流行りの異世界転生を目指そう!(脚本)
〇森の中
迷った・・・・・・。
遠征で仲間とキャンプをしていたはずなのに、いつの間にか見知らぬ森の中だ。
「ちょえいっ! ぬんっ! ほわああぁっ!」
奇妙な女の叫び声が聴こえてくる。
普段なら絶対に関わりたくない。
が、今は多少変でも良い。
とにかく人に会いたい。
「おい、そこのーーー」
「きえええええぇっ!」
「うわあぁっ?」
少女「ぬん? そんなところに立っていると危ないッスよ?」
「誰のせいだ誰の!」
出会い頭に頭突きを食らわそうとしてきた奴が言うな!
「こんなところで何している?」
少女「見ての通り、異世界転生してるッス」
「ーーーは?」
少女「まあまだ成功していないッスけど、頑張るッス!」
ーーー想像以上に変な奴に出くわしてしまったらしい。
「異世界転生?」
少女「そうッス! 最近流行ってるじゃないッスか! 私も異世界に行ってバーンと活躍するッス!」
「・・・・・・・・・」
何を言っているんだコイツは?
見なかったことにしよう、と思った。
が、他に人を見つけられるとは限らない。
ーーー我慢するしかないか。
「あー、そうかー。頑張れ」
少女「ウッス! 応援ありがとうッス!」
我ながら恐ろしいほどの棒読みだったが、女は気にも止めなかった。
少女「うーん。漫画だと強い衝撃で成功しているんスけどねぇ」
妙な独り言を言いながら、木に体当たりや頭突きを繰り返す女。
ーーー不気味だ。
早々にここを立ち去ろう。
「なあ、この辺りで俺と同じ服の奴らを見かけなかったか?」
少女「見てないっスねぇ」
「・・・・・・そうか」
さほど期待をしていたわけではなかったが、ショックではある。
「他に、人を見ていないか? この辺りに街や民家は?」
少女「見てないっスね! 異世界転生は他に人がいない方が成功するッスから!」
ーーーこの女と会話をすると疲れるな。
少女「おにーさんはコスプレしにこんな所まで来たんスか?」
「ーーーこすぷれ?」
少女「そうッス! そんな格好して、目も青いしなんのコスプレっスか?」
オレ「そんな格好? ま、まて。これは由緒正しきオルフェリア王国の軍服だぞ?」
少女「おるふぇりあ王国? んー、そんなアニメあったッスかねぇ? いつのアニメッスか? 令和アニメッスか?」
オレ「バカな! この地方一帯を治める王国だぞ?」
オレ「それにあにめ? れいわ? 何を訳のわからぬことを・・・・・・!」
少女「ぬぬぬ?」
少女「ーーーハッ! お、おにーさん、もしかして!」
少女「異世界転生してきたんスかあああぁっ!」
オレ「だからっなんなんだそれはああああぁっ!」
少女のおかしみが際立っている前半部から、主人公の素性が明らかになって変わる空気感、楽しいですね。個性というかアレのせいで会話が噛み合わないと思いきやww
彼女はすでに異世界にいるのか、彼の方が現実世界に転生してきてしまったのか!? どっちにでもとれる感じだけど、2人ともお互いにその自覚がないところが最高によかったです。
語り手の姿が見えないのでまさかと思ったら、まさかでした。この人が異世界からやってきたのか、少女が異世界に入り込んだのか、どちらにしてもカオスですね。今後の展開を見てみたいです。