2人目の女

マヤマ山本

『2人目の女』(脚本)

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〇テーブル席
  『2番目の女』
藤瀬 文香「キーちゃん!」
永井 喜一郎「文香!?」
藤瀬 文香「どういう事!? その女、誰!?」
杏子「ひごじぃ、もしかしてこの人・・・」
藤瀬 文香「『ひごじぃ』・・・?」
藤瀬 文香「って、そのお腹!?」
永井 喜一郎「予定日は来月らしい」
藤瀬 文香「他の女と、子供まで・・・」
藤瀬 文香「最っ低!」
杏子「いや誤解です、私達は親族で──」
藤瀬 文香「え、そうなの?」
永井 喜一郎「嘘は良くないな、民法上の親族は『6親等以内』」
永井 喜一郎「つまり俺達は、親族じゃない」
藤瀬 文香「この・・・テキトーな嘘で誤魔化そうとして!」
永井 喜一郎「わかったよ、ちゃんと説明するから」
永井 喜一郎「他のお客さんに迷惑だし、先に座ろっか」
藤瀬 文香(誰のせいで──)
永井 喜一郎「まず、紹介するね」
永井 喜一郎「俺の彼女の藤瀬文香」
藤瀬 文香(彼女・・・)
藤瀬 文香「で、じゃあこの女は?」
永井 喜一郎「俺の仍孫(じょうそん)」
藤瀬 文香「仍孫?」
永井 喜一郎「昆孫(こんそん)の子供」
藤瀬 文香「昆・・・孫?」
永井 喜一郎「来孫(らいそん)の孫、でわかる?」
藤瀬 文香「来・・・・・・孫?」
杏子「もう、分かりづらいよ」
杏子「玄孫(やしゃご)の曾孫(ひまご)です」
藤瀬 文香「あ〜、玄孫の曾孫ね」
藤瀬 文香「最初からそう言ってよ」
永井 喜一郎「ごめんごめん」
藤瀬 文香「って、は? 玄孫の曾孫?」
永井 喜一郎「そう」
永井 喜一郎「玄孫の曾孫、仍孫」
藤瀬 文香「ちょっと待って」
藤瀬 文香「子供の子供の子供が曾孫で、子供の子供の子供の子供が玄孫だから」
藤瀬 文香「子供の子供の子供の子供の子供の子供の子供の子供?」
永井 喜一郎「1個多いな」
永井 喜一郎「それだと雲孫(うんそん)だ」
藤瀬 文香「雲孫?」
杏子「この子が雲孫ですね」
永井 喜一郎「そう、初雲孫」
藤瀬 文香「初めて聞く単語に『初』付けないでよ」
永井 喜一郎「ちなみに、逆は正式な呼び名が無くてさ──」
永井 喜一郎「『ひいひいひいひいひいじいちゃん』としか言いようがないんだよ」
杏子「まぁ、それだと長いんで『ひい×5』で──」
杏子「『ひごじぃ』って呼んでます」
藤瀬 文香「・・・えっと、そもそもの話なんだけど」
藤瀬 文香「キーちゃん、いくつ?」
永井 喜一郎「だから245歳だって、前から言ってるじゃん」
藤瀬 文香「ガチだったの!?」
永井 喜一郎「信じてなかったの?」
藤瀬 文香「当たり前でしょ!」
永井 喜一郎「いわゆる、不老不死ってヤツでさ」
藤瀬 文香「そんな大事な事、普通は先に話すもんじゃないの!?」
永井 喜一郎「いや・・・不老不死の時点で普通じゃないし」
藤瀬 文香「それは・・・そうだけど」
杏子「ひごじぃの気持ちも、わかってあげて下さい」
杏子「一昔前は、メディアに追いかけられて大変だったらしいんで」
藤瀬 文香「そっか・・・ごめん、嫌な事思い出させて」
永井 喜一郎「いいよ、100年くらい前の話だし──」
永井 喜一郎「それに、人生で1番モテた時期でもあるしな」
藤瀬 文香「やっぱ、最低」
藤瀬 文香「どうせ、私より素敵な女性達とお付き合いなさったんでしょうね」
杏子「いえ、文香さんが2人目ですよ」
藤瀬 文香「え?」
杏子「初カノだったひごばぁが亡くなってからずっと独り身で」
杏子「だから、150年ぶりに彼女が出来たと聞いた時は『どんな人なんだろうな』って思いました」
杏子「思った通り、とても素敵な方ですね」
藤瀬 文香「いや、それ程でも──」
永井 喜一郎「俺、見る目あるだろ?」
永井 喜一郎「これで老後は安泰だな」
藤瀬 文香「って、キーちゃん老いないじゃん!」

コメント

  • お腹の子供には「ひむじい」って呼ばれるのかな。200年以上生きても人間て大して変わらないのかもしれませんね。私なんかも20年くらい前だと「最近だな」と思っちゃいますからね。2人目の女はいい意味で鈍感力が高そうな方で幸せそうでよかったです。

  • 孫の呼び方がそこまであるとは知りませんでした。どんな必要性があったのでしょうね😅
    250年あまり生きて二人目とは、よほど前の奥さんが素晴らしかったのでしょうか。いずれにせよ(彼女の方の)老後は安泰そうですね😊

  • そんなに長く生きているのに彼女はこれで2人目。最初はとんでもなくナンパな男の話かと思いましたが、最後は「何て素敵な方」となりました。

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