あなたと後ろ

るか

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〇男の子の一人部屋
陽介「さてと、はじめますか!」
  たまたま、SNSで仲良くなった
  鈴華さんと始めた
  オンライン勉強会──
  鈴華さんも俺も、将来の夢は小説家。
  お互いに書いたのを読み合わせをして感想を言うという勉強会だ。
陽介「あれ? 遅いな・・・鈴華さん」
鈴華「陽介くん、ごめんね。 今日、部活があって。 今帰って来たところ」
陽介「大丈夫。俺も今ログインしたところ」
鈴華「良かった。 では、始めますか! 陽介くんからどうぞ」

〇海辺
  読み上げるのは、赤の世界の話。
  全てが真っ赤な場所で主人公ナオが
  他の色を探す物語だ。

〇男の子の一人部屋
鈴華「すごい! 前より良くなってる。 苦悩の中、ナオが海に入っていくシーンが なんか突き刺さるね」
陽介「本当!? 良かった・・・ 次は鈴華さんの番」
  すると・・・
  彼女の画像に何かが一瞬映り込んだ
陽介「誰!?」
  はっきりは見えなかったが
  確かに髪の毛だった・・・
鈴華「え? 何?」
陽介「いや、鈴華さんの後ろに誰かいたような気がして・・・」
鈴華「ちょっと・・・ 怖いこと言わないでよ! 1人でいるんだから!!」
  それからは
  何事もなく進み勉強会は終わった。
  
  あれは何だったんだろう・・・

〇地球
  それから何度か勉強会をした。
  宇宙の話だったり、動物たちの話だったり。
  楽しかった。
  
  その一瞬以外は・・・
  勉強会の度に一瞬だけ映り込む髪の毛。
  きっとウィッグか何かに違いないと決め込んだ。
鈴華「今度さ、一緒にその原稿出版社に見せに行こうよ!」
陽介「赤の世界?」
鈴華「うん、私の宇宙の話も一緒に」
陽介「了解。楽しみだね」
鈴華「そうだね。ドキドキする」
  約束の日を決めて、しばらくは修正のために勉強会は無しが続いた。

〇男の子の一人部屋
  出版社へ行く前日になった。
  
  その夜、どうしても勉強会をしたいと鈴華さんから連絡があり、ログインして待っていた・・・
陽介「遅いな・・・」
  いくら待ってもログインしてこない・・・
  電話をかけることにした。
陽介「もしもーし、鈴華さん?」
「陽介くん・・・ 助けて・・・」
陽介「鈴華さん!?」
「髪が・・・ 髪の毛が・・・」
  スマホ画面に映る鈴華さんの髪が
  みるみるうちに短くなっていった。
「どうしたらいいの?」
陽介「部屋にある髪の毛を探して!」
「そんなのない!」
陽介「絶対あるから探すんだ!」
「ない!ない!ない! どこにもない!」
陽介「早く!!」
  鈴華さんは泣きながら探していた。
「あ!」
陽介「鈴華さん!?」

〇血しぶき

〇男の子の一人部屋
  画面いっぱいにあの髪の毛が映った・・・
「うわっ!!」
  俺はスマホを落とした。
  
  部屋に冷気が満ちて寒くなった──

〇ファンシーな部屋
鈴華「陽介くん? ビックリした? 赤の世界のワンシーンにトライしたんだけど、こんな風であってる?」
鈴華「おーい、聞いてますか?」
鈴華「陽介くーん?」

〇手

〇ファンシーな部屋
鈴華「陽介くーん。 ちょっと、返事してよー!!」

〇手
  髪の毛は──
  
  俺の部屋にいた!!
  髪の毛と無数の手が体をがんじがらめにした
  息ができない・・・

〇ゴシック
  出版社と約束の当日。
「赤の世界・・・」

〇雑誌編集部
森山「赤の世界ね・・・ 独特な表現もあって荒削りだが、なかなかの作品だね」
鈴華「ありがとうございます!!」
森山「それで、もう1人の子は?」
鈴華「急用で来れないそうです」
森山「そうか・・・ 楽しみにしていたんだがな・・・」
森山「うわっ!!」
鈴華「どうされました?」
森山「いや、何でもない。 気にしないでくれ。 指摘した所ができたら、また持ってきなさい」
鈴華「ありがとうございます!」

〇血しぶき
鈴華「フフフ・・・ 私の髪ってば最高!!」
  ふわりふわりと髪の毛が浮遊した。
鈴華「美味しかった? この話は、一緒に考えたんだから 私の作品でもあるのよ・・・」
  左右に髪が揺れ動いた。
鈴華「次は編集の人をしばらくは操ってね。 食べるのは、その後」

〇手
  後ヲ──ミ・・・テ・・・
  
  ツギハ・・・
  
  アナタ・・・タベテ・・・アゲル・・・

コメント

  • 恐ろしいですね。怪異の恐ろしさと、人間の恐ろしさのダブルパンチという感じですね。演出表現からも恐怖感が伝わってきました。

  • めちゃ怖かったです!
    結局のところ、彼女に操られてたんですね。
    一緒に作った作品を、自分の作品として出すために…人間の欲望も怖しいものですね。

  • 恐ろしい話でした。読み進めていくうちに、鈴華の狂気じみた感じがすごく伝わってきて、怖かったです。
    一体何人の人を食べてきたのか気になります。

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