりのラブロマンスもあり・・・)
映子(あ・・・!)
映子(右後方の席に、周囲に響きわたるほどのイビキをかいている中年男性を発見)
映子(見たところ、外回りのサラリーマンが昼寝目的に入場したらしい)
映子(おそらく、ネットカフェを見つけられなかったのだろう)
映子(それはまったく構わないけど、上映中の騒音はいただけない)
  映子はコートの内ポケットから、吹き矢を取り出す。
映子「フッ!」
  チクッ!!
サラリーマン「イテッ!!」
映子(よし!)
映子(むむ・・・!)
映子(続いて左前方に、スマホを覗いている若い女性を発見!!)
映子(主演のイケメン男優目当てで観に来たと思われる)
映子(本人は手で画面を覆って隠してるつもりらしいけど、光は思い切り漏れている)
映子(観賞の邪魔になること、この上ない)
  映子は、矢の先を睡眠薬に浸す。
映子「フッ!!」
  チクッ!!
映子(これでよし。映画館の平和は守られたわ)
映子(いよいよクライマックス。灼熱砂漠での、手に汗握る大決戦シーン!)
映子(──からの、感動のラスト)
映子(そしてエンドロールへ)
映子「今回も、最後まで物語に没入して観れた。良い映画鑑賞だったわ」
映子「ただ、一つだけ残念だったのは──」
映子「映画の内容が、ビックリするほどつまらなかったことね」
映子「まさか、ここまでとは予想外だったわ。おかげでパンフレット代は浮いたけど」
映子「でもこの虚無感も、映画鑑賞の醍醐味の一つ」
映子「これで時間とお金を無駄にしたとか怒るような人は、一人前の鑑賞者とは言えないわ」
映子「なんでこんなにつまらなかったのか、今夜一晩考える楽しみもできたし」
映子「その後で、映画サイトの他の人の感想をじっくり読もう」
映子「やっぱり映画は娯楽の王様ね」
映子「fin」

コメント

  • 雰囲気が好きです

  • 吹き矢が…吹き矢が頭から離れません…🤣🤣🤣

  • ひねくれた見方だとは思いますが、私もまったく同じです😂(吹き矢以外)

コメントをもっと見る(6件)

成分キーワード

ページTOPへ