杞憂①(脚本)
〇黒
桐生「あ、あの、」
桐生「し、心配なんですっ」
魔王(どうして我は、この場所に?)
魔王(作者に好かれてしまったのだろうか)
魔王(だとしたら最悪だ・・・)
魔王「な、何が心配なのだ?」
桐生「そ、その声は・・・」
桐生「作者に好かれた魔王様っ」
魔王(やっぱりかぁー・・・!)
桐生「き、聞いて下さい!私は、心配なんですっ」
桐生「心配で心配で、夜も眠れませんっ」
魔王(この子、眼になんか巻いてるから、)
魔王(正直、普段起きてても寝てても、分からんのだが?)
魔王「な、何が心配なのか、聞いてもよいかな?」
桐生「き、聞いて下さるので?」
魔王「うむ」
桐生「は、はい。魔王様の御心の寛大さに私、感激を通り越して・・・」
魔王「礼はよい。なんたって1000文字しかないからな」
桐生「え?あ、私・・・、何か無礼を?」
魔王「いや、こっちの話だ。良いから気にせず、話してみよ」
桐生「心配なんです!」
魔王(お話が、一歩も進んでないではないか・・・)
魔王「というと?」
桐生「こ、このコンテストが、心配なんです!」
桐生「男女格差が社会問題となって久しい昨今・・・」
桐生「『〇〇な女』なんて、」
桐生「女性はこうあるべきだ、とか、こんな女は嫌だ、とか、」
桐生「女性をまるで、一義的に決めつけようとする作品制作を、」
桐生「助長するかのような・・・っ!」
桐生「そんなことをさせる、このコンテストが心配なんですっ!」
魔王「・・・」
魔王(イチギテキって、なんだろ?)
魔王(まあ。とにかく、女性差別だって言いたいのだろうな・・・)
魔王(そんなことないと思うし、やんわりと否定しとくか・・・)
魔王「結構、女性向けのマンガ雑誌とかで見るが?」
桐生「あんなもの、無くすべきです!読者の男女差別意識を、促そうとしてるんです!」
魔王(えぇえ・・・)
桐生「なにより、読んでて面白くない!」
魔王(よ、読んでるんだ・・・)
桐生「コンテストの会議にも、男性しかいなかったに決まってる!」
桐生「女性の意見が、無視されてるに違いないっ!」
魔王(そんなことは、ないと思うけど・・・)
桐生「心配なんです!このコンテストが!この国の・・・、いや、」
桐生「この世界の、未来がっ!」
魔王(急に話が、ワールドワイドに飛び出して行ったんだが・・・)
魔王(とりあえず、否定は諦めて、話を合わせとくか・・・)
魔王「ま、まあ実際、性差や同性愛への偏見をなくそう、という民衆の声も、確実に大きくなっているわけだしな・・・」
桐生「その通りです!さすが魔王様っ!」
桐生「私も、目が見えない一員として、差別を根絶するため活動してます!」
魔王(あ、活動家だったんだぁ・・・)
魔王「で、では、我も魔族への差別をなくすため、」
魔王「もっと、声を上げなければならんな!」
魔王「協力してくれるか?」
桐生「え?あはは・・・」
桐生「いやだなぁ、魔王様」
桐生「頭に角が生えた、顔の青白い、魔法が使える奴に、」
桐生「人権なんて、ありませんよぉ」
(注:言葉の刃の音)
魔王「えぇえ・・・」
この魔王のキャラクター大好きです。笑
魔力も使える強面キャラのはずなのに、話を聞いてあげる親切心も持っていて最終的に女の子からの言葉でダメージを受けているという繊細さ…魅力的です。笑
騒ぎ立てる女を相手になるべく穏便に対処しようと頑張ってて最後にバッサリ斬られる魔王は世の男性を象徴してて涙。差別差別と叫んでる本人が一番差別主義者であるという事実こそが一番の杞憂案件ですね。