エピソード15(脚本)
〇古い競技場
?「今日は一段と観客が多いねぇ」
対戦相手「ククク、お手柔らかに頼むよ」
ナナシ(あれが対戦相手・・・・・・ 不健康そうな体つきだ)
ナナシ(とてもあの人に勝てそうには思えないけど)
ナナシ「それより問題は」
ナナシ「”闘技場の外に出られない”ことか」
観客席に行こうとしても、
透明な壁があるように進めない
ナナシ(やっぱりこの世界は ”実際には存在していないいんだ”)
ナナシ(夢か幻の類、問題は ”何が原因か”だけど──)
対戦相手「なぁ、試合前に握手してくれないか? あんたのファンなんだ」
?「えぇ、勿論です」
対戦相手「なぁ兄ちゃん、観客席真ん中一番上を よーく見てみな」
?「──」
婚約者「・・・・・・」
対戦相手「知ってるぞ あの女、あんたの婚約者なんだろ」
対戦相手「そして、その隣にいるのは俺の雇った 暗殺者だ」
?「────なるほど」
ナナシ「勝てないならばと策を組んできたわけか」
ナナシ「不愉快な策を」
対戦相手「あの男には、お前が銃を打ち次第、 女を殺すよう命令してある」
対戦相手「始めようか、一方的な決闘を」
?(はぁ、つまんないことになっちゃたな)
対戦相手「クソ、全然当たんねぇ」
対戦相手「だが」
ナナシ(弾丸がかすった!!)
ナナシ(弾丸を避けるあんな動き、 いつまでも続けられるわけがないんだ)
?「・・・・・・・・・・・・」
対戦相手「ククク、今一歩後ろに下がったな」
対戦相手「勝てる──私は、勝てる!!」
?「うん、一応教えとくとね」
対戦相手「あん?」
?「ボクが対戦相手を殺さないのは、 いつか成長して、ボクを楽しませてくれるかもしれないからだ」
?「だけどキミはつまらないから」
?「殺すことにするよ」
暗殺者「え?」
対戦相手「え?」
ナナシ「え?」
?「一歩下がったのは、ここが一番、 あの席を狙いやすかったからに過ぎない」
ナナシ「そ、狙撃したのか? 観客席の、たった一人の人間の頭を」
ナナシ「そもそも、いったいいつ抜いたんだ!?」
対戦相手「馬鹿な──一歩間違えれば婚約者の方を撃っていただろうに」
?「そんな間違いは起こり得ないし、起こったとしても」
婚約者「残念だわ」
婚約者「ようやく、 殺してくれる気になったと思ったのに」
?「彼女は喜ぶんじゃないかな」
対戦相手「あ、あぁ」
対戦相手「た、助けてくれ、命だけは──」
?「そのセリフはさっきも聞いたけど」
?「今度は殺す」
?「あぁ、でも君たちが 最初で最後の殺しになるかな」
貴族「何ということを──」
貴族「私の仕切る闘技場で 観客が殺されるなど、あってはならない」
貴族「捕まえろ!!!!」
?「まぁ、こうなるよね」
ナナシ(抵抗もなしに 取り押さえられた・・・・・・)
貴族「貴方には懲役刑の後、 今後銃持つことを 禁止させることになるだろう」
貴族「ここの観客にはそれぐらいしなければ安心できない、 という貴人が何人もいるのでね」
?「それは実に残念」
?「今度は剣の練習でもしてみるよ」
貴族「──────ハハ」
貴族「銃を、預からせてもらう」
貴族「この銃はこちらで処分させていただく」
?「残念だ結構気に入ってたのに」
〇黒
「どうして?」
ナナシ「!!」
ナナシ(また場面が変わった、 いや、”消えた”のか?)
「どうして抵抗しなかったの」
「”私とあなた”なら」
「あそこにいた全員を殺せたのに」
「どうして貴方は、私を手放したの?」
ナナシ「そうか──キミは」
〇体育館の中
赤縄「あん? どうしたんだ?」
赤縄「急に止まっちまいやがった」
ハコ(ナナシくんが、銃を構えた瞬間 急に固まって動かなくなってしまった)
ハコ(一体何が・・・・・・)
ナナシ「大丈夫だよ」
「!!!?」
ナナシ「キミの悲しみも、怒りも、戸惑いも」
ナナシ「全部、ちゃんとわかったから」
赤縄「銃が光に分解されて、再構成?」
ハコ「いや、”組み変わっていく”!?」
ナナシ「そう、”キミはキミのままでいい”」
ナナシ「キミの無念は、ボクが晴らす」
ナナシ「さぁ、”ぼくを使っていいよ”」
赤縄「何をごちゃごちゃ言ってやがる!?」
ナナシ「不思議だ、弾道が”はっきり見える”」
ナナシ(この線を避けるだけで、 弾丸が当たらないと確信できる)
赤縄「馬鹿な!? なぜ当たらねぇ!?」
ナナシ「伝わってくるよ」
ナナシ「キミの喜びが」
ナナシ「うん、きっと、 僕たちならもっといけるね」