舞い降りた天使

市丸あや

舞い降りた天使(脚本)

舞い降りた天使

市丸あや

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舞い降りた天使
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〇ホテルの部屋
棗絢音「あ・・・ダメ・・・ 藤次さん・・・もう・・・」
棗藤次「うん・・・ ワシも、そろそろ、イキそう・・・ あっ!! 出るっ!!」
棗絢音「んんっ!!!!」
  ・・・秋の中頃の丑三つ時。
  ベビーベッドの中でスヤスヤ眠る我が子の横で睦み合うのは、妊娠中の絢音と、ムラムラ欲求が抑えられない藤次。
  側位の体位で、絢音を後ろから抱きしめて行為を加速させていた藤次は、小さく呻いてコンドーム越しに絢音の中に射精する。
棗絢音「あ・・・藤次さんの・・・ビクビクしてる・・・」
棗藤次「そらそうや・・・ お前ん中気持ちええもん。 なあ、もう一回・・・」
棗絢音「だーめ❤︎ 1日1回の約束でしょう? ほら、抜いて?」
棗藤次「嫌や。 もう少し中おりたい。 一つになっとりたい。 なあ〜、もうちょいしよ❤︎」
棗絢音「だからダメだって! 藤次さぁん。 あっ❤︎」
  そうして、妊娠中なのも忘れて2回目のコトに及ぼうとした時だった。
  パパ?ママ?
「!?」
  ハッとなりベッドから半身を起こすと、眠い目を擦りながらベビーベッドの柵に手を掛けこちらを見ている、一歳半の愛息子の藤太。
  パパ、ママ、ねないの?
  よるだよ?
棗絢音「あ、あ、 そうね、夜はねんねだったわね! 起こしちゃってごめんね藤太! さ、寝ましょう? ほら、藤次さん・・・抜いて?」
棗藤次「う、うん・・・」
  そうして藤次は絢音の膣内から自身を引き抜き、2人は身なりを整え、絢音はベビーベッドへ向う。
棗絢音「さ、良い子良い子。 寝ましょうねー・・・」
  ママ〜
  だっこ・・・
棗絢音「ハイハイ。 甘えん坊さん♪ ミルクでも飲む?」
  ううん・・・
  ママ、ママ・・・
棗藤次「・・・・・・・・・」
  スリスリと絢音の胸に顔を擦り付け甘える息子。
  普通の親なら可愛い可愛いと、妻と一緒になってあやすとこだが、何故か藤次は不満顔。
棗絢音「・・・よし、寝てくれた。 起こさないように・・・」
  ゆっくりと藤太をベビーベッドに寝かせると、絢音は藤次のいる夫婦のベッドに向かう。
棗絢音「お待たせ。 さ、寝ましょう?」
棗藤次「・・・・・・・・・」
棗絢音「と、藤次さん?」
  瞬く絢音の円やかに膨らんだ子宮に顔を寄せて、藤次はポツリと呟く。
棗藤次「お前は絶対、女の子で来や。 これ以上お母ちゃん取り合う相手、増やしとうないんや。 せやから頼むえ?・・・恋雪(こゆき)」
棗絢音「・・・・・・・・・・・・」
  実の子ですら嫉妬の対象にする愛の重い夫に辟易しながら、絢音は藤次に抱かれて、眠りに落ちた。

〇シックな玄関
棗藤次「・・・ほんなら行ってくる。 検診、気をつけて行きや」
棗絢音「うん。 藤次さんも、お仕事頑張って!」
  パパ、いってらあっちゃい!!
棗藤次「おーおー 可愛い可愛い。 お土産買うてきたるよし、ええ子にしときや」
  きゃー!!
  そうして絢音の腕の中にいる藤太の頭を撫でてやり、藤次は絢音を見つめる。
棗藤次「・・・恋雪、来てくれると、ええな」
棗絢音「・・・大丈夫よ。 藤次さんが、ずっと「願掛け」してるんですもの。 来てくれるわ」
棗藤次「・・・せやろか。 ・・・うん。 そうやと、ええな」
棗絢音「うん」
  パパ?ママ?
  不思議がる藤太の頭上で、2人は軽くキスを交わし、藤次は愛しい家族をしっかり眼に焼き付けて、目覚め始めた京の街へと向かった

〇病院の診察室
中山「・・・うん。順調だね。 初期の頃あったケトン体も落ち着いたし、体重も問題なし。これなら今回も、経膣分娩でいけるかなぁ〜」
  ・・・花藤病院の産婦人科。
  応対に出た産科医の中山の発言に、絢音はホッと胸を撫で下ろす。
棗絢音「はい。通常分娩でいけるなら、今回も自然に産んであげたいです」
中山「そう。分かりました。 ならその方向で調整しましょう。 けど、何かあったら、僕の指示に従って下さいね」
棗絢音「はい」
中山「ん。 なら、結構ですよ」
棗絢音「ハイ。 ・・・あ! そうだった!大切な事忘れてた!!」
中山「ん? どうかした?」
  不思議そうに小首を傾げる中山に、絢音はごくりと息を呑み口を開く。
棗絢音「あの・・・ ちょっとお伺いしたいのですが・・・」

〇個別オフィス
京極佐保子「・・・じゃあ検事、私お昼行ってきます」
棗藤次「おう! 楽しんで来や! 午後は緩いよし、少しくらいなら寄り道ええで」
京極佐保子「わっ! やった!! ・・・じゃあ、お言葉に甘えてアヌメイト覗いてきます」
棗藤次「おう! 行って来い行って来い!」
京極佐保子「はーい!」
  そうして軽やかな足取りで部屋を後にしていく佐保子を一瞥した後、藤次は鞄から絢音手製の弁当を取り出す。
棗藤次「さて・・・ 今日の昼飯はなんやろなぁ〜」
  いそいそと包みを開き、曲げわっぱの弁当箱を開けると、白米に黄金色の出汁巻きと筑前煮と、ウサギ切りが愛らしいリンゴ。
棗藤次「おおっ!! 今日は出汁巻きかぁ〜 筑前煮も味染みた色して美味そうや。 ほな」
  言って、箸を挟んで手を合わせた時だった。
棗藤次「ん?」
  傍に置いていたスマホが小さく鳴動したので、藤次は弁当を頬張りながら、片手で画面をスワイプする。
棗藤次「・・・なんや絢音か。 検診終わって、夕飯の相談か?」
  画面に現れたのは、絢音と表示されたメールの着信通知。
  
  特に気にも留めず開いてみると・・・
  ──寒くなってきたし、熱燗・・・用意しておくわね?
棗藤次「なんやこれだけかい。 と言うか、わざわざこないなこと連絡せんでも・・・・・・・・・!」
  そう言ってメールを閉じようと指を動かした瞬間、藤次はハッとなり、口に運ぼうとした出汁巻きを落とす。

〇おしゃれなリビングダイニング
棗絢音「(禁酒?)」
棗藤次「(せや!長生きしたいんのもあるけど、願掛けしよ思て・・・)」

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コメント

  • 絢音さんの心使い、ほんとに妻のかがみです。妊娠しているのに関わらず、これだけ夫の願望に寄り添い、愛情を注げる女性って素晴らしい・・。彼らの幸せを妬むような人なんていないと思います。

  • イチゴの花言葉が「幸福な家庭」とは、初めて知りました。これから結婚する人や赤ちゃんを授かった方への贈り物に最適ですね。藤次は女の子の赤ちゃんにメロメロのパパになりそう。

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