家族判定日

にゃった

読切 (脚本)

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〇明るいリビング
ママ「おはよう まゆ香の好きなパンケーキよ」
まゆ香「カフェの朝食みたい」
ママ「優紀ごはんよ」
  優紀「休みの日は寝たいんだ! 昼まで起こすなよ!」
まゆ香「たまに学校行っても昼から。毎日休みと変わらないくせに」
ママ「色々あるのよ。大好きなサッカー怪我で出来なくなって・・・」
まゆ香「ママは優紀に甘いなぁ」
ママ「そうね、ママのせいかもね。優紀がああなったのは・・・」
まゆ香「ママ・・・」
  明日は、3年に1度の家族判定日。
  親は親の適性検査を受け、20歳以下の子供は親が適切に接しているか分かる心理テストを受ける
  長い質問に答える面倒な国の行事と思っていたが今年は家の空気が違う
  弟の優紀は不登校ぎみ。家庭環境のせいと判定されたら不合格になる。
  不合格になれば、親は更生施設へ収容。
  子供は国の施設で暮らすことになる。
ママ「天気いいしお出かけしない? 優紀も誘って」
まゆ香「来るかな、あいつ」
ママ「まゆ香が誘えば来るんじゃないかしら」
まゆ香「パパは?」
ママ「また休日出勤。今日は早くかえる為に始発で行ったわ」
まゆ香「えー大変。ご苦労さまだね」
ママ「まゆ香は、ほんと優しい子ね」
まゆ香「だったら、おこづかいあげて」
ママ「もう、しっかりした子ね 判定が終わったら考えるわね」
まゆ香「やった! ずっとA判定だし大丈夫よ」
ママ「そうね・・・」

〇見晴らしのいい公園
  なんとか優紀を連れ出し、子供の頃よく遊んだ公園でお弁当を食べた
  私は進学校へ進み勉強で忙しく、優紀は中学でサッカー部に所属。1年でレギュラー。一緒に過ごす時間が減っていた。
ママ「こんな時間は久しぶりね」
  ママは昔話ばかり。私は本好きで大人しく育てやすかった、優紀は活発過ぎて大変だったとか
  私が自転車に乗れた日、優紀とパパの逆上がりの特訓。優紀がボールを追いかけ道路に飛び出し、ママが救ったとか・・・
  この公園での思い出を語り続ける。
ママ「あの時は、心臓が止まるかと思ったわ」
優紀「・・・・・・」
まゆ香「ママが凄い速さで追いついて、優紀かかえて車よけたんだよね。スタントマンみたいだったよ」
  と私が言うと、ママは泣き笑い。優紀は無表情のまま一言も話さない。

〇明るいリビング
まゆ香「優紀の好物ばっかだ」
優紀「・・・・・・」
  「ただいま」玄関でパパの声がした
パパ「すまん、大切な日に遅くなって」
パパ「まゆ香の好きなチーズケーキに優紀の好きなプリンだ」
まゆ香「わぁ、人気店のだ。食べたかったんだよね」
優紀「お別れ会だし、豪華だね」
まゆ香「縁起でもないこと言わないで!」
優紀「ねーちゃんには関係ないよ。家族から消えるの俺だけだから」
まゆ香「え?」
優紀「この制度の裏ルール。手におえない子供は手放していいって、連続A判定の親の特権つかうんだろ?」
優紀「だから、俺の好物用意して。母さんは思い出話ばかりするし。」
パパ「優紀を手放すわけないだろう!」
優紀「お父さん忙しいのに練習つきあってくれて、お母さんは朝早く起きて毎日弁当用意してくれて、応援してくれたのに・・・」
優紀「サッカーできなくなったら取柄ない。ねーちゃんみたいに勉強できないし。こんな子供いらないだろ?」
ママ「優紀のいない人生なんて、考えられないわ!」
パパ「そうだよ、お前たちがいるから 仕事がんばれるんだよ」
パパ「大好きなサッカーできなくなって辛い時でも、俺らを気づかって・・・こんないい息子いないよ」
パパ「ごめんな、そんなに苦しんでたの気づかなくて・・・ 国に判定されなくても親失格だ」
ママ「これからは、優紀の気持ちにもっと寄り添うわ。だから、お願い。私たちの子供でいてちょうだい一生」
優紀「父さん、母さん・・・」

〇明るいリビング
まゆ香(昔からそう、優紀をかまってばかり)
まゆ香(パパもママもバカね。家族継続は私しだいよ)
まゆ香(私が、弟と差別されトラウマ抱え苦しんでると判定される回答すれば、 家族は THE・END)
まゆ香(そんなの楽勝よ、独学で心理学まなんだし。「ずっと孤独だった」と検査官の前で泣けば、完璧ね)
まゆ香(今回も見逃してあげるわ。お小遣いアップて言ってたし。施設暮らしは規則多そうだし)
  3年後、私は19歳。まだ親を審査する権利がある。
  優紀は17歳。ふふふ、あの甘えん坊が親と離れて施設で暮らすの堪えるんじゃないかしら?

コメント

  • 家族まで管理される社会って怖いですね。
    ただ、最後のお姉さんはもっと怖かったです!まさかそんなことを考えていたなんて…。

  • 家族全員がただ気づいていないだけで、すべて彼女の支配下にあって計画的なのが、またいい子を装って穏やかそうに暮らしているという頭の良さとシビアな狂気が、静けさのある恐怖という感じがしました。

  • すごくシビアな世界…。でもこんなテストがあったら、救われる家族も少なからずいるのかな。
    最後はちょっとゾッとしました。

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