あえての瓶ビールは、酎ハイで、タイムリープ

kaiko

読切(脚本)

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〇立ち飲み屋
キョウコ「大将! いつもの!」
マキマキ「いつかの!」
ミッチ「あの日の!」
「「あの日の」って、なんか、重い〜!!」
  あいよっ、
  いつもの、生中っ!
  いつかの、ウーロン茶のロック!
  そして、あの日の、
  瓶ビール、コップは、ひとつ!
キョウコ「でっ! でっ! 続きつづきっ!」
ミッチ「せやから、 別れ話切り出そ思った前日に、 逆に切りだしよったんやなぁ〜 よーでけてるわ」
マキマキ「そんなことより、 なんで、営業の松永くん、 例えがいっつもモビルスーツなんですか?」

〇雑誌編集部
松永「だから、言ったじゃん」
松永「うちのコピー機の性能は、 旧ザクなんだよ」

〇立ち飲み屋
「うっざ」
マキマキ「キューザクってなんですか?」
ミッチ「知らんがな」
キョウコ「ちゃうやん、 「あの日の、瓶ビール、コップひとつ」よ そのハナシよ」
ミッチ「別れ話を切り出そうとした前日に、 逆に切り出されて、 結果、フラれたのは、ウチってことよ」
ミッチ「あーっ!! 前日の前日に、 タイムリープしたいっ!」

〇古いアパートの部屋
ミッチ「・・・」
ミッチ「!!」
ミッチ「──タイム・・・リープ?」
ミッチ「ふふふ・・・よっしゃよっしゃ」
ミッチ(・・・)
ミッチ「せやった・・・ 前々日は雨でめんどくさくなって、 前日にリスケしたんやった」
ミッチ「なんか、 どうでも良くなってきたわ・・・」

〇立ち飲み屋
ミッチ「はっ!」
キョウコ「なにっ!?」
マキマキ「ミッチは、今、 タイムリープしてきたんですよ」
ミッチ「なんでわかんのっ!?」
マキマキ「ごめんなさいっ! テキトーに言いましたっ!」
  はい、いつもの生中!
  はい
  いつかのウーロン茶、ロックね
  そして、
  あの日の、酎ハイレモン!
ミッチ「えっ!? なんなん? ちょっと時間巻き戻ってるやん!」
ミッチ「しかも、「あの日の」オーダーが 違うくなってる!」
ミッチ(歴史を変えてしまったらしいが、 何があったか、 全くわからん・・・)
マキマキ「ちょっとお手洗い・・・」
マキマキ「食べ物の注文、「焼き」で「塩」だったら なんでもいいんで」
松永「やっぱ、ここにおった!」
松永「ミッチにハナシがあんねん、 ちょっと はずしてくれるか?」
キョウコ「え!? いややん」
松永「ミッチ、先週は、ごめん・・・」
松永「あの、別れ話は なかったことにしてほしい」
ミッチ(いったい、 何があったんや・・・ウチに)
松永「ミッチが別れ話をすると気づいて、 ムキになってた・・・」
キョウコ「別れ話をされる前に、 自分から別れたろう、と」
松永「恥ずかしい・・・」
松永「ミッチの気持ちを しっかり受け止める! それがたとえ、別れ話であろうと!」
松永「さあ! 別れ話を切り出してくれたまえ!」
ミッチ「くれたまえ、て」
キョウコ「やっぱ、はずすは、ウチ」
松永「いや、見届けてくれ!」
  ご注文、なんにしましょ?
松永「あ、瓶ビール」
  グラスは?
松永「ひとつで」
ミッチ(思い出したわ、 こいつ、生より瓶の方が うまいうまいうまいうまいゆーて、)
ミッチ(頼む時に、自分の分しか頼まへんねん!)
ミッチ(で、ムカついて、 酎ハイレモンにしたんや)
ミッチ(別れ話の件より、 そっちが気になったんやった)
ミッチ「わかった、別れよ」
ミッチ(なんやこれ)
ミッチ「グラスをひとつしか頼まない あなたが信用できなくなりました」
松永「えっ! それが理由!?」
ミッチ「色々あんねん! あってん! そして、それが引き金や!」
松永「てっきり、なんでも モビルスーツに例えるのが うざいからなのかと・・・」
「それもあるし、 そもそも、みんな思うてる」
松永「じゃ、わかった、受け止めた でも約束してな──」
松永「──職場では、 今まで通り、普通やから、オレ」
「うざっ!」
マキマキ「もしかして、 元カレ来てたとか?」
ミッチ「なんでわかんのっ!?」
マキマキ「ごめんなさいっ! テキトーに言いました」
キョウコ「そもそもな、」
キョウコ「付き合う前にちゃんと考えて?」
ミッチ(そんなことより、 数分だけ過去にいるけど、 いつ、元の時間に戻れるんだろうか・・・)
マキマキ「じゃ、乾杯しましょか──」
  ミッチは、
  とりあえず、
  飲んでから考えることに
  するのであった──
  
  
  おしまい

コメント

  • 別れ話なのに、リズミカルで楽しく読んでしまいました。
    三人とも明るくて楽しそうですね!
    一緒に飲んでみたいです。
    たとえをMSにするところ、おもしろかったです。笑

  • ごめんなさい、どーでもいいような話がこの三人のリズミカルな会話でびっくりするほど心地よい読書になりました。なじみの大将がいる居酒屋でお酒を飲むと嫌な事もふっとんでいきますよね!

  • 居酒屋の大将が、3人のいつものやつを覚えているのか凄すぎます。女性の1人だけ、.会話を当てる超能力者が居たのではないかな。

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