世界が終わる前に

三玉亞実

読切(脚本)

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〇地下室
  もうすぐ始まる。
  世界の終わりが。
  俺はこの日のためにありとあらゆる準備をしてきた・・・気づいたの昨日だけど。
  全ての始まりはあのラジオからだった・・・

〇男の子の一人部屋
  俺がラジオを聞きながらドリアンでヘディングしていると・・・
  ラジオの人「いえーい!!明日、世界が滅亡するぜぇえええええええええ!!!!」
  俺「な・・・なんだってええええええええええええ!!!!」
  その時の俺はあまりの衝撃にドリアンの硬さで頭部血まみれだという事を忘れて絶叫していた。
  明日世界が終わる?そんな馬鹿なと半信半疑だったが、ラジオの人の話には説得力があったので信じる事にした。
  ならば、やる事は一つ。
  絶対に生き残ってやるううううううう!!!!

〇おしゃれな受付
  まずは銀行の金を全ておろして、その金を全て注ぎ込んだ。
ふぁい「ふぁい(いらっしゃいませ)」
  この店にあるやつ全部くれえええええええ!!!!
ふぁい「・・・ふぁい!?(え!?)」
  ドーンと札束を何個もレジに置いて、セレブしか買わないような超高級スーパーの食料品などを全て買い漁った。
  ちなみにここのお店は賞味期限が異常に長く300年くらいは持つらしい。サバイバルにはもってこいだ。
  俺は空輸でこのシェルターに送り、逆立ちでそこへと向かったという訳さ。

〇地下室
  そして、今に至る。
  あそこのお店は食料だけではなく、衣服も娯楽もあったから丸々一ヶ月は過ごせる。
  おまけにこのシェルターは風呂トイレ付きときた。ふかふかのベッドもテレビもゲーム機もあるし、不自由なく暮らせる。
  元々ここは鬼嫁から逃げるために作ったんだけど、まさかこんな事の役に立つとは人生なにが起こるか分からないな。
  なんて事を考えていると、日付はもう変わっていた。あらゆる衝撃に備えて睡眠薬を飲んで寝る事にした。
  目が覚めたら世界はもう滅亡している事だろう。
  人類はきっと阿鼻叫喚の地獄を味わって滅びる・・・が、俺はそれを回避する!
  地球上で人間は俺一人になるのだ!ワッハッハ・・・ぐぅ。

〇地下室
  ???「あなた・・・あなた!」
  ・・・ん?誰かが俺を呼ぶ声がする。
  ???「あなた・・・って、いい加減起きろごらああああ!!!!」
  俺「ぐはああああ!!!!」
  頭部が破裂してしまうのかと思ってしまうほどの衝撃で目が覚めた俺はこれをやった張本人を見た。
  だが、それを見た時、何故か全身から冷や汗が流れたのだ。
  何故ならそいつは・・・
奥さぁん(ノーマルモード)「やっと起きた。ここでなにしてんの!?」
  こいつは俺の妻、ともえ。学生時代の時になんやかんやあって結婚した。
  恐ろしいほど束縛が強くて、世界滅亡を機に藻屑になってもらいたかったが・・・最悪だ。
奥さぁん(ノーマルモード)「おい、聞いてんのか」
  は、はい・・・それより、なんでこんな所に俺がいるって分かったんだ?
奥さぁん(ノーマルモード)「そりゃ、最低でも時速200キロぐらいで走れるもん。あなたに追いつく事なんて朝飯前よ」
  あぁ、そうだった。こいつは化け物だった。
  それより今、いつだ?
奥さぁん(ノーマルモード)「いつって?」
  今日が何月何日かってこと!
奥さぁん(ノーマルモード)「・・・4月2日だけど?」
  あぁ、そうか。終末の日は免れたか・・・ってん?今、4月2日って言わなかった?
奥さぁん(ノーマルモード)「・・・そうだけど。急にどうした?記憶喪失になったのか?」
  その時、俺の頭の中であらゆる事が走馬灯のようにぐるぐると駆け回っていた。
  確かラジオの人が言っていた世界滅亡の日が昨日──つまり、4月1日という事になる。
  4月1日は確か──エイプリルフール。
  もしラジオの人が嘘をついていたとしたら──非常にまずい事になる。
奥さぁん(ノーマルモード)「・・・どうしたの?」
  ここは正直に話した方がいいのか、それとも逃げるか・・・どっちにしよう。
奥さぁん(ノーマルモード)「おい、聞いてんのか!?」
  ・・・妻よ。
奥さぁん(ノーマルモード)「・・・急に改まってどうした。気持ち悪い」
  実は・・・と、かくかくしかじかすべて話した。
  逃げたとしてもしなくてもどっちみち殺されるかもしれないが、夫として我が家の財政状況を話した方がいい。
  全てを話し終えた時、妻の反応は変わらなかった。
  しばし見つめあうこと10分。彼女が発した一言は──

〇地下室
奥さぁん(キルモード)「あっ、そうなんだぁ!!!」
  予想外に軽い口調だった。
奥さぁん(キルモード)「どこの馬の骨のラジオの迷信を信じて」
奥さぁん(キルモード)「毎日私がコツコツと貯めていたお金を全て使って」
奥さぁん(キルモード)「いつ食べるかも分からない非常食をこんな辺鄙な所にしまい込んで隠れていたなんて全然知らなかった〜!!」
奥さぁん(キルモード)「長年付き添ってきた妻を置いてね〜!!」
  このやけに陽気に饒舌に喋る時の彼女がどんな心情かは嫌でも分かる。
  めちゃくそキレている時だ。
  ご覧の通り、マスクは外れて恐ろしい牙を向けて俺を狙っている。
  俺はすぐさま土下座して謝った。
  何度も何度も何度も──
奥さぁん(キルモード)「あれれれ?どうしてそんなに謝るの?私、何かした?」
  いや、君は悪くない。俺が・・・俺が悪いんだ。
奥さぁん(キルモード)「うんうん。そうだよね〜!!私、全然悪くないよね〜?」
奥さぁん(キルモード)「悪いのは──」
奥さぁん(キルモード)「てめえだよぉおおおおおおおおおお!!!!!!」
  ぎゃああああああああああああ!!!!!!
  こうして俺の人生が滅亡した。
  みんなも怪しい情報は鵜呑みにしない方がいいよ!こうなるから!
  完

コメント

  • 怪しい情報を鵜呑みにしすぎておもしろかったです。笑
    奥さん怖いですね!でも、これくらいのほうがこの男性には合ってるのかもしれない…と思ってしまいました。笑

  • あんなに必死で、生き残るために準備したのに、結局それが原因で自滅してしまうなんて、、、あ〜なんてアンラッキー!!としかいいようがない。妻恐し、、

  • (笑)夫婦二人にしかわからない関係性ですね。最後だからこそ一緒にいたい、痛くない、本当の愛が問われる時でもあるんでしょうね。

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