読切(脚本)
〇一人部屋
スグル(ハァ〜 明日が来ませんように・・・)
彩夏「もうすぐ明日になるよ。 時は待ってくれない」
スグル「過去に戻れる方法知らない?」
彩夏「知ってたらどうするの?」
スグル(やり直したい・・・)
彩夏「誰と・・・!?」
スグル(お客さんと・・・)
彩夏「また、怒鳴られた!?」
スグル「耳が痛い。小学生の時中耳炎になって以来ヤラれた・・・」
彩夏「負けんなよ~、クレーム言われたくらいで」
スグル「耳から攻められ、脳は焼かれ、心は冷やされた・・・」
彩夏(クレーム言って来たのどんな人?)
スグル(・・・考えたくない・・・)
彩夏「お休みなさい・・・」
〇一人部屋
スグル(ハァ〜・・・)
彩夏(・・・)
スグル「夜よ・・・永遠に僕の味方でいてくれ」
彩夏(・・・・・・)
スグル「何でオレが対応しなきゃいけないんだ」
彩夏「(ホント、めんどくさい)」
スグル「アイツ、頭おかしいんだよ!」
彩夏「(アンタだよ! アタマおかしいのは)」
スグル「明日、会社行きたくない・・・」
彩夏「ちょっと、さあー」
スグル「何!? クレーム!?」
彩夏「いい加減にしてよ! 寝れないじゃん!」
スグル「羊のセリフを唱え給え──」
彩夏「考えたってしょうがないでしょう!!」
スグル「羊の呪文を唱えてあげるよ。気が紛れる」
彩夏「羊は、ありきたりでつまんない。他のにして」
スグル「アイ、マイ、ミー、マイン・・・ユー、ユア、ユー、ユアーズ・・・ヒイ、ヒズ、ヒム、」
彩夏「何で、人称代名詞!?」
スグル「中学生の時、一発で寝れた!」
彩夏「今の聞いて、余計寝れなくなった・・・」
スグル「じゃあ、一緒に考えてくれる?」
彩夏「考えても同じだと思う・・・」
スグル「明日が来ない方法を・・・」
彩夏「ネガティブ思考ではなく、明るい方向で」
スグル「明るい日と書いて『明日』・・・」
彩夏「ボソッとイイ事言うじゃん」
スグル「明るい後の日と書いて、『明後日』・・・」
彩夏「『明日』をスルーして後回しにしない! 明後日にしない!」
スグル「凄い! ヒトの心が読めてる! キミこそクレーム対応に相応しい! 替わりに頼む!」
彩夏「知るか!!」
スグル「昨日処理してればこんな憂鬱な夜を迎えることはなかった・・・」
彩夏「もう、さっさと片付けちゃえば良かったのに」
スグル「・・・」
彩夏「さっさとやっちゃいなよ! 明日の朝一番で」
スグル「さっさと・・・!?」
彩夏「さっさと寝ろ!」
〇ゆるやかな坂道
スグル「・・・」
〇住宅地の坂道
スグル「さっさと・・・」
〇市街地の交差点
スグル「明日、明後日・・・昨日、今日・・・」
〇開けた交差点
スグル「さっさと・・・やってしまおう・・・」
〇高層ビルのエントランス
スグル「さっさと、やってしまおう・・・明日が来る前に・・・」
〇オフィスのフロア
スグル「真夜中のオフィス・・・誰も居ない・・・」
スグル「誰にも聞かれてない・・・」
スグル「さっさと片付けてしまえ・・・」
スグル「対応はしました・・・よ?!」
スグル「お客様が電話にお出にならなかったんです!!」
スグル「明日、電話する約束・・・」
スグル「でも、時間は指定されてない・・・」
スグル「もうすぐ、午前0時・・・」
スグル「日付が替わる・・・」
スグル「○○さんの電話番号は、◎◎◎−△△△−●●●●」
プッシュボタンを押した・・・
〇オフィスのフロア
真夜中の無人のオフィスに受話器から、呼び出し音が漏れ響く・・・
スグル「・・・」
呼び出しのコール音・・・
スグル「(出るな・・・羊が一匹、羊が二匹・・・)」
呼び出しのコール音・・・
スグル「(出ないでくれ・・・羊が3匹・・・)」
呼び出しのコール音・・・
・・・お客様のお掛けになった電話番号は現在・・・
スグルは、静かに受話器を置いた・・・
スグル「ふぅ~」
スグル「(やった・・・)」
その時、オヒィス内の別の電話機が鳴った・・・
鳴り響く電話機のディスプレイに表示された発信者番号を確認した・・・
〇個別オフィス
「部長・・・」
スグル「・・・」
彼の不器用さとムダに自分を追い込んで空回りしていく様に胸が痛みました。私は仕事は仕事とわりきっちゃいますが、繊細な彼のような方だとこういうお客様対応のお仕事は心がやられそうですね。
確かに過去に戻れれば!なんて1度くらいは思った事はありますがこの人はなんと言うか戻れないなら!の行動力が凄すぎる笑そんな行動力があるならクレームに屈せずやっていけそうな気もしました笑
クレーム処理の仕事の大変さが痛いほど伝わってきました。これは単なる接客の仕事とは大違いですね。午前0時に折り返し電話を思いついた主人がとても愛おしくなりました。