〇個別オフィス
意地実「社長、お呼びですか」
　　（ふふっ入社式での頑張りますスピーチが
　　きいたかな、初日で単独で呼ばれるなんて♡）
社長「ああ。 きみが意地実か。 新卒採用でトップの 成績だった」
　　こんなにしっかりして
　　いい子にみえるのにな・・・
意地実「はいっ がんばります」

〇個別オフィス
「ご用件はなんでしょう なんでもできます！」
社長「キミにお客さんがいる」
意地実「えっ？」
バケタの親「意地実さん、 こんにちは」
意地実「はあ、 あのすみませんが どなたでしょう？」
バケタの親「田舎中学２年で一緒だった バケタの親です」
意地実「あ・・・」
社長「お知り合いかね？」
意地実「一度だけ会った人です」
意地実「あの、こんなところにまで いったいなんですか」
意地実「なにをしにきたのですか」
バケタの親「・・・あいかわらず 強気ですね」
社長「ま、少なくとも バケタさんとは面識があるわけか」
意地実「そうですけど、 あれは終わった話です。 これから仕事なのに 困ります！」
意地実「バケタさん、 忙しいから帰ってください」
バケタの親「いえ、帰りません」
意地実「社長、なぜ通したのですか？」
社長「知っている弁護士さんと 一緒だからだ」
弁護士A「こんにちは」

〇個別オフィス
弁護士A「意地実さん、はじめまして 弁護士Aと申します」
意地実「あの、わたしはこれから 仕事ですが」
弁護士A「そうですね、 終わった話だと認識されてますが わたしどもはこれからですので」
弁護士A「このたび故バケタバケルさんの 親御さんから代理人としての 依頼を受けまして」
意地実「コ？」
弁護士A「コは 故人の故です」
意地実「故人の故って もしや」
バケタの親「うぅ・・・」
意地実「な、なによ。 なにしにきたのよ」
弁護士A「どうやらなにがあったか 察しがついたようですね」
弁護士A「バケタさんは民事訴訟前に あなたに会っておきたいとの ことです」
弁護士A「社長さん、お時間をさいて いただきありがとうございます」
社長「いやいや 昔から面識のある先生ですから」
バケタの親「バケタバケルは先月 なくなりました。 あなたのいじめで」
バケタの親「抑うつ状態が続き 精神科に入退院を繰り返していましたが とうとう・・・」
意地実「バケタさんが・・・ それは気の毒だった」
意地実「でも終わった話でしょ あれは中学生の時の話だし」
　　畜生
　　よりによって社長の前で・・・
　　弁護士まで連れてきやがって
意地実「弁護士に民事訴訟の告知をしたうえで 本人の死を告げて さすがあのバケタの親！」
意地実「あの時、いじめたことは あやまったじゃないの バケタも許してくれたし」
社長「（これがこの子の本性か・・・）」
社長「（人事課は入社試験のときに 見抜けなかったのか怒）」

〇ベビーピンク
バケタ「お母さん お母さん」

〇学校の廊下

〇学校の廊下
　　お母さん
　　ごめんなさい
　　ぼくは弱い
　　ごめんなさい

〇学校の廊下
　　どうしても
　　忘れられないんだ
　　あの時の屈辱
　　あの時の情けなさ
　　あの時の皆の態度に

〇学校の廊下
　　ぼくは負けた
　　弱いぼくを許してください

〇個別オフィス
意地実「10年近く前のことを いまさら。 なんという意地悪な人なの」
意地実「最低！」
バケタの親「あなたの怒った顔を見ることが できた・・・」
バケタの親「突然来たことも わたしは悪いことだとは 思わない」
バケタの親「でも関係のない会社と 社長さんには迷惑を かけています。それは 申し訳ないことです」
弁護士A「まっ そういうことで。 数日後に訴状が届きますので ご対応をよろしくお願いします」

〇沖合（穴あり）
意地実「終わった話でしょっ 終わった話でしょっ」
意地実「確かにいじめたけど 私だけじゃない 私だけなんでよ 私はこれから仕事なのに」
バケタの親「あの子はあなたが皆を 先導していじめたと断言しました 不登校と自殺未遂まで 追いつめたのは認めますよね」
バケタの親「治療のかいなく亡くなった以上 私はあなたに心からの謝罪を 求めます」
意地実「訴訟って損害賠償かなにかですか いくらほしいのですか」
意地実「あなたこそ 私をいじめてるじゃないの」
意地実「最低だわ」
バケタの親「そうね、でも あの時のバケルの悲しみと苦しみを 味わってもらえるなら私は いくらでもそうします」
バケタの親「意地実さん 私はあなたの名前を １日たりとも忘れません」
バケタの親「亡くなってもあなたが あの子を忘れることのないように 存分に行動させていただきます」
弁護士A「というわけです。 おわかりいただけましたか」
弁護士A「じゃ社長さん 約束通り５分だけね。 貴重な時間をありがとう」
バケタの親「社長さん お邪魔しました。 ありがとうございました」

〇個別オフィス
意地実「あ、あの・・・」
社長「え～とね。 客は帰ったが キミは自宅待機ね」
意地実「えっ」
社長「我が社の仕事は 医療関係や人権問題にも かかわりがあるのを 知っているだろう」
社長「まあいい。 人事課のものを呼んで 対処するから帰って」
意地実「そんな！ 不当解雇です！ 私は断固として戦います！」
社長「そうか。 解雇理由証明書など 必要なものは早急に 通知はするがね」
社長「実は私の娘も 中学時代にひどい苛めにあって 10年以上たっても家から出られない 状態でね」

〇炎
社長「弁護士Aさんと面識があり 私が通した理由も 理解できるだろう」
意地実「あ・・・」
社長「いじめは犯罪だよ 終わった話でもないよ」
意地実「でも大昔の話ですよ ちゃんと謝りましたよ 本人も許してくれましたよ」
社長「ははっ いろいろとすごいね きみは・・・」
意地実「・・・」
社長「弁護士Aからはバケタさんの いじめから抑うつ状態になり 亡くなられるまでの因果関係の 証明をみせてもらったからね」
意地実「でも私は反省して 大学で学び御社で 一生懸命働こうと」
社長「だから不当解雇をいうなら きみも弁護士を雇って 戦いたまえ」
社長「きみに対する 世間の反応も楽しみだよ いじめられっ子の親としてもね」
　　畜生
　　畜生
　　畜生


〇黒背景